東ヨーロッパのバルカン半島に位置する国、アルバニア。その首都、ティラナの中心部にそびえるピラミッドがある。1946年に共産主義政権を成立したアルバニアの前共産主義指揮者ホッジャに敬意を表し、1988年にエンヴェル・ホッジャ美術館として建てられたものだ。
ホッジャの没後も、この美術館はアルバニアの激動の歴史とともに、さまざまな用途に使われてきた。コソボ紛争の間はNATO基地として使われ、ナイトクラブやイベントスペースとして使われたこともある。最近では、国立劇場にするという計画もあったが実現することはなく、10年以上も廃墟となっていた。
以前は、このピラミッドの屋根に登ることができた。多くの若者たちが屋根に集い、時を過ごしたというが、現在はピラミッドに立ち入ることができない。この点に注目したのが、オランダの建築事務所MVRDVだ。MVRDVは、「すべての人が屋根に登れるように」をコンセプトに、この建物面積11,800平米のピラミッドを青少年技術教育センターとして再生することを発表した。
プロジェクトの目的は、「この建築物を人々の手に返す」こと。これからこの場所で、アルバニアだけでなくバルカン半島全体の革新、技術、芸術、文化が融合し、コンサートが開かれ、人々が集うようになる。
高齢者にとって、このピラミッドは共産主義時代の文化イベントが多く開かれた場所であり、若者にとっては新たな時代を祝う場所なのだ。
MVRDVは、建物の正面を階段にすることで、人々がピラミッドに登れるようにした。ここから街の美しい眺望が楽しめる。そして、すべての方角から地上階への出入りを可能にすることで、これまで薄暗かった建物内部が明るく、魅力的になる。また、緑を多く配置することで周囲との調和を図った。
新しい青少年技術教育センターは、2019年6月に完成予定だ。多くの歴史の変遷を経験してきた建築物の再生。人々に愛され、活気のある建物は、地域と街を活性化させる。これから、ティラナのピラミッドはまた新たな時を刻み始めるだろう。