英国で広がる「マカロン作り」の職業訓練。失業中の若者を支える仕組みとは?

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イギリス中部にある人口約100万人の都市、バーミンガム。同市では、人口の40%近くを25歳未満が占めるが、彼らの失業率の高さが課題となっている(※1)

2021年7月時点で、バーミンガムの若者の約5人に1人が職に就いていない。イギリスにおける18~24歳層の失業率は13.5%で、国全体の平均を上回っている状況だ。

そんななか、職に就いていない18~35歳の若者にマカロン作りのトレーニングを提供することで、働く自信とスキルを身につけてもらおうとしているのが、同市の社会的企業Miss Macaroonだ。

同社は、「Macaroons That Make a Difference(変化を起こすマカロン)」という10週間のプログラムを提供。参加者はマカロンの作り方を学んだり、英語や数学の指導を受けたり、心理カウンセリングを受けたりしながら、働く準備を整えていく。

「なぜマカロンなのか」と疑問に思う人がいるかもしれない。Miss Macaroonの創業者兼CEOであるロージー・ギンデー氏は、ミシュランの星付きレストランでパティシエとして働いたことがあり、自身の食への情熱と社会貢献を両立できるアイデアを探したという。そして思いついたのが、調理の実務経験がない人でも作りやすく、芸術的な見た目で関心をひきつけやすいマカロンだった。

Image via Miss Macaroon

Image via Miss Macaroon

参加者は、最初の5週間はトレーニング用のキッチンで調理経験を積み、その後は業務用キッチンでプロのシェフと学ぶ。職場のリアルな雰囲気を体感できるのが、プログラムの特徴だ。

同社は特に、前科者、里親などの社会的養護を離れたケアリーバー、メンタルヘルスの問題を抱える人、学習障害のある人など、失業が長期化しやすい人を対象にプログラムを提供している。

プログラム開始の際の参加者の自己報告によると、65%がメンタルヘルスの問題を抱え、38%が自閉スペクトラム症を抱え、42%がBAME(黒人、アジア人、少数民族)という状況だ。

プログラムを終えた後には、参加者の86%がケータリングや食品衛生などの実践的なスキルを習得できたと回答し、100%がビジネスマナーやレジリエンスを身につけることができたと回答している。また、参加者の45%はその後働いたり、学校で学んだりしているそうだ。

同社はマカロンの売上金を使って、プログラムの費用を賄っている。イギリス全土でマカロンのデリバリーを行っており、グーグルなどの企業がイベント用に購入することもあるという。

ティータイムに華を添える、日本でも人気のお菓子マカロン。せっかく買うなら、Miss Macaroonのように、社会的に弱い立場にある人々を支援する企業から買ってみたい。

※1 Breaking down barriers: working towards Birmingham’s future supporting younger people into employment | Birmingham City Council
【参照サイト】Miss Macaroon: Buy Macarons Online For Delivery UK
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