1日1ドルで授業が受けられる。キャリア形成を支援する、ウォルマートの大学奨学金制度

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米国では、成人の4人に1人が学生ローンを抱えている。名門の多い私立大学では、4人中3人が平均400万円の学生ローンを抱え、41万人以上が2000万円を超えるローンを抱えている。格差是正のために教育は大事だが、良い教育を受けるには、大金が必要。借金地獄により、ホームレスになる人すらいる。

世界最大のスーパーマーケットチェーンである米国のウォルマートは、大学の学位をまだ取得していない従業員を対象に、教育費を補助する新たな従業員特典を発表した。

大学の授業料を負担するこの奨学金制度を可能にするために、ウォルマートは教育プラットフォーム「Guild Education」と提携。米国の150万人の従業員のうち、まずは68,000人がこの奨学金制度に登録すると推定している。

従業員は登録期間中、1日あたり1米ドルを教育に拠出し、フロリダ大学、ブランドマン大学、ベルビュー大学のいずれかでビジネスまたはサプライチェーンマネジメントを勉強する。1ドル以外の残りの額は、ウォルマートが負担するようだ。夜間や週末にはオンライン受講などフレキシブルに勉強することが可能で、学べる科目も今後増えていく予定である。早期にプログラムを中断する従業員に対しても、罰金はない。

大学で勉強するウォルマート従業員たち

米国の労働力市場が厳しさを増していることから、ウォルマートは、従業員に大学教育の機会を提供するこの施策で人材流出をくい止めることを目指す。米国の民間セクターで最大の雇用者を持つ同社は、アーカンソー州ベントンビルで開催された年次株主総会で発表した。

2018年の初めには、米国の従業員の時給を11米ドルスタートに引き上げ、出産・育児休暇の補助を拡大した。また、特定の地域でジーンズなどのよりカジュアルなドレスコードをテストしている。

米ウォルマート人事部のエグゼクティブ・ヴァイスプレジデントのジュリー・マーフィー氏は、同プログラムについて「従業員がウォルマートと共に自信をもって勉強し、成長出来るように」設計されていると説明。これまでもウォルマートは、高等教育の修了に相当する「GED受験」を支援していたが、今プログラムでは、その先の大学にもつながる。

戦後最低水準の失業率にある米国では、現在、ウォルマート以外にも多くの企業が厳しい労働市場に直面しており、優秀な人材確保の競争が激化している。スターバックスやチポトレ・メキシカン・グリルのようなチェーンも同様に、従業員のための教育制度の提供を開始した。

戦後の日本では貧しさから学業を断念し就職することも珍しくなく、高度経済成長期の猛烈な仕事量の傍らで夜学に通うなどの苦労話も聞かれる。アメリカではスティーブジョブズのように、負担をかける親族への配慮から学業を断念する場合もある。

ウォルマートは、意欲のある人が努力次第で学業も仕事も諦めずにキャリアアップすることのできるシステムを作り上げている。

【参照サイト】Walmart’s New Education Benefit Puts Cap and Gown Within Reach for Associates
(画像提供:Shutterstock

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