「ウクライナから日本に避難してきた人たちのために、何かできることはないか」そう思ったことはないだろうか。
実際にその方法を調べようとしても、海外での支援の情報が多く表示されたり、国内での支援の方法が分かりにくかったりするのが現状だ。
2022年6月8日時点の情報によると、ウクライナ避難民の在留者数は1,222人。都道府県別の在留者数を見ると、東京都(215人)が最も多く、次いで福岡県(92人)、神奈川県(70人)となっている(※1)。
あなたの身近にいるかもしれないウクライナからの避難民は、どのような支援を必要としているのだろうか。
はじめに
ウクライナから日本に来た避難民の支援を検討しているなら、情報がまとまっている出入国在留管理庁のホームページをチェックしよう。
国内での支援については出入国在留管理庁が情報を集約し、ウクライナ及び避難民が流入している周辺国における支援については、駐日各国大使館や、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)や WFP(国連世界食糧計画)といった国際機関などが情報を公開している。
▶ ウクライナ避難民に関する情報/Українцям, які проживають в Японії. Інформація розміщена тут. | 出入国在留管理庁
▶ ウクライナからの避難民に対する支援の提供を検討されている方々へ|外務省
出入国在留管理庁のホームページには、ウクライナ語が併記された、避難民向けの情報が載ったページがある。これを見ると、避難民の人が具体的にどういう支援を必要としているのか、イメージしやすくなるだろう。また、東京都がまとめた支援の流れも参考になる。
▶ 日本に在留しているウクライナのみなさんへ/Українцям, які проживають в Японії. | 出入国在留管理庁
▶ ウクライナ情勢に係る緊急対策|ウクライナ情勢に係る緊急対策|都庁横断の取組|東京都政策企画局
出入国在留管理庁は、支援を検討している地方公共団体・企業・団体の支援内容をあらかじめ把握したいとのことで、メールによる情報提供をお願いしている。
▶ ウクライナから日本への避難民に対して支援の提供を検討されている地方公共団体及び企業・団体の皆様へ | 出入国在留管理庁
以下、すでに支援を始めている地方公共団体や企業・団体の取り組みを紹介しつつ、私たちにできることを考えていく。
1. 住む場所を提供する
日本に来たばかりの避難民が一時滞在できる場所が必要だ。
たとえば、千葉県君津市では木更津ワシントンホテルが、市内公営住宅入居前の避難民の一時滞在先として、部屋や食事などを無償で提供した。また、神奈川県横浜市でも、横浜桜木町ワシントンホテルが一時滞在先の提供に協力するという。
▶ ウクライナ避難民の方が安心して滞在できるように生活支援を行っています – 君津市公式ホームページ
▶ ウクライナ避難民支援メニュー「オール横浜支援パッケージ」
IDEAS FOR GOODでは、全国各地に拠点を持つRANDOR HOTEL(ランドーホテル)が、避難民に「住めるホテル」を提供するというプロジェクトを紹介した。
▶ ランドーホテル、日本国内のウクライナ避難民に「住めるホテル」を提供へ
2. 家具、食料、生活用品などを提供する
避難民が公営住宅などに入居したあと、食料やさまざまな生活物資が必要となる。たとえば、埼玉県戸田市では株式会社日本リサイクルソリューションが、家具や家電を無償で貸与している。
▶ 戸田市(とだし)はウクライナ避難民(ひなんみん)の支援(しえん)を行っています。(おこなっています) – 戸田市公式サイト
同市では、戸田ライオンズクラブという慈善団体が受け入れ住宅入居時一時金を支給することで、日本財団による生活支援金が支給されるまで、切れ目のない支援をすることが可能になったという。このように、現金による支援が助けになることもある。
▶ 埼玉県戸田市と戸田ライオンズクラブとのウクライナ避難民支援に関する覚書締結式を行います|埼玉県戸田市のプレスリリース
ヤフー株式会社が設立した「ウクライナ避難民支援ネットワーク」という団体は、避難民に物資支援をする活動を行っている。賛同企業である株式会社アダストリアが衣料品、オイシックス・ラ・大地株式会社が食品、オルビス株式会社が化粧品を支援するとのことで、取り組みに賛同する他の企業も募集している。
▶ Yahoo! JAPAN、ウクライナからの避難民に対する支援ネットワークを設立 – ニュース – ヤフー株式会社
3. 言語面で支援する
日本語がわからないなかで生活を送るのは、避難民にとって大きな負担だ。相手の言語による支援と日本語学習支援という、両面からの支援が必要になるだろう。
出入国在留管理庁は、ウクライナ語の通訳ができる人を募集している。地域によっては、ウクライナ語またはロシア語での通訳・翻訳ができる人を募集している場合もある。
▶ 【急募(きゅうぼ)】ウクライナ(うくらいな)から避難(ひなん)される方(かた)の通訳(つうやく)支援(しえん)にご協力(きょうりょく)いただける方(かた)の募集(ぼしゅう)について | 出入国在留管理庁
▶ ウクライナ語・ロシア語 語学サポーターを募集しています/茨城県
コニカミノルタ株式会社は名古屋市などの要望を受け、タブレット型の多言語通訳サービス「KOTOBAL」にウクライナ語を追加した。
