夏は涼しく、冬はあたたかい。そんな快適でエネルギー効率のいい家には、断熱材が欠かせない。断熱材は外気が室内に入ってくることを防ぎ、室温をできるだけ一定に保つ効果があり、現在さまざまな建物で使用されている。
この断熱材を、「いまは使われずに廃棄されているモノ」でつくる試みを、イギリスのバース大学、ブライトン大学、フランスのUniLaSalleと他5つの研究チームが共同で行っている。すでにある廃棄物や副産物を建設部門で広く使用すれば、建設に伴うCO2排出量を大幅に減らし、グラスウール(ガラス繊維でできた断熱材)やロックウール(岩と石灰などからつくられる断熱材)など、従来の断熱材に使用されている天然資源への依存を少なくできる。
そこで研究チームは今回、断熱材の素材につかえるモノをいくつかテスト中だ。特に注目されているのが、麦わら、トウモロコシ、そして羽毛布団という三つの素材である。
三つの素材はどれも、毎年大量に廃棄されるものばかりだ。たとえば麦わらは、イギリスでは小麦粉の製造後に最大700万トン残り、動物用の寝わらとして使用される他はほとんど廃棄されているという。
また、トウモロコシの茎は、現在使用されずに50%が土に戻されている。その量は欧州だけで年間42万トンにものぼる。そして羽毛布団は、枕とともに毎年6万1,900トン焼却されている。特にポリエステル布団は多くのエネルギーを必要とし、温室効果ガスを多く放出する。
バース大学研究チームは、この3つの材料を使って断熱パネルを作成した。パネルは1,1 m四方で、厚さは15cm 。両側には9 mmの合板が取付けられている。一般的な断熱材と同じ大きさで、各パネルには相対湿度、内部と外部の温度、および熱流束を測定する器具が付けられている。
パネル試験は、6週間にわたって行われる。これらの素材が断熱材として科学的に検証されるのは初めてで、熱性能の正確な評価ができると期待されている。テスト後には、どの材料が断熱材に一番適していたかを見極め、将来的には商品化も考えられているようだ。
新たな資源をつかうよりも、いま廃棄されているモノを使って断熱材をつくり、エネルギー効率のいい家をつくる。そして、建設業界全体でCO2排出量を減らすことにつながる英仏共同の研究プロジェクトの今後がとても楽しみだ。
【参照サイト】Waste materials to be tested as viable options for insulating buildings