マイクロプラスチックによる環境汚染への懸念が高まる昨今、さらに小さいナノプラスチックによる汚染も注目され始めていることをご存じだろうか。
ナノプラスチックとは、1千分の1ミリメートルより小さいプラスチックごみだ。2015年にフランスの研究グループが北大西洋で行った調査で初めて、ナノプラスチックが海で見つかった。
その後、北極と南極でもナノプラスチックが見つかり、汚染が想像以上に広がっているのではないかと懸念されている。
あまりに小さいため、存在を意識しにくいナノプラスチック。そんななか、信州大学の研究チームは2022年6月、ナノプラスチックが入った水にペクチンと鉄 (III)を加えると、ナノプラスチックが凝集沈殿を起こすことを明らかにした。試験管の底にナノプラスチックがたまり、その存在が分かりやすく可視化されている。
研究チームによると、2日間で、上澄み液のナノプラスチックを97.3%も除去することができたという。この結果は、ペクチンのようなバイオポリマーを使って水からナノプラスチックを分離できることを示している。
今後、海からナノプラスチックを除去する方法を開発できるかもしれない。
ところで、ペクチンとは何だろうか。ペクチンとは、レモンやりんごなどの果物に多く含まれる食物繊維の一種で、ジャムを作る際のとろみのもとになる。
信州大学がある長野県は、国内のりんごの約20%を生産する主要な産地だ(※1)。研究者らは、身近な存在であるりんごから着想を得て、ペクチンを試してみたという。
また、研究チームによると、海洋マイクロプラスチックはバイオポリマーと結合して海底に沈むことが知られている。「それなら、バイオポリマーを使ってナノプラスチックを除去することができるのではないか」と考えたそうだ。
ペクチンは、果物の皮にも多く含まれている。食用にできず廃棄される部分を使ってプラスチック問題を解決できたら、素敵ではないだろうか。
※1 知ってる?信州農産物/長野県
【参照サイト】Interaction between nanoplastics and pectin, a water-soluble polysaccharide, in the presence of Fe(III) ion – ScienceDirect
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