近年、欧米では動物性食品がもたらす健康問題や畜産による環境破壊がテーマのドキュメンタリーが注目を集め、食生活を見直す人が増えている。その結果、「完全菜食主義」(ヴィーガニズム)が急速に増え、特にイギリスでは2014年に比べ600%以上増加している。
そんな中、2020年1月3日にイギリスの労働裁判所が「衣食住の生活すべてにおいて動物由来のものを排除する「倫理的完全菜食主義」(エシカル・ヴィーガニズム)は哲学的信念であり、法律で守られるべき」と判決を下した。
きっかけは動物保護の専門家であるJordi Casamitjana氏だ。彼は、以前の職場であり動物虐待につながるスポーツに反対する国際団体「The League Against Cruel Sports」が年金基金を動物実験に投資しているのではと疑惑を持ち、それを同僚に伝えたことで不当に解雇されたと裁判所に訴えたのだった。
2020年1月3日、イングランド東部にある町ノリッジの労働裁判所は、エシカル・ヴィーガニズムは哲学的信念であり、2010年平等法によって守られるべき対象であると裁定した。2010年平等法では、雇用主は宗教または信条、人種、性別、妊娠、性別を含む9つの特性を理由に差別をすることが違法とされており、今回はエシカル・ヴィーガニズムもその特性に当てはまる判断がなされた。
裁判官は「完全菜食主義としての全ての基準を満たしており、単なる個人的な意見ではなく、哲学的信念として認められられる。これは極めて重要で民主主義社会の中で考慮されるべき志向である。」と述べた。この判決を受け、Casamitjana氏は「ヴィーガンに関して正しく理解している裁判官の判断に大変嬉しく思う。私自身が動物性の素材を一切使用しない、エシカル・ヴィーガンであることと、それが法で守られるべき非宗教的信念であることを十分に証明でき、期待していた判決を聞くことができた。」と満足げに述べた。
団体はこの結果を受け、エシカル・ヴィーガニズムに対する判決には反論せず、Casamitjana氏を解雇した理由とは無関係だと主張を崩さなかった。今後の裁判では、解雇に対する主張はどちらが正しいかを精査する段階に入る。
この裁決によって、今後は雇用や教育、サービス、ヘルスケアなどあらゆる場面で差別を受けている人々も保護されると期待する声が上がっている。環境保全や動物保護などの信念を持つ人にとって、立ち向かうきっかけを生み出す第一歩となっただろう。果たしてヴィーガンのみならず、個人的な信念は法律から守られるべき対象なのだろうか?これを読むあなたならどう思うだろうか?
【参照サイト】Ethical Veganism Recognized As Philosophical Belief In Landmark Discrimination Case