10月10日はメンタルヘルスデー。あなたの心に寄り添う8つの言葉を紹介

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仕事に学業、家事に育児……絶えず何かに追われながら日々を過ごす私たち。なかには、目の前のタスクをこなすので精いっぱいだったり、休むことを忘れたりしてしまっている人もいるかもしれない。忙しい日常の中では、自らを労わる時間を持つことすら容易ではないだろう。だからこそ、ストレスに潰されてしまわないために、意識して心を癒したり、バランスを取り戻したりする時間が必要だ。

そこで今回ご紹介したいのが、心をすこやかに保つ助けとなりうる世界の文化である。様々なメディアで紹介され話題を集めたデンマークの「Hygge(ヒュッゲ)」を始め、心地よさやリラックスに焦点を当てた他国の文化や習慣を知ることは、私たちがメンタルヘルスを保つための新たな視点を与えてくれるはずだ。ここでは、北欧を中心に、8つの文化を見ていこう。

オランダ

あえて何もしない「ニクセン(Niksen)」

ニクセンとは、オランダ語で「あえて何もしないこと」「目的を持たずに時間を過ごすこと」。自分を追い込んでしまう状態から離れ、「する(doing)」のではなく、ありのままで「いる(being)」状態を大切にするのが特徴だ。

例えば、椅子に座りながらぼうっとする、窓の外をのんびり眺める、自然と無心になってできる編み物のような反復動作をする、文字通り何もしないなどがニクセンの実践例として挙げられる。

似たような概念・マインドフルネスでは、雑念を取り払い、今この瞬間に意識を向け、今自分が存在することに集中するアプローチをとる。一方でニクセンは、雑念が生じること、時間がただ過ぎることを許し、ありのままでいることを大切にしているのが違いだ。

ニクセン(Niksen)とは・意味

セルビア

小さなことから幸せを得る「Merak(メラク)」

「Merak(メラク)」は、セルビア語で人生の単純なことから幸せを得るという意味。

例えば、コーヒーの香りを楽しんだり、料理やデザートをゆっくりと味わったり、散歩中に見かける花の美しさを感じたり、窓を開けて鳥のさえずりや風の音を聞いたり……そういった小さなことに丁寧に目を向けてみると、喜びが生まれる。

私たちは、忙しなく生きるなかで、日々の些細なことに目を向ける余裕をなくしてしまうことがある。そんなときは意識して生活のなかの小さなことに幸せを見出してみるのも大切なことではないだろうか。

Merak

デンマーク

ほっこり、まったり過ごす「ヒュッゲ(hygge)」

ヒュッゲ(Hygge)とは、デンマーク語で「居心地がいい空間」や「楽しい時間」のこと。多くのメディアで紹介されているため、ご存じの方も多いのではないだろうか。

ロウソクや間接照明で照らされた自宅で食卓を囲みながら、家族や友人など大切な人と一緒に過ごす時間、コーヒーや紅茶を片手に暖炉のまわりでゆったり語り合うひととき──フランクで形式ばっておらず、リラックスした時間を過ごすのがヒュッゲの醍醐味だ。

ヒュッゲ(Hygge)とは・意味

何事も気にしない「Pyt(ピュット)」

「Pyt(ピュット)」は、デンマークの言葉で「心配しない」「気にしない」というような意味で、ネガティブなことが起こったときや、ストレスに晒されたときに気持ちを切り替えるために口にする言葉だ。

例えば、お皿を割ってしまったとき、渋滞に巻き込まれてしまったとき、「Pyt」と呟く。そうすることで、状況を受け入れ、気持ちをリセットすることにつなげるのである。

怒ったり嘆いたりと過剰反応をするのではなく、ネガティブな出来事やそれに対する感情を手放し、次に進む──ストレスに対処するための健全な思考を養う概念「Pyt」。次に何か嫌なことがあったとき、「Pyt」と口にしてみるのも良いかもしれない。

Pyt

スウェーデン

甘いものを食べながらコーヒーを飲む「Fika(フィーカ)」

「fika(フィーカ)」は、甘いものを食べながらコーヒーを飲むという、スウェーデン人の習慣のこと。スウェーデン語の「kaffi(コーヒー)」のkaとffiをひっくり返して、この言葉が生まれたとされる。フィーカは、休むときにしっかり休んで気分をリフレッシュするという目的の他に、会話を楽しんで周囲と円滑な関係を築くきっかけにするという意味で重視されている。スウェーデン人はほぼ全員、1日にフィーカの時間を数回とると言われるほど、同国に深く根付いた文化である。

