職場での全面禁煙や、消費者に直接、税を課す形でレジ袋を有料化、そして同性婚の是非を問う国民投票の実施など、これらの決定を世界に先駆けておこなっている国はどこかわかるだろうか?それは、イングランドの横に位置する島国アイルランドだ。
このような画期的な政策づくりで先駆的なアイルランドが、またしても大きな決断をした。世界で初めて、政府系ファンドで化石燃料関連事業からのダイベストメントをおこなう法案の可決が確実となった。
ダイベストメント(divestment)とは、インベストメント(investment)の反対語で、株、債券、投資信託を手放したり、銀行口座から資金を引き揚げることを意味する。地球温暖化に悪影響を与える石油・石炭・ガスなどの化石燃料を供給または依存する企業に投資する代わりに、持続可能な社会を目指す事業をおこなう会社に投資をする。
現在、政府が管理するアイルランド戦略投資基金(ISIF)は150社に3億ユーロ(390億円)の化石燃料関連の投資をしている。しかし、先日アイルランド下院を通過したこの法案によって、今後5年間で100%石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料への投資引き上げが強制されることになる。法案は今後上院でも議論されるが、アイルランドは下院の権限が強いため、法案の成立はほぼ確実である。
石油関連事業でのダイベストメントの流れは最近広まりつつある。たとえば、巨大年金ファンドや、ニューヨーク市などが化石燃料からのダイベストをはじめている。また、ヨーロッパではほかにもノルウェーが、ダイベストメントする意向を示している。しかし、まだ国家単位で決断をしているわけではない。
「アイルランドがダイベストするということは、国家と国民が短期的な利益を追求するのではなく、より長い目で開発を続けていくという、明確なメッセージを示すことである」とアイルランドの国会議員で、この法案を提案したThomas Pringle氏は語る。
気候変動は確実で、それを痛感するような奇妙な天候が世界各地で見受けられる。この状況を少しでも改善するためには、一人ひとりが毎日の生活のなかで小さな工夫をすることと、国や大企業による大規模な変革が必要であろう。ダイベストメントという流れが今後加速化し、持続可能な世界に近づいていくことを期待したい。
【参考記事】A Nation of Firsts
【参考記事】Fossil Fuel Divestment Bill 2016
【参考記事】Ireland becomes world’s first country to divest from fossil fuels