パートナーと“されたら嫌なこと”を共有。性暴力を受けた人のための対話キット「Epione」

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ある人にとっては非常に身近であり、またある人にとっては遠いテーマでもある性暴力。国連女性機関(UN Women)によると、世界では約3人に1人もの女性が、性暴力の被害を受けた経験があるとされており(※1)、日本でもたびたびセクハラや痴漢などが話題に上がる。

香港のデザインストラテジストであるダイアナ・パン氏は、性暴力のトラウマから回復する道のりは、簡単ではないと考える。たとえ今のパートナーに大切にされていても、相手と親密に関わったり、身体的な接触を持ったりすることに困難を感じる場合があるのだ。過去の事情を知るパートナーは、その様子を見て無力感や孤独感を覚えることもある。

そこで彼女が作ったのは、カップルが心の距離を縮めながらトラウマから回復していけるツールキット「Epione」だ。中身は白くて丸いオブジェ、カード、積み木などである。

白いオブジェは、カップルが呼吸を合わせながら触ることで一体感を得られる、脈拍センサー付きのデバイスだ。カップルの心拍がシンクロしたら、デバイス内の光が違う色に変わる。「今この瞬間」に意識を集中させることを促しているという。

Image via Diana Pang

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心拍をシンクロさせるためのアドバイスとして、「手を握る」「アイコンタクトを保つ」「会話する」「音楽を聴く」が挙げられている。静かな場所で、さまざまな感覚を働かせながら対話ができるのだ。

カードには、「どうすれば私たちは、より上手くコミュニケーションが取れるだろう」といった質問や、「パートナーに届ける、とっておきのサプライズを考えよう」といった提案が書かれており、カップルの会話のきっかけを作る。

Image via Diana Pang

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二人はそれぞれ、カードとセットになった色分けされた碁石のようなものを使い、「これはしたい」「これは、あまりしたくない」といった意思表示ができる。踏み込まれたくない自分の領域を相手に伝えることが難しい、性暴力の被害者に配慮した仕組みだ。

積み木は、二人が同じ望みを共有することもあれば、越えられない一線もあると受け入れるための、視覚的な表現ツールだ。こういった遊具を使って遊び心をくすぐることも、リラックスするために大切だという。

性暴力を受けたことの無い人も、強い不安感に襲われたときなどに使ってみたくなるツールキットではないだろうか。他者の力を借りながら、心の傷を癒す道のりを進んでいきたい。

※1 Facts and figures: Ending violence against women | What we do | UN Women – Headquarters
【参照サイト】Epione – Supporting Sexual Assault Survivors — Diana Pang
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