日焼け止めの影響は、人間が食べる魚にも。「人と海にやさしい日焼け止め」Sun of Munnah

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2018年にハワイで、サンゴ礁保護を目的に、有害な化学物質を含む日焼け止めを禁止する法案が可決した。ハワイだけでなく、パラオ、メキシコ、フロリダなどでも同様の規制が始まっている。この流れを受けて、「reef safe(サンゴ礁に安全)」な日焼け止めが注目されている。しかし、日焼け止めによってダメージを受けるのはサンゴ礁だけではないことが、ヨーロッパの研究機関によって判明した。

2019年4月に、バスク大学が発表した研究結果がスペインで注目を集めている。海に住む魚の体内に、人間が使う医薬品や日焼け止めの成分が蓄積されていたのだ。抗うつ薬に使われるアミトリプチリン、抗生物質シプロフロキサシン、そして日焼け止めに使われるオキシベンゾンである。これらの汚染物質は魚の代謝を妨げ、血しょう、脳、肝臓などに悪影響を及ぼすことが判明した。医薬品やケア製品の消費量が増えたことで、水処理施設で十分に浄水処理されず汚染物質が海に流れ出たものと考えられている。

スペイン日焼け止め

Image via ShutterStock

バスク大学の研究者は、「魚体内でこれらの汚染物質が分解されると、さらに有害な物質が生成され、他の海洋生物にも影響を及ぼす可能性がある」と指摘する。「また、海中の他の汚染物質と混ざり、別の種類の毒性を引き起こす可能性もある。海の汚染が進むことで、状況が悪化し広範囲で影響を及ぼす恐れもある。有害物質の影響が魚個体に留まるのか、それとも食物連鎖に影響し、海の生態系や人間にも影響を与え得るのかを含めて、研究を急ぐ必要がある。」

スペインや南フランスには、毎年夏に何千万人もの観光客が訪れ、ビーチや海水浴を楽しんでいる。多量の日焼け止めが地中海に流出していると言われており、地中海のエコシステムへの影響が懸念されている。化学物質で作られた日焼け止めへの懸念が高まる中、動き出したヨーロッパの化粧品ブランドがある。

スペインのオーガニックコスメブランド、Munnah(ムナー社)は、人の肌はもちろん、海洋生物の安全を考えて成分を配合したオーガニック認証の日焼け止め、Sun of Munnah(以下、サン・オブ・ムナー)を発表した。

Sun of Munnah

Sun of Munnah

使われている成分はナノ粒子化されていない酸化亜鉛の他に、ラズベリーシードオイル、キャロットシードオイル、ラズベリーシードオイル、キャロットシードオイル、シアバター、セサミオイルなど、天然の日焼け止めと呼ばれる様々な種類の植物成分が含まれている。さらに、強い日光を浴びる肌への栄養や保湿も考えられている。

「サン・オブ・ムナー」は、著名なスペインのオーガニック化粧品メディア「オーガニックス・マガジン(Organics Magazine)」主催のアワードにノミネートされており、注目度の高さがうかがえる。アワードの結果は、2019年11月に発表される予定だ。(追記:2019/11/19 オーガニッククリーンアワードを受賞)

「日焼け止めは、私たちの生活に必要なものです。」ムナー社創業者のヌリア氏は話す。

「ですが、海が一旦化学物質で汚染されてしまうと浄化が大変難しいです。これからの日焼け止めには、3つのことが求められるようになるでしょう。『紫外線と近赤外線から十分に肌を守ること』『人の健康に負担のない日焼け止め成分配合であること』『そして環境面でも安全であること』。」

ヌリア氏は、薬理学、植物療法、アロマセラピーに精通した薬剤師だ。彼女は以前、市販の化学物質の使われた日焼け止めを使っていたが、年々シミが増え、ついには皮膚癌を患った時期があったという。日焼け止めに十分な効果がなかったことを疑問に思い、研究を繰り返した。そして日焼け止め成分として使われる化学物質が肌や環境に与えるダメージを知り、化学物質に頼らず天然由来成分を用いた日焼け止めの開発を始めたという。

「数々のオーガニックイベントで講演を行ってきましたが、反響は大きく、スペインの消費者からも好評です。『人と海に優しい日焼け止め』というのは、今後世界のトレンドとなっていくでしょう。」

スペイン 日焼け止め

ムナー社創業者 ヌリア氏

しかし、課題も多い。天然成分と品質にこだわるため製造コストがかかり、どうしても化学物質による日焼け止めより価格が高くなってしまうのだ。また、利益の大半を開発費に回すため、大手日焼け止めメーカーのように十分なプロモーション活動を行うことができない。多くの消費者にとって、どの成分が有害か判りづらく、結果的にスーパーやドラッグストアに並んでいる低価格な日焼け止めを選んでしまうという声も聞く。消費者が環境に優しい日焼け止めに関心があったとしても、実際に購入するまでのハードルが幾つもあるのが現状だ。

ヌリア氏はこれに対し、「多くの方に正しい知識を持ってもえるよう、私たちコスメブランドも情報を発信していく必要があります。イベントでの講演やインターネットを通じた発信は、これからも力を入れていきたいです。」と語る。

今後の研究で、日焼け止め成分が環境に与える影響についてより多くのことが判明するだろう。安全な日焼け止めが多くの消費者の手に届くよう、行政、研究機関、産業界のさらなる協力が期待される。

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【関連サイト】Munnah

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