混雑具合や要望に応じて形を変える3Dプリンター製のアート椅子。中国・深圳の駅に登場

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都会には休む場所がない。目的地へ向かって足早に歩く人々を、いかに効率良く運ぶか。それを念頭に設計された電車のハブ駅のプラットフォームでは、ベンチすらも窮屈そうに並んでいる。たった数十年ほど前までは、人々が駅の床に新聞紙を敷いて夜行列車の発車を待っていたことなど、もはや想像もできない。今回紹介するユニークな作品は、そんな過去の都市の中にたしかに存在していた隙間を思い起こさせるような、有機的で柔軟な概念のプロダクトだ。

中国・広東省深圳の高速鉄道福田駅のプラットフォームに展示されているのは、3Dプリンターで印刷された、一本のロープをさまざまな形に巻いて作られた椅子だ。その名も「インスタント・ラウンジ」。中国・広東省の深圳とニューヨークを拠点に活動する建築家・デザイナー・アーティスト集団のUEOが制作した。都市生活と建築をテーマに、2005年以降隔年で深圳と香港で開催されている芸術祭、「都市主義・建築ビエンナーレ」(UABB:The Bi-City Biennale of Urbanism/Architecture)の展示作品の1つとなっている。

この家具を形作るロープは、天井に吊るされた移動可能な3Dプリンターを使って、誰かが欲しいと思った時に欲しい場所に印刷できる。駅が混み合って椅子を設置するスペースがないときはロープを格納し、また新しいデザインの椅子を印刷するように設計されている。ロープの正体は、小石、種子、ドライフルーツの種、その他の食品廃棄物を詰めた綿素材のチューブで、不要になったら堆肥化できる。

instant-lounge

「インスタント・ラウンジ」の3Dプリンターの一部。
Image via UEO

公共空間はどんな人々がそこを歩くかによってその様相を変え、性質が変化するものだ。とりわけ、歩く人々とその密度が常に変わり続ける空港や駅では、よりフレキシブルな動きのできる設備が理想的である。この作品はそういった、都市社会のさまざまな様相に合わせられるようデザインされている。

大都市はその性質上、新技術が目の前に現れては一瞬でゴミに変わってしまう消費の場であり、環境保護とは逆方向を向く場となりがちだ。UEOのデザインしたこの椅子は、都市の新陳代謝に真摯に向き合い、テクノロジーとふんだんなユーモアを持って対応していると言える。

世界では、環境と人の双方にフレンドリーな家具や空間をデザインしようとする動きが加速している。いつの日か、東京をはじめとする日本のすし詰め状態の駅にも、人々が自由に自分の居場所を確保できる、ほっと一息つけるような休憩場所が設置されることを期待したい。

【参照サイト】UEO公式サイト
【参照サイト】The Bi-City Biennale of Urbanism/Architecture
【参照サイト】“Instant Lounge” by UEO Opens as part of the Shenzhen Biennale (UABB) 2019