スコットランドのブルワリーが、広大な森をつくる理由

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2020年6月、シベリアでは38度を記録し(※1)、8月末にはカリフォルニアで600件以上の山火事が発生した。火災ではわずか7日間で東京の2倍にあたる面積が焼失(※2)するなど、異常気象ともいえる事態が世界各地で多発し、気候変動への取り組みをより加速させる必要性が高まっている。

そんな中、スコットランドのブルワリーであるBrewDog(ブリュー・ドッグ)が、スコットランドの南西部にある2050エーカーの牧草地と泥炭地を購入し、広大な森に変えるプロジェクトを発表した。

BrewDogはこれまでにも、気候変動への意識を高めるセゾンビール「Make Earth Great Again」の販売や、空き缶と引き換えに株式をわたすキャンペーン「Cans for Equity」など、ユニークな施策を行ってきた。今回の取り組みにはどのような意図があるのだろうか。

この取り組みで目指すのは、企業として「カーボンネガティブ(排出するCO2よりも、除去するCO2が多い状態)」になることだ。購入した土地は牧草地として使われていたため、今のところ木々は生えていない。そこでBrewDogは、まず数年かけて100万本以上の木を植え、1500エーカーを広葉低木樹の森に変えるという。さらに残りの550エーカーはCO2の隔離に効果的な泥炭地として復元する。

こうした一連の取り組みによって隔離されるCO2は、30万トンと予測され、サプライチェーンも含め、BrewDogの事業によって排出されるCO2の2倍に相当する。CO2の削減量などはすべて第三者によって検証され、結果は公開されるなど取り組みの透明性も確保されている。

また、植林の際は、生物多様性保全に配慮し、洪水の緩和もはかる。さらには持続可能性に配慮したキャンプ場を地元に開設し、地域の経済発展にも貢献していく計画だ。

BrewDogのCEOであるジェームズ・ワット氏は、FAST COMPANYの取材に対し、「私たちは差し迫った気候危機に直面しており、もはやカーボンニュートラル(CO2の排出量と吸収量とがプラスマイナスゼロの状態)では不十分だと思っています。だから、企業として、チームとして、地域の一因として、確実に環境にポジティブな影響があることを行いたいのです」と語っている(※3)

カーボンニュートラルではもう気候変動の影響を緩和しきれない。そんな気迫が伝わってくるようなブルワリーの取り組み。ぜひ世界的なムーブメントになってほしいものだ。

※1 シベリアで38.0℃観測、北極圏史上もっとも高温か
※2 「東京の2倍の面積」が7日で焼失、カリフォルニアの記録的な山火事
※3 Why this Scottish brewery just bought a forest

【参照サイト】Make-Earth-Great-Again

Edited by Kimika Tonuma

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