▶ ウクライナ避難民受け入れを支援する自治体・行政向け多言語通訳サービス「KOTOBAL」 機械通訳にウクライナ語を追加 | コニカミノルタ
日本語学習支援の例としては、学校法人三幸学園が運営する日本語教育機関「SANKO日本語学校」に、避難民が入学した。同法人は日本語教育の無償提供などを行うべく、出入国在留管理庁に支援実施の申し出をしていたという。
▶ ウクライナからの避難民の方の日本語学校入学について【SANKO日本語学校】 | ニュースリリース | 学校法人 三幸学園
4. 就労を支援する
避難民の人が自立して安定した生活を送れるよう、就労を希望する人への支援を行うことが大切だ。
たとえば、ホテルなどの建物の維持管理業務を受託している大和ライフネクスト株式会社は、少なくとも10人ほどの避難民に住まいを無償提供し、その後の就業訓練を経て、同社の従業員として就労機会を提供する計画を発表した。
▶ ウクライナ避難民への支援として 運営施設の提供と就労機会の創出を決定|マンション管理会社の【大和ライフネクスト】
東京都は、避難民の採用を検討している企業などを対象とした「東京都ウクライナ避難民等就労相談窓口」を開設した。外国人材採用の専門家が、避難民の採用・活躍に向けて伴走支援するという。地元でこのような窓口が開設されていないか、探してみるといいだろう。
雇われて働く以外の道もある。滋賀県彦根市で暮らす在日ウクライナ人のヤボルスカ・カテリーナ氏と、その母である避難民のイリーナ氏らは、ウクライナスイーツのキッチンカーを彦根城前にオープンした。今後は、大阪や東京での出店も視野に入れている。
このようなクラウドファンディングプロジェクトを見かけたら、支援してみるのもいいだろう。
▶ 日本人への恩返し。ウクライナ避難民によるウクライナスイーツキッチンカー@彦根城前 – CAMPFIRE (キャンプファイヤー)
5. メンタル面をサポートする
ウクライナから遠く離れた日本で、母国語での交流や情報交換ができたら、避難民の人が安心しやすい。
神奈川県横浜市にあるウクライナ交流カフェ「ドゥルーズィ」には、在日のウクライナ人スタッフがおり、カフェで日本語を学ぶイベントを開くなど、避難民の孤立を防ぐ取り組みを進めている。企業からの寄付や、ボランティアの人からの善意の申し出も取り入れるという。
▶ ウクライナ避難民の皆様の交流拠点「ウクライナ交流カフェ ドゥルーズィ」を開設します 横浜市
6. 行政手続、就学、医療面などを支援する
他にも、在留資格の変更、医療ニーズの把握、国民健康保険への加入など、避難民の人たちに提供できる支援は色々ある。
2022年6月8日時点で、ウクライナ避難民入国者数のうち284人が18歳未満と若い人も多く、就学支援も重要になる(※1)。
日本行政書士会連合会は無料相談窓口において、避難民の在留手続などに関する支援を行っている。また、日本学生支援機構は、ウクライナの学生への支援を実施している大学の情報をまとめている。
▶ ウクライナ避難民の方々へ在留支援をいたします | 日本行政書士会連合会
▶ 日本の大学等によるウクライナの学生への支援策について|NEWS|日本留学情報サイト Study in Japan
7. 寄付をする
これまで、地方公共団体や企業などによる取り組みを多く紹介してきたため、「個人でできることはあまりなさそう」と感じている人がいるかもしれない。
ウクライナ語やロシア語が話せたり、親族が避難民で世帯として受け入れたりするケースは、かなり稀だろう。
個人で取り組みやすいのは、やはり寄付ではないだろうか。IDEAS FOR GOODが過去に取り上げたNPO法人のWELgeeは、避難民の就労伴走を支援してくれる継続寄付者を募集している。
▶ マンスリーサポーター200名キャンペーン|NPO法人WELgee
▶ “顔の見える”難民とともに。カラフルな日本の未来をつくるWELgee
県などが募金箱を設置したり、寄付金を受け付ける銀行口座を開設したり、ふるさと納税を活用したクラウドファンディングを実施したりしているケースもある。自分が暮らす地域でこのような取り組みが行われていないか、探してみるといいだろう。
▶ 京都府ウクライナ避難民支援義援金の受付について/京都府ホームページ
▶ ウクライナ待避者も安心して暮らせる多文化共生の佐賀に|ふるさと納税のガバメントクラウドファンディングは「ふるさとチョイス」
まとめ
いかがだっただろうか。どのようなかたちで支援をするにしても、行政機関や他の企業と連携したり、支援に関する情報収集をこまめに行ったりする姿勢が大切だ。
個人としての支援を考えている人も、普段からアンテナを張っておけば、ボランティア募集の呼びかけや、避難民の人が主体となって取り組むプロジェクトなどに、素早く反応することができるだろう。
言葉の壁というハードルはあるが、なるべく当事者である避難民の人や、その身近にいる人たちのちょっとした困りごとを聞いて、解決できるようにしていきたい。
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※1 ウクライナ避難民に関する情報/Українцям, які проживають в Японії. Інформація розміщена тут. | 出入国在留管理庁
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