シミもシワもない、つやつやで透き通った肌。引き締まった美脚。二の腕のたるみや、ぽっこりお腹など無縁のスリムな体型。巷にあふれる広告のモデルや女優たちの肌や体型は、完璧なまでに美しい。
そんな広告を見かけたとき、どんな思いを抱くだろうか。「自分もこんな美肌でスタイルが良かったらいいのに」と思うかもしれない。たしかに元からきれいな人が選ばれているという前提もあるが、それ以上に、実に多くの広告で画像加工が当たり前となっている。
そんな中、パーソナルビューティーケアブランドの「ダヴ(Dove)」は、自社のすべての広告に“画像加工をしていないことを宣言するマーク”を導入することを、2018年10月22日に発表した。髪に人工的な艶を与えたり、毛穴を消したり、体型を修正したりする加工は行われていないと証明している。
同社は2017年から画像加工をせずに広告活動を行なってきたのだが、そのままではわかりづらいため、マークを導入することにしたという。
なぜわざわざ、加工をしていないと宣言する必要があるのか。ダヴは、あらゆるメディアで画像加工が行われていることにより、世界で約7割もの女性に悪影響をおよぼしていると言及する(※1)。
事の発端は2011年のイギリス。化粧品ブランドのランコムは女優ジュリア・ロバーツを広告に採用し、内側から輝くような「ミラクル」な肌を演出した。しかしデジタル加工を大幅に行ったため、英国広告基準局(ASA)から掲載禁止処分を受けた(※2)。もっとも、ロバーツ氏の肌は美しいことで定評があるそうだが。
ここまで厳しい処分を受ける理由は、多くの女性が広告や雑誌に登場する“完璧な”女性と自分を比較し、外見への自信を失ってしまうという問題があるからだ。その結果、人によっては次々と化粧品を買ったり、モデルの痩せた姿に憧れて過度なダイエットに走ってしまったりする傾向があるという。
ダヴは、すべての女性が自分の美しさに気づき、自信に満ち溢れて生きられる世界を築くことをブランドミッションとして掲げており、広告を通して「ありのままのあなたこそ、美しい。」というメッセージを発信しているのだ。
身体イメージの専門家フィリッパ・ディードリッヒ教授は「美容ブランドが加工前の画像を載せることにより、女性たちが感じている不要なプレッシャーを取り除くできる」と述べた。
今回の取り組みについて「ダヴ」のマスターブランド 統括責任者、ソフィー・ガルバーニ氏は「ダヴは、ありのままの写真と加工された写真の違いを明確にすることで、『現実離れした理想像を目指さなければならない』というプレッシャーから女性たちを開放したいと考えている。より多くのブランドがこの活動に共感・参加し、写真加工に関する情報の透明性を上げる取り組みが広がっていくことを願っている」とコメントしている。
これからは、目元のシワも、ぷっくりしたお腹も、白髪も!「素敵だな」「かわいいな」と思えるような広告、ビジュアルが増えていくのだろうか。今後のダヴの取り組みに期待したい。
※1 ユニリーバ 「世界における美と信頼に関する調査(2016)」
※2 Airbrushing Meets the #MeToo Movement. Guess Who Wins
(画像・情報提供:Dove)