【欧州CE特集#2】アムステルダムの官民一体型サーキュラーエコノミー実験区「De Ceuvel」

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アムステルダム中央駅からフェリーで5分。北部の再開発地区の中でも特にユニークだと注目されているのが、小さな敷地にオフィスやカフェ等が集まった「De Ceuvel(デ・クーベル)」だ。

水辺に近く、どことなくヒッピーな雰囲気のあるこのエリアは、クリーンテクノロジーのプレイグラウンド(遊び場)と呼ばれ、夏になると多くの若者や観光客でにぎわう。

ただ雰囲気が良いだけでは終わらない。De Ceuvelの面白い点は、アムステルダム市が民間企業に働きかけて生まれた小さな「サーキュラーエコノミーの実験区」であることだ。

サーキュラーエコノミーの成功事例をつくる場

De Ceuvelのコンセプトが誕生したのは2012年。もともと地域一帯が造船所だったのだが、使われなくなっていくうちに船から流れ出た油等で土壌が汚染されていった。この荒廃した土地を活用するため、政府が民間企業へ再開発のアイデアを募ったのがDe Ceuvelの始まりだ。

De Ceuvel入り口

造船所という背景があるからか、多くのプロジェクトが土地を埋め立てて新たな建築物をつくることを目指すなか、建築家グループ Space and matterは現地の大学と提携し、土地の毒素を抜く植物を計画的に植えていく手法(※1)で最終的に土壌を回復させることを提案。また、元から置いてあったハウスボートをオフィスにアップサイクルし、そこに入居したスタートアップからの賃料で運営するという独自のビジネスモデルも評価され、見事に10年間のプロジェクトを勝ち取った。

現在De Ceuvelに入居しているのは、クリーンエネルギー開発や、藻類からハンバーガーをつくる企業、アクアポニックスの活用をする企業など様々。この土地にボートのオフィスを構えることが、会社の価値の一つになるのだという。De Ceuvelには国内外から視察団が多く訪れるため、サステナビリティを重視する人々(=ビジネスパートナーになりえる人々)の目に留まりやすいのだ。

曲がりくねった遊歩道にハウスボートのオフィスを構え、その周りに竹や薮を植えて土壌汚染をろ過する

曲がりくねった遊歩道にハウスボートのオフィスを構え、その周りに竹や薮を植えて土壌汚染をろ過する

興味深いのは、土壌の汚染状況を植物でモニタリングする区画があったことである。オフィスの排水は、外に設置されたプランターに流れるようになっており、洗剤などの化学物質が混入していると、植物が枯れるため中でどのような水を使っているかが分かるようになっている。「洗剤を使うな」という代わりに、植物の健康状態でオフィスの水利用をモニタリングするというアイデアだ。

排水をモニタリングするプランター

排水をモニタリングするプランター

「De Ceuvelは、都市の中のテクノロジー、サステナビリティ、アートのハブです。われわれの役割は、循環型のライフスタイルへの移行のシンボルとなること。ワークショップや講義を通して人々に新たなライフスタイルを広めていくだけでなく、市民が一緒に楽しめるような場づくりをしたいと思います(De Ceuvelウェブサイトより)」Space and Mattersの広報担当者は、ここがアムステルダムでサーキュラーエコノミーの成功事例をつくる場となると語る。

次に、De Ceuvelの注目すべき二つの特徴である循環システム、そしてコミュニティづくりについてご紹介する。

※1 ファイトレメディエーションと呼ばれる分散型葉緑素ろ過のシステム。De Ceuvelではヤナギランやホソムギ、ジキタリスなどの植物を植えることで、土壌をろ過している。

De Ceuvelの循環システムとは?

