神社×SDGs!? 1000年続く神社から学ぶ、持続型ビジネスのエッセンス

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平成から令和になった5月、日本の歴史に思いを馳せ、神社に足を運んだ人もいるのではないだろうか。千年を超える時間の中で、人々が心の拠り所にして集ってきた場所、神社。いま、この神社が大切にしてきた神道の考え方がSDGs達成の大きなヒントになるのではないかと国連に注目されている。

サステナブル・ビジネス・ハブ

サステナブル・ビジネス・ハブメンバー

そこで、神社の持つポテンシャルを最大限に引き出すことを掲げるのが「一般社団法人サステナブル・ビジネス・ハブ」(以下サステナブル・ビジネス・ハブ)である。今回IDEAS FOR GOOD編集部はサステナブル・ビジネス・ハブの設立記念セミナーとして行われたセッション「神社・地場産業から学ぶ持続型ビジネスの可能性と課題」に参加し、神道の下で暮らしてきた人々の生活を振り返ることで、神道がサステナビリティの分野で果たせる役割を探ってきた。

<セッション登壇者>

種田 成昭(たねだ なりあき)

種田成昭さん在学中にボストンでの留学中に「アイデンティティを知ること」の大切さを知り長岡禅塾にて修行。同時に上賀茂神社で「葵プロジェクト」の専従職員として地域活性化計画や大手企業様との連携業務などを経験。株式会社Celmに入社後は、大手インフラ企業を中心に人材開発コンサルタンティング業務を提供。その後人事コンサルティング業務を展開する株式会社Flucleを創業し、大阪市のアクセラレーションプログラム「Blooming!2.0」軍企業に選定を受ける。現在はFlucle代表の座を共同代表に譲り、「種田」を設立。同時に地域コミュニティの中心として寺社の意義をより強化していくために一般社団法人「日本文化のすすめ」を設立。日本文化・寺社のすばらしさを世界に伝えることを目的として活動中。地域活性および地域創生事業(万博・博覧会など)を展開する株式会社Landaのプロデューサーとしても活動中。

加藤 遼(かとう りょう)

加藤遼さん パソナ入社後、大手から中小・ベンチャーまで幅広い業界・業種・規模の企業の人財採用・育成・活用支援に携わった後、行政・企業・NPOなどと連携して若者雇用、東北復興、海外展開、地方創生、観光立国、シェアリングエコノミーなどをテーマにした事業企画・開発・立上に取り組む。また、地域活性化ベンチャーファンドの事務局として、起業家の発掘・育成、事業のインキュベーションに取り組み、出資先である地方創生やVISIT東北の事業開発・戦略担当役員も兼務。その他に、政府・自治体の政策委員や講演活動、NPOのマーケティング支援などにも参加している。

国連による「神道」への気づき

現在の日本の水準で天然資源の使用と二酸化炭素の排出が続くと、2030年までに地球が2つ分必要だということは、10年前から言われている。規模拡大型成長ビジネスが犠牲にしてきた地球資源はあまりに尊かった。2016年、国連がSDGs(持続可能な開発目標)を提唱したことで、地球を守ろう、経済成長を重視するのではなく他の企業と共創しながら社会課題の解決を目指そう、という概念が生活の中に少しずつ根付いてきている。

しかしこのSDGsとは私たちにとって新しい概念なのだろうか。2018年8月に石清水八幡宮の宮司によるプレゼンで「神道」が国連の議事録に載ったことはどのくらい知られているだろうか。そこで話題になったことは「神道は持続可能な発展を遂げるうえで大事なエッセンスを持つ」というものだった。

”the wedding cake"

credit: Azote Images for Stockholm Resilience Centre, Stockholm University

この図を見たことがあるだろうか。この図は「ウェディングケーキ」と題され、SDGsの各目標の新しい視点についてストックホルム大学で発表された。これは、まずは環境、その上に社会があり、さらに人間社会を発展させ続けるための経済がある、という各目標の位置づけを表している。つまり、自然が成り立たない限り、人間社会の経済活動を継続させることはできないということだ。

ここで思い出してほしいのは、神道の考え方だ。神道が祀るのは八百万(やおよろず)の神であり、太陽・月・山・川・石・台所・トイレにさえも宿っているとされる。自然を神聖なものとして敬い、大切にしてきた神道は、まさにSDGsに求められる考え方なのだ。

