大海には5か所、海流の循環によりゴミが特に集中するゴミベルトと呼ばれる場所が存在する。代表的なのはハワイとカリフォルニアの間に広がる太平洋ゴミベルトだ。これらの海域から抜け出せなくなった、あまたのゴミを通常の船と網で一掃するには、数千年かかるとも言われる。汚れた海はこのままどうすることもできないのだろうか。
オランダの非営利団体The Ocean Cleanupは、太平洋ゴミベルトに浮かぶゴミを5年で50%減らす装置を開発した。この装置は600mにおよぶ浮きと、その下に取り付けられた水深3mまで届くスカート状の部分でできている。この装置がゴミを囲うようにして集めていくのだ。海流がスカート状の部分を押すことで装置は自然とU字型になり、ゴミは囲いの中央に集まっていく。
こうして装置が何か月か海面を漂ったあと、船がやってきて囲われたゴミを回収する。回収したゴミは地上に運ばれ、リサイクルへと回される。The Ocean Cleanupの装置は、プラスチックの細かい破片から数十メートルにおよぶ漁網まで集めることができる。調査によると現在太平洋ゴミベルトに浮かぶプラスチックゴミの多くは、大きめの破片の状態であり、今の状態で回収することで危険なマイクロプラスチックの増加を防げるという。
この装置が優れているのは、ゴミを捉えるにはゴミと同じように装置も動かそうという発想が根底にある点だ。ゴミが海流の力でゴミベルトを漂っているのなら、同じ力で装置を動かして最もゴミが溜まっている場所に引き寄せられるように設計されている。そして装置の方は海流の他にも風と波の力を受けるため、ゴミよりも速いスピードで進むことができ、その結果ゴミを捉えられるというわけだ。自然の力で動くため外部のエネルギー源を必要とせず、ライトなどに使う電力も太陽エネルギーでまかなわれている。
この装置をすべての還流に投入すれば、海に浮かぶプラスチックゴミを2040年までに90%除去できるとThe Ocean Cleanupは予測している。数千年という気の遠い時間軸に比べて、迅速な解決を見込めるソリューションだ。この装置は今月8日にサンフランシスコを出発し、数週間にわたる試用期間を経たあと、10月半ばから実際にゴミベルトで稼働し始めるという。波にまみれる海洋ゴミを確実に地上まで運んできてほしい。
【参照サイト】The Ocean Cleanup
(※画像提供:The Ocean Cleanup)