気候変動に植林で立ち向かう。オランダ発スタートアップ「Land life company」の挑戦

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2015年にパリ協定が締結されて以来、世界各国の政府や企業がそれまで以上に気候変動対策に取り組むことを求められるようになり、CO2(二酸化炭素)などの温室効果ガス排出量に関して、具体的な数値目標を掲げる企業や自治体が増えた。

しかし事実として、世界人口は年々増え続け、経済は成長を続けている。世界全体の温室効果ガス排出量は今も増え続けており、われわれの住む地球を真の意味で持続可能にするまでの道のりは険しい。

温室効果ガスの削減を考える際、経済活動のあり方を問い直し、CO2排出量を削減することに目が向けられがちだが、「温室効果ガスの排出と吸収を均衡させること」が本質的な目標到達点であり、われわれは吸収量ともまた向き合う必要がある。

2013年にオランダのアムステルダムで創業したスタートアップ「Land life company」は、植林事業を通して、世界中で進行する土地荒廃と真っ向から対峙し、森林を回復させることで地球全体のCO2吸収量増加に努めている。木は光合成により、空気中のCO2を吸収し、O2(酸素)を発生させながら炭素(C)を蓄えて成長する。空気中からCO2を減らす上で最も有効な手段、それが植林なのだ。

同社は社員約30人の小さな会社だが、プロジェクトごとに政府機関やNGO、企業、教育機関などと協業している。近年は地域住民やボランティアの協力も得ており、事業規模をますます拡大している。現在25カ国以上の国と地域で実績があり、2019年には年間で100万本を新たに植林した。これは単純計算すると、毎日2700本以上の木を植えたことになるから驚きである。そして、2020年には前年比3倍の300万本(約3,000ヘクタール)を目標に掲げている。

企業のCSR活動など、世界中で植林プロジェクトは数多く存在するが、Land life companyが他と比べて画期的な点は、植林事業を本業として長期的かつ恒常的に行っている上、豊富な知識とノウハウを持つ専門家を自社に擁し、関連技術の開発も自社で行うという、事業の一貫性にある。

Land life company では木を植える際、独自開発した100%生分解性の「コクーン」と呼ばれる容器を使用する。ドーナツ型の容器の中心に苗木を差し込み、周辺部分に25ℓもの水が溜められる構造で、本来成育が厳しい雨量の少ない乾燥地域の土壌でも苗木を育てることが可能だ。一度、コクーンと共に苗木を埋めると、中の水が紐を伝って少しずつ根に流れる仕組みになっており、水やり等のメンテナンスが半年から1年の間不要となる。苗木の生育において最も重要なのが、まさにこの始めの1年間であり、コクーンの技術に支えられることで、同社が植えた木の生存率は約85%以上にまで昇るという。

コクーン以外にも、AI(人工知能)やリモートセンシング技術を地理データの管理に活かすなど、最先端テクノロジーの利用が大規模な森林再生を可能にしている面はあるが、Land life companyが着実に成長している最も大きな要因は、同社がそれぞれのプロジェクトに参画した組織や人々と常にWin-winの関係を生み出す点にあるだろう。

SDGs(持続可能な開発目標)へのコミットメントがあらゆる組織の社会的価値を判断する指標として定着してきている近年、パートナー企業にとっては、こうした環境活動を積極的に支援することで社会的責任を果たし、サステナブルであろうとする姿勢をステークホルダーへ示すことができる。また、同社の植林事業が地域社会に直接与えるポジティブな影響は計り知れない。森林にはそもそもCO2吸収以外にも多面的な機能があり、大気の浄化、土壌の生産性向上、より良い景観をもたらすなど、住民の暮らしの質を高めるさまざまな作用がある。

これまでに土壌劣化が起きた土地は、地球全体でおよそ20億ヘクタールと試算されており、これは中国とアメリカの国土を合わせた面積に匹敵する。森林面積の減少は直接的には生態系の破壊に繋がり、間接的にはCO2吸収量減少によって、気候変動を進めてもいる。Land life companyの挑戦はまだ始まったばかりだが、その理念への共感の輪を広げ、取り組みの輪も広げていくことができれば、私たちはきっと一度傷つけてしまった自然を元に戻していけるだろう。

【参照サイト】Land life company

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