プラスチック削減に向けた、大手企業10社のCSR事例

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プラスチック問題への関心が世界中で高まっている。2050年には海のプラスチック量が魚の数よりも多くなると言われており、世界各国の政府や企業でプラスチックの削減を目指す動きが活発化している。IDEAS FOR GOODでも、これまで多くの対策・解決事例を取り上げてきた。

本記事では、プラスチック問題に関する解決策の中でも、そもそものごみを減らすという考え方である「リデュース(Reduce:削減)」に焦点を当てて、国内外の大手企業の取り組みを紹介していこう。

プラスチックはなぜ問題か?

プラスチックの問題点としてよく挙げられるのが、海洋プラスチック汚染だ。海洋プラスチックとは、私たちの普段の生活や経済活動から海に流れ着いたり、直接海や川に捨てられたりして、最終的に海洋を漂うごみを指す。プラスチック製品は丈夫で長持ちするために、一度海に流れついてしまうとほとんど分解されることなく、海洋生物の生態系や私たちの生活にも悪影響を及ぼす。

以下は、プラスチック問題に関する事実と数字を以下にまとめたものだ。

一般

  • 世界の海に存在しているプラスチックごみは、合計で1億5,000万トン(McKinsey & Company 2015
  • 海洋プラスチックごみの内訳:海洋プラスチックの80%以上が、漁業や漁船などの海で発生したものではなく、陸から発生して海に流出したものである(McKinsey & Company 2015
  • アジア太平洋地域でのプラスチックごみによる年間の損失は、観光業年間6.2億ドル、漁業・養殖業では年間3.6億ドルになる(APEC 2009

生物への影響

日本とプラスチックごみについて

  • 海に流出するプラスチックごみのうち、2〜6万トンが日本から発生したもの(Jambeck Research Group 2015
  • 日本はプラスチックの生産量で世界第3位。ここでいうプラスチックとは、熱可塑性プラスチック及びポリウレタンを指す(Plastics Europe 2017)
  • 日本は廃棄されるプラスチックの有効利用率が84%。しかし全体の57.5%は、燃焼の際にエネルギー回収をするものの燃やす「サーマルリサイクル」という処理方法に頼っており、これは世界基準で「リサイクル」と認められていない(プラスチック循環利用協会 2018)

引用元:海洋プラスチック問題とは?数字と事実・原因・解決策、マイクロプラスチックの影響など

リサイクルよりもリデュース(削減)が大切な理由

プラスチックごみ

ごみを減らすキーワードである3R(スリーアール)、つまり「Reuse・Reduce・Recycle」は多くの人が聞いたことがあるだろう。もちろん、リユースやリサイクルも大切だが、ここでは特にリデュースを優先すべき理由を述べていく。

まず、私たちは長年リサイクルに頼ってきたが、リサイクルが実際は完璧には機能していないという事実があるからである。環境に対して先進的な取り組みをしている国が多い欧州全体で見ても、ゴミの70%がリサイクルされず、埋立地行きとなっている状態だ。

また日本では、家庭から出るプラスチックごみの84%が回収されている一方で、そのほとんどが中国に輸出されていた。そしてその中国がプラスチックごみの輸入を今年1月に禁止したため、行き場を失った全国のプラごみが飽和状態であるという。

中国がプラスチックごみの輸入を禁止したことにより、多くのプラスチックごみ輸出国は東南アジアへの輸出に切り替えているが、中国より国土の小さな東南アジアの国々がこれから先も受け入れ続けられる可能性は高くない。また、中国ではリサイクルによって環境汚染が起きてしまったが、それが東南アジアでも起きてしまえば本末転倒である。

さらに、リサイクルする過程で大量のエネルギーを消費するため、エネルギー効率が良いとはいえない。再生品を作るより、そもそもごみを減らすことが最善なのだ。「プラスチックはリサイクルされるから、いくらでも使って構わない」という考えは捨て去る時が来ている。

大手10社が行うプラスチック削減

このような現状を受けて、プラスチック削減に向けて動いている企業の例を10つご紹介したい。

01. スターバックス:紙ストローの使用、リユースカップの使用

スターバックスは使い捨てプラスチックストローの使用を禁止し、年間で10億本以上のストロー廃棄を削減した。英ロンドンのスターバックスにおいては、使い捨てカップ代の徴収をテスト導入。日本でも何度でも使えるテイクアウト用のリユースカップを使用している。

