電灯のスイッチを押す、棚の扉を開ける、ソファから立ち上がる──日常のよくあるシーンである。こうした日々の小さな行動にも困難を抱える人たちがいることに想いを巡らせたことがあるだろうか?手先が麻痺して思うように動かせないとしたら、デスクランプの小さなスイッチを押すのも、戸棚の取っ手に指をひっかけるのも、難しい作業になってしまうのだ。
障がい者が抱えるこうした日常生活の困難を解消し、彼らのクオリティ・オブ・ライフ(QOL)を向上させようと立ち上がったのが、イスラエルのIKEAだ。IKEA Israelは、非営利団体のMilbat、Access Israelと協同で「ThisAbles」プロジェクトを始動し、既存の家具をアクセシブルに変える家具用アタッチメントを製作した。
動画に出てくるエルダーは、脳性麻痺のために手足の動きに制限がある。身の回りのほとんどのことは自分で行えるが、それでもスイッチや取っ手が小さな従来の家具を扱う場合には不便さを感じていたという。広い面でスイッチを押せるようにする「MEGA SWITCH」、戸棚の扉を肘で開けられるようにする「EASY HANDLE」といったアタッチメントを従来の家具に取り付けたところ、エルダーは大きな力を使わずとも簡単にスイッチを押したり扉を開閉したり行えるようになった。
動画に登場したアタッチメントの他にも、ベッドのわきに杖をかけておけるフック「CANE BY ME」、屈まなくても棚の奥の中身を確認できる「INSIDER」、棚の中身を読み上げてくれる「STUFF READER」など、全部で13種類のアタッチメントが存在する。これらのアタッチメントに関するデータはウェブ上で一般公開されており、3Dプリンターがあれば誰でも作成できるようになっている。
Disables(障がい)
→This ables(これで、できる)
ThisAblesプロジェクトが示すのはまさに「障害は、人ではなく社会の側に存在するもの」ということだ。適切な「補助線」さえあれば、できることは増えていくのである。
【参照サイト】ThisAbles
【参照サイト】Project ThisAbles| Milbat
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