イギリスでは、国内すべての広告が広告コードに則っているかを監視するASA(英国広告基準局)と、広告コードを作成するCAP(広告実践委員会)という組織が存在する。この広告コードは放送分野、非放送分野のいずれにも適用され、オンラインメディアやソーシャルメディアも対象となる。
そんな両組織は12月14日に、有害なジェンダーステレオタイプを生む表現を禁ずると発表した。このルールは2019年6月14日から施行される予定だ。今回の決定は、ASAが2017年に行った調査で、有害なステレオタイプが人々の持つ選択肢を制限したり向上心を阻害したりし、男女不平等を助長していると示されたことを鑑みて下された。
CAPによると、この新ルールはジェンダーステレオタイプを完全に禁ずるのではなく、避けるべき有害な表現を明確にすることが目的だという。ではどのような表現が有害と見なされるのだろうか。CAPはガイダンスを作成し、問題があると見なされやすい表現例を次のように紹介している。
たとえば、女性が仕事の時間に間に合うことより化粧をすることを優先し、その結果会議に遅れるという描写。「女性は仕事への情熱より見た目を優先するべきだ」ということをほのめかす表現は避けなければならない。加えて、「男だからおむつを替えられない」「女だから車を停められない」など、ある作業ができない理由を明確に性別のせいにしている表現も許容されにくい。
また、「痩せすぎのモデルを起用した広告」などの、人生に不満を感じている人がジェンダーステレオタイプに沿った体型になるだけであらゆる問題が解決すると示唆する描写。魅力的で成功した、憧れのライフスタイルを送る人物を描写することは問題ではないが、個々人の幸せが理想的な体型やその他の身体的特徴に左右されるべきだと提案する表現は、慎重に避けなければならない。
子ども向けの広告にも注意が必要だ。「女の子の夢はお嫁さん、男の子の夢はエンジニア」など、商品、遊び、キャリア選択がいずれかの性別の子どもにふさわしくないと明確に伝えるような表現は避ける必要がある。
イギリスの広告は、2019年からこういったガイドラインを守る必要が出てくるわけだが、ひるがえって日本の広告はどうだろうか。広告は人の欲望を喚起するものだが、それがヒートアップすると下卑た表現になってしまう。ステレオタイプを悪用した表現もそのひとつで、そこに見え隠れする欺瞞にはきちんと「NO!」を突きつけたい。