食材は家から持ってきて。フードロス解消を訴える、ブラジルの「食材のないレストラン」

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2018年の夏に、社会課題に関心のあるインフルエンサーがこぞって取り上げた、ブラジルの「食材のないレストラン(The restaurant with no food)」をご存知だろうか。このレストラン、食べるものが無いのではない。料理に使う食材を店が用意するのではなく、お客さん自身が家の冷蔵庫から食材を持ってくるというコンセプトなのだ。

専用のバッグに入れてレストランに食材を持ち込むと、気鋭のシェフ、デイビット・ヘリッツ氏がそれを五つ星料理へと変身させてくれる。このレストランを手がけたのは、アメリカの大手マヨネーズ会社ヘルマンズ。人々の食品廃棄物の問題への関心を高め、同時にどんな料理にも同社のマヨネーズが合うことをアピールするために、このキャンペーンを実施した。

食材のないレストランで使うバッグ

食材を入れる専用バッグ

バッグから食材を取り出すシェフ

要らない食材をバッグから取り出し、調理するシェフ

2日間限定でサンパウロにオープンした食材のないレストランでは、利用客が「もう使えないと思っていた」食材が次々とフレンチコース料理のような一皿として登場。最後に、参加者には「家でも作ってみてね」という思いも込めて、請求書の代わりに料理のレシピがプレゼントされた。レシピは動画でも公開され、冷蔵庫でだめになりかけていた食材がグルメな一皿に生まれ変わる様子が話題をよんだ。

一流シェフによって生まれ変わった食材

多くの美食家の関心も集まり、ブラジルを中心にソーシャルメディアで話題に。200以上のニュースで報道されるなど、注目を集めた。ヘルマンズ社によると、2,700種類もの食材がごみ箱行きになるところを救済できたという。

食後に配られるレシピ

世界食料機関(WFP)の所長であるダニエル・バラバン氏は、このキャンペーンについて「食品廃棄物の問題に気づかせる、非常に重要なアイデアだ」とコメントしている。

2019年4月、2016年度の日本における食品ロス推計値が農林水産省から発表された(※1)。それによると、「食べられるにもかかわらず捨てられた」食べ物は約643万トン。前年度から3万トン減ったものの、一般家庭から発生する食品廃棄物は2万トン増加し、291万トンに。世界の食料援助量約320万トンに迫る勢いだ。これを国民1人あたりに換算すると、1日にお茶碗1杯分(139g)を捨てていることになる。食べ物としてみても、経済面でみても、もったいないという他ない。

あなたの家の冷蔵庫にも、眠っている食材が数多くあるかもしれない。それを「もう食べないから」という理由でただ廃棄するのではなく、クリエイティブで美味な一皿に変えられることを、このレストランは教えてくれている。

※1 食品ロス量(平成28年度推計値)の公表について
【参照サイト】Hellmann’s, The Restaurant With No Food

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