耳が聴こえない人になにかを伝えたいとき、あなたならどうするだろう。
筆談や手話、最近なら音声をテキストに変換してくれるアプリもある。いずれも役に立つが、健常者同士のコミュニケーションより手間がかかることに気兼ねする聴覚障害者もいる。
たとえばアプリなら、ダウンロードして口元にスマホを近づけて話す必要がある。こういったステップを省略して、普段のように会話できる方法はないだろうか。
自身の両親が聴覚障害者で、コミュニケーションに苦戦している様子を見ながら育ったJari Hazelebach氏は、より簡単に音声をテキストに変換する仕組みを開発した。
SpeakSeeという名のこの製品は、相手が専用のマイクロフォンを装着して話すだけで、内容が聴覚障害者のスマホにテキストとなって表示される。この仕組みなら、相手は普段通りに話すだけで聴覚障害者とリアルタイムで会話ができる。
SpeakSeeが優れているのは、3人以上の会話にも対応できる点だ。通常、マイクロフォンは周囲の音を全部拾ってしまうという難点がある。
しかしSpeakSeeでは個々のマイクロフォンに音の聞こえる方向を察知するセンサーが入っているため、どのマイクロフォンが誰の話を拾えばいいのか判断できる。そして各人の話はスマホに色分けして表示されるため、聴覚障害者は誰がどの発言をしたのかがわかる。今のところ、最高で9つのマイクロフォンを同時に接続できるそうだ。
現在SpeakSeeは英語、スペイン語、オランダ語にのみ対応しているが、今後はより多くの言語に対応していく予定だという。開発した会社は「Be part of the conversation(話の輪に入ろう)」というメッセージを掲げ、アメリカのクラウドファンディングサイトIndiegogoで資金を調達中だ。
昔から障害者側も健常者側も、互いにコミュニケーションを取ろうと多くの努力を重ねてきた。テクノロジーの発展のおかげで、自分の気持ちをより伝えやすくなるのは嬉しいことだ。
開発に携わったHazelebach氏が最初にSpeakSeeを試した相手は、もちろん自分の両親だったという。まず2人に知らせたいと思う彼の気持ちは、両親にもしっかり伝わったに違いない。