02. マクドナルド:イギリスとアイルランドで紙製ストロー導入。2025年までにはプラスチックストロー廃止

マクドナルドは2018年9月から、イギリスとアイルランドの計1,361店舗でプラスチックストローから紙製ストローに順次切り替えていく。2025年までには全世界の全店舗でプラスチックストローを廃止することに加え、すべての包装紙をリサイクル可能な資源に切り替えるという。この決定には日本のマクドナルドも含まれ、2025年までの切り替えを検討するそうだ。

03. 米ディズニー:すべてのパークやリゾートで使い捨てストローとマドラー廃止

ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニーは2019年半ばまでに自社が所有、経営するすべてのテーマパークやリゾートなどから使い捨てのプラスチックストロー、マドラーを撤廃すると発表した。これにより、年間あたり1億7500万本以上のストロー、1300万本以上のマドラー使用を削減する。

また、他にもホテルやクルーズ船のアメニティも使い捨てから詰め替え式に切り替え、ショップのレジ袋も有料化する予定だそう。ただし、東京ディズニーリゾートは運営会社が異なるため、この決定は適用されていない。

夢の国でもプラスチック削減を。米ディズニー、使い捨てプラスチックストロー廃止

04. イケア:店舗とレストランで7種類の使い捨てプラ製品を全廃

スウェーデンの家具大手イケア(IKEA)は、参加の店舗やレストランで提供されるストローや保存袋など使い捨てプラスチック製品7種類を全廃する計画を発表した。またその他プラスチック製品に関しては、2030年までに原料をすべて持続可能なものに切り替えるという。

05. すかいらーく:2020年までにプラスチックストローを順次廃止

「ガスト」や「バーミヤン」などのファミリーレストランチェーンで知られるすかいらーくは、海外企業に続き、日本の外食大手では初めてプラスチック製ストローの廃止を決定した。

グループ全業態で、2020年までに順次廃止を目指している。利用客からの要望や、必要性がある場合、さらにタピオカ入りドリンクを注文した場合には提供されるという。

06. ハイアット:ホテルで使い捨てプラスチックストローとドリンクピックを廃止

ハイアット・ホテルズ・コーポレーションは世界中のハイアットホテルにおいて、プラスチック製の使い捨てストローとドリンクピックを廃止すると発表した。今年の9月からストローとドリンクピックは、ゲストからの申し入れがあった場合のみ提供され、それ以外は代替品が使用される。

07.ユニリーバ:パッケージの使用量1/3。2025年までにリサイクルプラスチックを最低25%使用

ユニリーバは、2020年までにパッケージの使用量を1/3にすること、また2025年までにリサイクルされたプラスチックを最低25%パッケージに使うことに取り組んできた。それに加えて、同社は2025年までにパッケージを100%リサイクル可能なプラスチックにすると発表している。

08. 三井住友海上火災保険:社員食堂でプラスチックストロー、カップを紙製に切り替え

三井住友海上火災保険は、同社本店とMS&ADインシュアランスグループHD本社の社員食堂でのプラスチック製ストローとカップの提供を廃止し、紙製に切り替えた。カップのプラスチック製フタは今後、紙製で代替されていくという。

09. ボルボ:2019年末までにオフィス、社員食堂、イベントで使い捨てプラ廃止

スウェーデンの自動車大手ボルボ・カーズ(Volvo Cars)は2019年末までに世界中の同社のオフィス、社員食堂、イベントでの使い捨てプラスチックの使用を廃止する。さらに、2025年までに同社のすべての新車種で使用するプラスチック部品の25%以上を再生素材に転換することも発表した。事業活動と製品の両面から脱プラスチックを目指していく姿勢だ。

10. マリオットホテル:2019年夏 プラスチックストロー提供廃止

マリオット・インターナショナルは世界6,500ヶ所以上の傘下のホテルで、2019年7月までにプラスチック製ストローを廃止すると発表した。要望がある場合は、紙製のストローを提供するという。マドラーも木製に代替する。日本のマリオット傘下のホテルではプラスチック製の在庫切れや、代替品の調達ができ次第、実施される。

まとめ

使い捨てプラスチックは、海をはじめとした環境に大きなダメージを与えている。とりわけ、ストローが鼻に詰まった1匹のウミガメが血を流しながら救出される動画は世界中を駆け巡り、企業の責任が問われている。

実際に上記のような大きな企業がプラスチック削減に向けて決断を下したことは、世界中に驚きと感動をもたらしている。また、ストローという身近なものを廃止することで消費者の意識改革に繋がることも期待され、地球環境の改善にとって大きな一歩となった。

しかしながら、ストローは生産されるプラスチック製品のごくわずかにすぎない。より多く生産されているレジ袋やペットボトルに対する、政府の規制や企業のさらなる取り組みが期待される。

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