□□市〇〇区△△町◇丁目。自分の居場所を他の人に伝えるために欠かせない住所だが、世界を見渡すと正式な住所がわからない場所も多い。
たとえば大きな公園や農村地域、急激に開発が進む地域などだ。住所があてにならない場所もあれば、そもそも住所がまったく存在しない場所もある。場所を正確に特定できないと、ビジネスではもちろんのことプライベートの旅行などでも困る場面が出てくる。
イギリスの会社what3wordsはこういった課題を克服するため、まったく新しい方法で世界中の位置情報を決める仕組みを考案した。同社は世界全体を57兆個の、3メートル四方の正方形に分割し、それぞれの正方形に異なる3つの単語を割り振った。
たとえば「テーブル、ランプ、スプーン」といった具合だ。この3つの単語の組み合わせはほかの正方形とかぶらないため、その正方形に固有の位置情報として機能する。
3つの単語はwhat3wordsのアプリを使い、オンラインでもオフラインでも検索することができる。人の多い地域ほどシンプルかつ一般的な単語を割り振る工夫がなされているため、GPSを利用した位置情報よりも覚えやすく、相手に伝えやすい。名刺に3つの単語を印刷する、タクシーで行き先を告げるときに使う、民泊のゲストに場所を伝えるために使うなど、活用できる範囲は非常に広い。救助活動や人道支援の現場でも大いに役に立つ。
what3wordsの仕組みは、本来の住所が不明瞭な場所で便利なのはもちろんのこと、住所がはっきりしている場合にも役立つことがある。
たとえば大きなビルやスタジアムで起こりがちなのが、住所から建物は特定できても入り口がわかりにくいというケースだ。屋外の音楽フェスなどで大勢の人が集うなか、自分が立っている位置を友人に知らせるのも容易ではない。3メートル四方ごとに分割されたwhat3wordsのシステムなら、「ある住所の中のこの位置」という部分まで伝えられる。
what3wordsはすでに自動車会社やドローン会社など、多種多様な企業とパートナーを組んで活動している。様々な事業に活用できるのはもちろん、仕事以外の場面でも自然に使える。
電話で「どこからかけてるの?」と聞かれれば「テーブル、ランプ、スプーン」。今聞くと呪文のような答えだが、それをあっさり納得するくらい私たちの生活に馴染む日が来るのかもしれない。
【参照サイト】what3words
(※画像提供:what3words)