“広告が嬉しいSNS”は存在する?ロンドンの寄付型ソーシャルアプリ「WeAre8」

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いまや私たちの生活に不可欠なものとなっているSNS。フェイスブックやツイッター、インスタグラム、TikTokなどを合わせて、世界のユーザー数は46億人に達している。

SNSは正しく使えば便利で有用なツールであるが、フェイクニュースが拡散されたり他人と自分を比べて落ち込んだりするなど、さまざまな問題が顕在化している。SNSに掲載される広告もその一つだ。多くの人が、広告を邪魔なものに感じたり、あまり見たくないと思ったりしたことがあるのではないだろうか。

こうしたなか、これまでのFacebook、Twitterなど他のSNSとはまったく異なるロンドン生まれの新しいSNSプラットフォーム「WeAre8(ウィーアーエイト)」がいま注目されている。

WeAre8は、オーストラリア人起業家であるSue Fennessyが「より良い世界のために人々を一つにする」をパーパスとして立ち上げたSNSプラットフォームだ。ユーザーは広告を見る・見ないを選ぶことができ、広告を見るユーザーには報酬として広告収入の一部が支払われる。さらに、ユーザーはその報酬をチャリティ団体に寄付することも可能だ。

SNSで大きな問題となっている匿名ユーザーによる誹謗中傷や個人攻撃に対処するため、ユーザーには実名登録を義務付けている。AIを活用したモニタリングも導入し、すべてのユーザーが安心して利用できる環境を確保している。また、広告を見ることを選んだユーザーは、フル画面の動画広告を最後まで見ることが求められている。そのため、WeAre8における広告のクリック率は約30%と極めて高いのが特徴だ。

WeAre8の創業者Sue FennessyはオーストラリアのウェブメディアAdNewsの記事のなかで、既存のSNSのユーザー、広告主それぞれにとっての問題について次のように述べている。

SNSユーザーが何を読み、何を見るかはアルゴリズムに支配されており、そのことが世の中の分断を招いている。また、SNS最大手のFacebookの広告収入は1,000億円に上るが、「いいね!」「コメント」「保存」などのアクションの比率を示すエンゲージメント率はわずか0.4%にとどまっている。

上述したWeAre8のサービスは、まさにこうしたSNSの問題解決を目指すものだ。

ネット上の個人情報保護への懸念が高まるなか、2021年4月にはAppleがiOSアップデートをおこない、ユーザーが許可をしない限りアプリ会社はユーザーに関するデータにアクセスできないよう設定された。このことによりFacebookやInstagramを運営するMetaの株価が大きく下落したことは記憶に新しい。

WeAre8ではSNSのユーザーを「8Citizen」、広告主を「Brand Partner」、さらにSNSを通して自身の作品や活動を紹介するアーティストを「8Creator」、寄付先の社会貢献活動を行う団体を「Impact Partner」と呼んでいる。そしてWeAre8上でこれらの登場人物がつくる世界が「8Community」だ。

単なるビジネスを超えてユーザー、広告主、アーティスト、社会貢献団体を繋ぐコミュニティづくりを目指すWeAre8は、まさに新しいSNSのビジネスモデルだ。本稿の執筆時点でサービス提供地域はイギリスとオーストラリアに限られているが、日本上陸が待ち遠しい。

【参照サイト】WeAre8
【参照サイト】Apple Is Changing How Digital Ads Work. Are Advertisers Prepared?
【参照サイト】DIGITAL 2022: Global Overview Report
【参照サイト】Sue Fennessy’s vision for change at WeAre8

Edited by Natsuki Nakahara

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