車を「停めない」ことで報酬がもらえるドイツの駐車場

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ドイツ南部の都市ミュンヘンで、持続可能なまちづくりのためのユニークな実験が行われている。市内のConnexビジネスセンター付近の駐車場を普段から使用しているドライバーが、車を「遠く離れた駐車場に停める」または「まったく停めない」ことで得をする取り組みが始まったのだ。

対象となるのは、スマホアプリで市内の駐車スペースの空き状況を確認するドライバーだ。目的地から遠く離れた駐車スペースや、人の使用率が低い駐車スペースを使う場合は、駐車料金が安くなったり、デジタル通貨が付与されたりする。駐車スペース自体をまったく使わなかった場合は、1分ごとにデジタル通貨が付与されるか、無料・低コストで公共交通機関が使えるクーポンがスマホに送信される。

これにより人々に公共交通機関の利用を促し、車による渋滞や大気汚染を解消する狙いだ。駐車場自体をすぐに無くしたり、不足させたりして生活を不便にするわけでもなく、利用者を街中に分散させることで、それぞれの駐車スペースの最適な大きさもはかっていく。

ミュンヘンのスマートシティ実験

この都市実験を主導するのは、AI(人工知能)を利用したプラットフォーム提供を行うFetch.ai社と、ブロックチェーン技術を提供するDatarella社だ。人々がいつどこに駐車したかを瞬時に識別・記録し、それに基づいてスマホアプリ上で各駐車場の料金をリアルタイムに表示する。

通常、目的地から遠い場所に駐車することは、避けたいと思うのが人の性だ。しかし、遠くの駐車場や不便な駐車場に駐車するほど料金が安くなったり、クーポンが発行されたりすることがリアルタイムでわかったとしたら、どうだろうか。他の都市でも同様のプライシングのシステムが導入されており、車両の走行距離と温室効果ガスの両方を削減することが示されている。

Fetch.ai社とDatarella社は、今回の実験により、ミュンヘンだけで自動車の使用量が10%削減されると仮定し、市内では年間3万4,000トンのCO2排出量が削減されるだろうと予測している。

街をクリーンにするために「車よりも公共交通機関を使ってほしい」とただ伝えても、結局便利さにはかなわない。車があるからこそ都心に通勤できている人もいるだろう。であれば、駐車場の適切な使い方をすることで報酬を与えたり、公共交通機関にお金が流れたりする仕組みを作る。今回は小さな規模での実験だが、スマートに都市の持続可能性に取り組む事例として、今後に期待したい。

【参照サイト】Fetch.ai

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