化石燃料の枯渇が迫り、たとえば石油の可採年数は残り50年とも言われている。そんな中、水力や風力、バイオエネルギーを代表とする環境への負担が少ない再生可能エネルギーが注目されている。
カナダ西部ブリティッシュコロンビア州にあるサリー市では、今年3月、官民がパートナーを組んだ北米初のバイオ燃料生産施設がオープンした。この施設は、オーガニックの廃棄物をバイオ燃料に生まれ変わらせるのだ。
施設のコンセプトは「循環型システム」である。循環の仕組みはシンプルだ。
各家庭からのオーガニック廃棄物を回収車が集め、施設に運ぶ。施設内で、廃棄物は天然ガスとコンポストに再生される。発生したガスは回収車の燃料となり、コンポストは野菜や果物の栽培に利用される。再利用されたコンポストで育った野菜を各家庭で消費し、ここからまたオーガニック廃棄物が排出される、という流れである。
このバイオ燃料生産施設の登場は、二酸化炭素廃棄量を年17000トン削減するというサリー市の目標に大きく寄与する。循環型システムによって、市内全体での温室効果ガスの排出量削減につながるからだ。削減量は年間約49000トンで、これは年間10000台の車が減ることに匹敵する。
この施設は廃棄物の増加にも対応できるようにデザインされている。現在サリー市は、毎年65000トンのオーガニック廃棄物を回収している。2043年には11万5000トンになると言われている需要まで対応することが可能だ。また、オーガニック廃棄物は、すべて施設内で処理が行われ、匂いは特殊な技術を使って緩和される。
施設は、サリー市が所有するものの、官民パートナーシップに基づいて運営されている。6800万ドルの予算をかけて建設されたが、費用の25%はカナダ政府がまかない、残りの75%はイギリスの私企業Reniwi PLC社の投資である。この会社は施設のデザインと、今後25年間の設備の運営と維持をおこなう。
また、この施設内にはコンポストガーデンがあり、学校や各種団体の見学を受け入れている。サリー市とReniwi社はこの見学をとおして、市民に廃棄物に対する責任や、コンポストの科学を教える機会にしたいと考えている。
このサリー市のプロジェクトは、政府と私企業が手を組み、相互に協力し合っているいい例だろう。そこでは、自分たちが食べたオーガニック食品が、燃料や肥料として、第2の人生を歩むのだ。
官民のコラボレーション、そしてオーガニック廃棄物を利用した循環型システムという両方の良い循環がさらに広がることを期待したい。
【参照サイト】North America’s First Closed-Loop Waste Management System opens in Surrey
【参照サイト】RETHINK WASTE – CITY OF SURREY
(※画像:RETHINK WASTE – CITY OF SURREYより引用)