スタッフは全員吃音持ち。若者の挑戦を後押しする「注文に時間がかかるカフェ」

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吃音(きつおん、どもり)──話し言葉が滑らかに出ない発話障害のこと。

たとえば、「ぼ、ぼ、ぼくは」と音を繰り返す「連発(れんぱつ)」や、言葉が出ずに間が空いてしまう「難発(なんぱつ)」といった症状がある。言葉が発達する2~6歳の子どもによく見られ、成人の1~3%も吃音を持っているという。男性のほうが、女性より約4倍多いそうだ(※1)

吃音者は、周囲の無理解から「変な話し方」と偏見をぶつけられることがある。彼らが差別を受けることなく、「もっと話したい」という気持ちを持つには、どうすればいいだろうか。

「接客業に挑戦したい」と思っているが、吃音があるため一歩を踏み出しにくいと感じる若者の、挑戦の場になっている場がある。日本全国でポップアップを行う「注文に時間がかかるカフェ」だ。

このカフェのスタッフは、全員吃音者。訪れた人は、注文に時間がかかることを理解して、彼らが話し終わるまで待つことが求められる。遮ったり、憶測で代わりに話したり、「リラックスして」「ゆっくり話せばいいよ」などのアドバイスをしてはいけない(※)

※ 「スタッフは、緊張していて吃っているわけではないので」と公式サイトに説明されている。

注文に時間がかかるカフェは、大学や企業など、さまざまな場所で開催される。吃音を持つ若者が、やりたいことを諦めずに生きる勇気を得たり、スタッフ同士の交流を通じて「悩んでいるのは自分だけではない」という安心感を得たりすることができる場だ。

カフェは、吃音を知らない人に吃音当事者のことを知ってもらったり、「吃音を持つ人とどう接したら良いか分からない」と感じているお客さんに、接し方のヒントを伝えたりする場でもある。

一口に「吃音当事者」といっても、他者にどう接してほしいと思うかは、当事者によってさまざまだ。そのため、同店のスタッフは、自分のマスクに「こう接してほしい」という要望を明記。たとえば、「話すために少し時間をください」「笑顔でお話してください」といった要望を書いている。

マスクの工夫は、カフェの発起人がオーストラリアで、吃音当事者であることをオープンにしたとき、周囲の人に「あなたはどうしてほしいの?」とよく尋ねられたことから着想を得たそうだ。

吃音を持つ人を十把一絡げに扱うのではなく、一人一人の意思を尊重する、注文に時間がかかるカフェ。あなたも、いつもと少し違う時間が流れる場に、足を踏み入れてみてはいかがだろうか。

※1 Info on stammering – NHS Stammering Network
【参照サイト】注文に時間がかかるカフェ
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