フィーカは家族、仕事仲間、友人など誰とでも行い、場所はカフェ、職場、公園など様々だ。フィーカをいつやるか、1日に何回やるかは特に決まっていないが、企業では毎日10時頃と15時頃にフィーカの時間を設けることが多い。1回のフィーカの時間は15分~30分ほどで、ちょっとした息抜きをするために行われている。

フィーカとは・意味

居心地が良い時間を過ごす、「Mys(ミース)」

ミースとは、スウェーデン語で「居心地の良いこと」「楽しいこと」。

北欧地域に位置するスウェーデンは、冬の日照時間が1日6時間と限られている。しかし、長い冬の間も、日常の何気ない一瞬一瞬を充足感に包まれ幸福に満ちたものとするため、空間づくりや時間の過ごし方に様々な工夫を凝らす。先ほど紹介したデンマークの「ヒュッゲ」に似たコンセプトだ。

テレビを見るときに、電気の代わりにキャンドルを付ける、雨の日は窓の近くに座り雨音に耳を傾ける、寒い日は家でウールの靴下を履き、温まるなどがミースの実践例である。

ミース(Mys)とは・意味

週の半ばをリラックスして過ごす習慣「lillördag(小さな土曜日)」

「lillördag(小さな土曜日)」は水曜日の夜に行われる慣習で、“土曜日のようにリラックスして”疲れを癒すことを目的とした時間のこと。仕事から意識を切り離し、ちょっと贅沢な食事を楽しんだり、体を鍛えたり、映画やドラマを見たりと、それぞれが週の真ん中で思い思いの時間を過ごす。

リラックスしたり、楽しんだりする時間を設けることで、1週間の半ばで区切りをつけるこちらの習慣。仕事とプライベートの境目がわからなくなってしまう人は、積極的に取り入れてみても良いかもしれない。

コロナ禍のウェルビーイングな働き方。スウェーデンの習慣「小さな土曜日」

何事もほどほどに。頑張りすぎずに「ちょうど良い」を探す「Lagom(ラーゴム)」

「Lagom(ラーゴム)」は、少なすぎず、多すぎず、ちょうど良いことを指す言葉。ヴァイキングたちの言葉「Laget om(ラーゲット・オム)=仲間と分け合う」から来ていると言われる。輪になって蜂蜜酒を回し飲みするときに、全員が同じ量を飲むのではなく、少なくていい人は少なく、多めに飲みたい人は多めに、自分に合った量を飲む──というように、自分にとってちょうど良いバランスを探すのがラーゴムだ。

生活に自然素材のものを取り入れたり、照明の色にこだわったりして、自分が心地よくいられる空間を模索する。あるいは、仕事中に適度に休憩をとったり、一人でいられる時間をつくったり、就業時間になったらきちんと退勤したりして、何事もほどほどにする。そのようにして、自分に合ったペースを見つけることができれば、より心地よく生きられるかもしれない。

Lagom

まとめ

仕事や学業、家事や育児での悩み、人間関係のトラブルや将来への不安……いろいろなものを抱えながら毎日を懸命に生きる私たち。日々のタスクに追われるなかで、立ち止まることすら忘れ、休みなく走り続けている人もいるかもしれない。

「たまには休息も大切だ」とはよく言われるが、生産性や効率が重視されがちな世の中では、そもそもペースダウンすることが良くないように思えることもある。だからこそ、まずは心地よさを感じたり、きちんと休んだりすることを、自分に許可してあげられることが大切なのではないだろうか。

自分の心と体をすこやかに保つために、心地よい環境で自分らしく生きるために──本記事で紹介したなかで、少しでも取り入れてみたいと思う習慣があったら、ぜひトライしてみてほしい。

【参照サイト】Lillördag: Sweden’s workers de-stress with ‘Little Saturday’
【参照サイト】「私にとって、ちょうどいい」が一番。スウェーデンの幸せ哲学“LAGOM(ラーゴム)”な暮らしの実践が1冊に!
【参照サイト】Explore rural Serbia(BBC)
【参照サイト】Forget hygge; pyt is the new Scandinavian term for a happier life(CNN)

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