素材の生産につかう水の量、製造にかかるエネルギー、輸送で出るCO2の量……。1枚のTシャツを購入したとき、何の気なしに見たレシートにこんなことが書かれていたら、あなたはどうするだろうか。
スウェーデンのメンズウェアブランドAsketが、販売する衣服に特殊なレシートをつけるキャンペーン「The Impact Receipt」を始めた。値段ではなく実際にかかる環境負荷を書き込むことで、商品を手に取った人に、責任ある買い物について考えてもらう取り組みだ。
レシートに書かれているのは、購入したアイテムの「原料生産、素材製造、製品製造、仕上げ、輸送」といったそれぞれの工程の「CO2インパクト(kg)、水(㎥)、エネルギー(mJ)」の内訳で、合計部分には商品の「真のコスト」と書かれている。
Tシャツの「真のコスト」は、CO2インパクト(189kg)、水(35.10㎥)、エネルギー(44.1mJ)だという。その内訳は次のとおりだ。
- 原料生産:CO2インパクト(0.29kg)、水(33.27㎥)、エネルギー(12.41mJ)
- 素材製造:CO2インパクト(1.12kg)、水(0.80㎥)、エネルギー(20.00mJ)
- 製品製造:CO2インパクト(0.24kg)、水(1.30㎥)、エネルギー(6.40mJ)
- 仕上げ:CO2インパクト(0.13kg)、水(0.03㎥)、エネルギー(5.14mJ)
- 輸送:CO2インパクト(0.11kg)、水(0.00㎥)、エネルギー(1.20mJ)
数値は同じスウェーデンの調査機関 RiSE(Research Institute Sweden)とのパートナーシップのもと割り出している。今回対象となるのは、AsketのTシャツ、オックスフォード、チノ、およびメリノニットウェアの4種類の商品だ。
ASKET公式サイトには、今回の取り組みについて次のように書かれている。
“サステナビリティ”をスキップ。 変化の“責任”を持つことにトライ。
これらの事実をあなたと共有します。あなたは、身にまとう衣服の真のコストを知る必要があるからです。得体の知れないものを口に入れないのと同じように、服でもそうすべきではありません。その行為は、無責任です。
The Impact Receiptは、単なる取引ではなく、ASKETの商品にお金をかけるときの合意を意味します。 自分の持っている影響を知ってください。買う量を少なくし、 一つの製品を長く使ってください。
サステナビリティ(持続可能性)ではなくレスポンシビリティ(責任)。アパレル業界は流行を作り出し、次々と新商品を投入し、消費者の購買意欲を焚きつけるが、Asketは商品を販売することで成り立つ事業をしているにも関わらず、無駄買いを諌めている。
ファッションは、文化を豊かにするものではあるが、大きな環境負荷を生んでいる産業でもある。ただ利益を追求するのではなく、業界の課題にしっかりと目を向けるAsketの取り組みは、ユーモアがあると同時に、非常に勇気があるといえるだろう。
【参照サイト】Asket
Edited by Kimika Tonuma