De Ceuvelの一つ目の特徴は、人間の排泄物や食品ロスなどの廃棄物をテクノロジーを掛け合わせることで、エリア内で循環するシステムが確立していることだ。

ハウスボートのオフィスの電力は、100%再生可能エネルギーで賄われている。ソーラー発電が主力のようだ。ヒートポンプと空対空熱交換換気システムにより、周囲の空気から熱を抽出し、暖かい空気をオフィス内部に閉じ込めている。

De Ceuvel

オフィスのトイレにはバイオフィルターがついており、排泄物をコンポストできるようになっている。水洗式ではないため、通常のトイレで使われる水を約600万リットル節約するだけでなく、De Ceuvelの土に還る栄養素を作り出すことが可能だ。人間の排泄物の再利用にあたっては、病原体や残留薬などのリスクも考慮しつつ、栄養価を最大限に引き出す処理方法が研究されている。

敷地内にあるカフェレストランは、オランダ国内の街から持ち込まれた廃材でできている。ここでは、De Ceuvel内にオフィスを構えるTaste the Change社の海藻バーガーをテスト提供中だ。他にも自家製の炭酸飲料や、自家栽培されたキノコで作ったミートボールなどが楽しめる。オーガニックやローカルの食品を出すことで、政府からの補助金を受けやすいという狙いもあるという。

古い工業用金属や木製の窓ガラス、ベンチ等を使用して作られたインテリア

古い工業用金属や木製の窓ガラス、ベンチ等を使用して作られたインテリア

De ceuvelカフェ

また、De Ceuvelではアクアポニックスも積極的に利用されている。レストランの食品ロスをミミズがコンポストし、そのミミズを室内で飼育されている魚に与える。そして、魚の糞尿はフィルターで毒素と栄養素に分解し、最終的には栄養素だけ取り出して上部のグリーンハウスにドリッピングし、カフェで提供する野菜やハーブを育てるという仕組みだ。

このように、De Ceuvelに拠点を置くスタートアップの人々が持てる資産や技術を最大限に使い、循環のループを閉じている。廃棄物をただゴミとするのではなく、土地や食材に“栄養を与えるもの”として変換している好例である。

コンポスト

誰もが循環型のコミュニティに参加できる

De Ceuvelの二つ目の特徴は、オープンで誰でも“作り手”として関わることのできる場であることだ。敷地内にオフィスを構える企業やそのパートナー企業、建築家以外でなくとも、ボランティアとしてDe Ceuvelの持続可能なコミュニティづくりに貢献ができる。

具体的に言うと、土壌を回復させる植物を植えるのは市民で、カフェやハウスボートオフィスなどのテーブルなどに釘を打つのも市民、オフィスのデザインをするのも市民なのである。座る場所や食べる場所・学ぶ場所・働く場所などを自らの手でつくりあげる過程に関わることで、自然とサーキュラーエコノミーやサステナビリティを意識するきっかけにもなる。

行政の一声で始まったプロジェクトとはいえ、民間企業が設計(デザイン)し、スタートアップや市民ボランティアが一体となって作っていく民主的な場づくりが魅力的だ。

作業をする人々

Image via De Ceuvel Facebook

De Ceuvelのフェイスブックページでは、プロジェクトごとにボランティアを募集するほか、音楽やアートなどのイベントを開催するなどコミュニティづくりに力を入れている。子供から大人まで、すでに数百人のボランティアがDe Ceuvelの運営に関わってきた。

2012年から始まった10年間のプロジェクトは、まだ道半ばだ。元の土地のルーツをいかしながら、持続可能な場所に生まれ変わらせるという、行政だけでは生まれないアイデアを大胆に実現させるDe Ceuvel。今やアムステルダムのクリエイティブ地区となった北区も含め、実際に訪れてみてはいかがだろうか。

De Ceuvel

© MARTIJN VAN WIJK02

De Ceuvelの詳細
施設名 De Ceuvel(デ・クーベル)
住所 Korte Papaverweg 2 t / m 6
1032 KB Amsterdam
営業時間 火-木11:00 – 00:00、金-土11:00-2:00(カフェ)
営業日 火曜~日曜(月曜定休)
URL https://deceuvel.nl/en/

【参照サイト】De ceuvel
【参照サイト】Amsterdam’s circular living Lab: What organisations can learn from De Ceuvel
【関連ページ】サーキュラーエコノミー

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