私たちの生活のさまざまな場面で使われている、プラスチック。広く普及した理由には、コストや軽さ、便利さがあるが、実はその気軽な利用により、大きな代償を払っていたことが近年、表面化している。
普段何気なく使い捨てているプラスチックの中には、リサイクルや廃棄処理がされずに、海洋や森林といった自然環境に半永久的に残り、自然を破壊しているものもある。人間も生態系の一部であり、これは他人事ではなく影響を受けている可能性があることを忘れてはならない。そして、プラスチック容器・包装を1キログラム製造するのに、温室効果ガスであるCO2を平均2.5キログラムも排出していことを経済産業省のデータは示している(※1)。
そんな中、フランス政府は2040年までに使い捨てプラスチックをなくすことを発表した。その一環として、2022年1月1日から2026年6月30日まで、スーパーで野菜や果物をつつんでいるプラスチック包装を段階的に禁止していく計画だ。使い捨てプラスチックを辞めるまでの猶予として、6カ月の期間が設けられている。
この法律により、まず2021年1月からは重量が1.5キログラム未満の青果物のプラスチック包装が、原則として禁止される。対象となるのは、たとえばジャガイモ、トマト、タマネギ、リンゴ、バナナ、オレンジなどだ。
2024年12月31日までには、サラダ、ほうれん草、アスパラガス、きのこ等は、移行期間が完了する。この新法の例外となるのは1.5キログラム以上のロットで販売される青果物や、ラズベリー、イチゴ、ブルーベリーといった、まとめ売りすると傷みやすいもの、そしてレンズ豆や大豆などだ。
フランス政府は現在、青果物の37%が包装されているとし、この取り組みにより毎年10億回分の包装を削減できるとしている。また、買い物客には、再利用可能な容器を持参して、店舗に行くことを推奨している。なお、フランスの隣国で同じく農業が盛んなスペインも同様の法律を成立させ、追随することを決めた。
ヨーロッパでは、路上の屋台で八百屋さんが量り売りしているのをよく見かける。その影響からか元々、大手スーパーマーケットでも一部の野菜や果物を量り売りしているところが多い。今後は、それをさらに徹底して、無駄をなくしていくということだろう。
環境対策に注力するEUとその盟主であるフランスは、行政主導で環境を第一に配慮した大胆な施策を打ち出し、プラスチック廃棄物の大幅な削減を実現する。
フランスでこのような前例が作られることにより、他の国や企業が行動を起こしやすくなるだろう。近年の便利な日本では当たり前だった「野菜や果物は、だいたい小分けのパッケージに入っているもの」という概念を問い直す良い機会かもしれない。
※1 容器包装リサイクルに係る情報の収集・整理
【参照サイト】Les emballages plastiques des fruits et légumes frais n’auront plus cours
Edited by Kimika