FAO(国際連合食糧農業機関)の報告書によると、世界では食料生産量の3分の1に当たる約13億トンの食料が毎年廃棄されているという。食品廃棄物のなかには、肉の骨や果物の皮などもともと食べられない部分もあるが、食べられなくてもそこから新たな価値を生み出すことはできる。
イタリアのスタートアップ企業「Krill Design」は、オレンジの皮からできたテーブルランプ「Ohmie The Orange Lamp」を開発した。このランプは、植物性のデンプンを原料とするバイオポリマーに、乾燥させて粉末状にした2~3個のオレンジの皮を混ぜて作られている。天然素材だけでできたランプで、庭の土に埋めれば数年かけて分解されていく。
ランプは、3Dプリンターで作っているのが大きな特徴だ。同社によると、3Dプリンターで作ることで製造時の廃棄物をなくし、製品の軽量化を図ることができるという。ランプの重さはわずか150グラム。軽ければ軽いほど輸送時のエネルギー消費が少なくなりCO2排出を削減できるので、輸送によるカーボンフットプリントの削減につながっている。また、3Dプリンターなら注文に応じて生産することが可能なため、必要以上に製品を作る心配がなく、エネルギーの節約になるという。
濃厚なオレンジ色と滑らかな曲線が美しいこのランプは、見た目だけでなく機能性も重視されて作られている。読書やPC作業の際に、手元だけを明るく照らせるよう角度が調整されており、明るさを調整する調光スイッチも付いている。
Krill DesignはクラウドファンディングサイトKickstarterで「『サステナブルなデザイン』と『通常のデザイン』を区別するべきではない。すべてのデザインは、デフォルトでサステナブルであるべきだ」
と述べている。だからこそ同社は、高品質で長持ちする製品にこだわっている。このランプは堆肥化できるからといって、脆くできているわけではないという。
また、ランプを配送する際には、リサイクル率が高く再利用も可能なダンボール製の箱に入れて届けるそうだ。箱はおしゃれな収納ボックスとして使えるようデザインされているため、同社は再び使うことを勧めている。すぐに新しいものを買わずに、「すでにあるもので何ができるか」を考えることも、サステナブルな行動の一つだ。
Krill Designはこのランプの他にも、コーヒーかすから作った花瓶や、オレンジの皮から作ったトレーなど、食品廃棄物からできた製品を数多く開発している。デザインの力で循環型イノベーションを起こす、同社の取り組みを応援したい。
【参照サイト】 Ohmie the orange lamp | Circular design | Milano (ohmie-krilldesign.net)
Edited by Erika Tomiyama