近年、Flight Shame(フライトシェイム)という、飛行機に乗ることは環境破壊に加担するため恥とし、他の移動手段をすすめる言葉や活動が話題になっている。そんな中、ヨーロッパでは格安バス会社が増え、長距離バスの路線拡大と共に利用者が増加している。しかし、多くのバスや人が頻繁に行き交うようになると、危険を伴うほどバスターミナルが混雑する問題が発生している。
そんな中、サステナブルな社会を目指して数多くの取り組みをしているオランダで、混雑緩和と自然との共存を掛け合わせた、新たなバスターミナルが建設された。
建築事務所「Cepezed」がオランダの街ティルブルフに、快適性と機能性をコンセプトに持続可能なバスターミナルの設計を施した。電力を十分に自家発電できるだけではなく、交通機関の利用者が快適に移動できるようなスペースも作り、数々の工夫が凝らされている。
ターミナルの中心部分は屋根がなく草花が植えられ、通路とバスの停留所を覆う広い屋根は日よけや雨よけとなる。それだけでなく、屋根全体にはソーラーパネルが設置され、照明や電光掲示板、待合室の空調管理や社員食堂など、必要なエネルギーをすべて自家発電で供給可能な仕組みだ。また、屋根には半透明の素材が使用され、昼間には太陽光が入り、夜間は自家発電した電力でターミナルを照らす照明として機能し、常に明るく安全な空間に設計されている。
また、屋根には約10メートル毎にモーションセンサーが搭載され、バスや人がいる場所を感知して明るさをコントロールし無駄な電力の消費を抑えている。さらに、屋根は人の手を加えずに自動で洗浄され、メンテナンスはほとんど要らない構造である。
他にも、バスターミナル全体には安全性を重視したインクルーシブな設計になっており、車椅子の利用者でも移動しやすいような段差のない道を作り、目が不自由な利用者にも情報が伝わるよう、テラスとプラットフォームの手すりに点字を配置した。
2019年の1月にポーランドではジェシェフ市内にソーラーパネルが搭載されたバス停を設置しているが、今回Cepezedが設計したバスターミナルはRoof of the Year 2019にノミネートされ、世界から注目されている。このCepezedの取り組みのように持続可能なデザインで人と環境が共存できるプラットフォームが増えることを願いたい。
【参照サイト】bus station tilburg