神社が社会に果たしてきた役割

では、神道の考え方が強く根付いていた時代の人々の生活はどうだったのだろう。実は、神道の発信場所となっていた神社を中心として人がサステナブルに経済活動を営むためのエッセンスが散りばめられていた。下記に、今回のセミナーで言及された神社と人間の経済活動についてまとめる。

産業を生み出し、守る機能としての神社

神社の内部を想像してみてほしい。絵画が描かれた襖(ふすま)や屏風、和ろうそくといった数多くの伝統工芸であふれている。今ある伝統産業の70-80%は神社で生まれたという。神社で必要なものが今に至るまで伝統工芸として残っている点では、産業を生み出し、守る機能がある。

ビジネスインキュベーションとしての神社

現代も地域にぽつぽつと残っている小さな神社。それらはもともと地域コミュニティの中心地だった。神職の方が勉強し、本が集まる場所であったため学校としての役割を果たし、その他にも幼稚園や役所といった機能を持っていた。

こうして人が集う場として、何か困ったことがあれば相談に乗ってもらえるような場だったのだ。人が寄り合う中で能動的にそれぞれの強みや想いを組み合わせ、ビジネスの発祥となっていたのは自然な流れだ。

コミュニティ・オーガナイジングの中心としての神社

神社を中心にコミュニティが生まれ、連帯力を持つようになる。そこで派生したのがお祭りだ。「神人和楽」という言葉がある。神と人とが一緒に享楽する、という意味で、神の存在がいかに近しいものだったかを表している。

お祭りやビジネスが生まれる神社という場所が育んだコミュニティは「ティール組織」に通ずる。ティール組織とは、メンバー全員が多様性を重んじながら意思決定し、目的を達成するような生命体としての組織のことだ。当時は神社を中心に市民が車座となってムーブメントを起こしていた。こういった市民の力で社会を変えようとする動きは現代で「コミュニティ・オーガナイジング」という言葉で表され、2009年にバラク・オバマ氏がアメリカの大統領になったのは、現地のコミュニティ・オーガナイジングによるものだと言われる。

Image via ShutterStock

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このように、神社は産業を作り、守るという機能だけでなく、人の経済活動を支え、結果として能動的なコミュニティ形成を啓発していたのだ。まさに自然の上に人を作り、経済活動を加速させるというSDGsウェディングケーキを既に形作っていたのである。

これからの神社が担う役割

さて、 上記のような機能を持っていた神社から、現代社会を生きる私たちは何を学び、具体的にどう活かしていけるのだろうか。「その答えはこれから作っていく必要がある」とするのがサステナブル・ビジネス・ハブの見解だ。

ビジネスの世界で求められるサステナビリティを考える上で、神道の持つポテンシャルが活かせそうだ、ということは見えているが、現代の神道の世界はあまりにも社会と離れた存在であるという。ビジネスマンが神道から学ぶのと同時に、神職に関わる人もビジネスを学び、相互に関わる必要がある。元来、神社は人の経済活動に寄り添う場であったため、原点にかえる形になる。

「家族が健康でありますように」「転職がうまくいきますように」お正月に神社で願うことを「なぜそう思うのか」を突き詰めると「自分にとって家族が大事だから」「もっとこんな自分でありたいから」といった人生のパーパス(目的)が見えてくる。

セミナーの様子

セミナーの様子

いまや、どんな想いに共感してサービスや商品を買うのか、何のために働いているのかといった、顧客と社員それぞれがパーパスを持ち、自己実現欲求を満たされることが求められる「マーケティング4.0」の時代。このセッションは、人の拠り所として機能してきた神社はマーケティング4.0を牽引していくポテンシャルがあり、企業研修や人事コンサルのエッセンスが神社にあるはずだ、という言葉とともに締めくくられた。

編集後記

大きな神社は注目を浴びて観光地化しているが、神社の本質は1年に1度お参りして満足する場ではなく、コミュニティの要であったのだと知った今、地域の神社を顧みるとお正月時期以外の神社はどこか縮こまって見える。

温故知新として、古いものを温めつつも随時新しいものを取り入れてきた日本。昔からあるものを古いものとして分類していたことで、実は古いものを未来に生かすことができるという考えが欠けていたのかもしれない。それを思い起こさせたのが今回のセミナーだったように思う。

今後サステナブル・ビジネス・ハブは、神社を巻き込んだビジネスマン向けのイベントを開催するという。神社をうまく活用していくことで、これからの神社は昔の遺物ではなく、また人と近しい存在になっていく、そんな時代の端緒を目撃できるかもしれない。

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