自閉症を持つ人は、世界に約2,170万人いるといわれる。これは、1000人あたり1~2人という数だ。コミュニケーションが困難であったり、社会性に障害が生じたりするもので、知的障がいを伴っていることも多い。
自閉症は先天的な要因が大きく、根本的な治療法は確立されていないが、回復したケースも報告されている。米映画「レインマン」で、アカデミー主演賞を受賞したダスティン・ホフマンが、自閉症の役を演じたことで、世間的な認知度が高まったといわれる。
そんななか、自閉症の子供の不安を軽減し、注意力を高めるソーシャルロボットがルクセンブルクで新たに開発された。ルクセンブルク大学からスピンオフした企業LuxAIによりつくられた人工知能(AI)「QTrobot」だ。
QTrobotは、液晶ディスプレイの顔とロボットアームを備えた人工知能(AI)だ。表情豊かな顔と動く腕を使って子供の感情を模倣することで、自閉症児の感情認識能力を高めることができる。ロボットの行動はある程度決まっており、子供を否定することも決してない。子供たちは付属のタブレットインターフェースを使ってQTrobotと対話し、相手への関心レベルを高めたり、混乱した行動を減らしていくのだ。
QTrobotには、Androidと互換性のあるユーザーフレンドリーなグラフィカルインターフェースも付属。これにより、ゲームなどを使った独自の教育カリキュラムを設計することができる。自閉症の子供がより独立した人間になるためのさまざまな社会的スキルを開発し、できるまで同じことを何度繰り返してもいい。これらは、自閉症トレーニングに関する長年の研究から開発された。
このソーシャルロボットについて、APEI Thionvilleの特別エデュケーター、マイケル・ルイス氏は「集中力を向上させるツールのようなもの。一般的な教育のエクササイズを、とても魅力的に見せてくれる」と評価。
アスペルガー症候群の子供を持つ母で作家のソルヴェイグ氏は「私の息子はルクセンブルグのQTrobotとのトレーニングに参加しました。自分の感情を表現することができるようになり、他人への共感力が増したことで他の人々をサポートできるまでになりました。」と語る。
昨今の人工知能の急速な進歩により、人間に近いロボットが作れるようになった。機械が限りなく人間的になる事については、賛否両論あるが、自閉症児を持つ家族や、何より自閉症児本人にとって、QTrobotは非常に心強い味方といえるだろう。
【参照サイト】LuxAi – QTrobot