そのほくろ、皮膚がんじゃない?いびつな形のクッキーが教えてくれること

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赤道に近く、年間を通じて暑い日が続く中南米の国・ブラジル。同国といえば、照り付けるような陽ざしが降り注ぐビーチや、まばゆいほどの太陽を背にダンサーたちが舞うカーニバルの光景を思い浮かべる人もいるかもしれない。

そんな世界でも特に日射量が多いブラジルでは、皮膚がんが一般的な病気として知られる。そのなかでも多くを占めるのが黒色腫(メラノーマ)と呼ばれる種類の皮膚がんだ。黒色腫は、一見ほくろのように見えるのが特徴で、詳しい原因は分かっていないものの、紫外線や外的刺激などにより誘発されると考えられている。

黒色腫は、早期治療ができれば、患者の生存率を99%にまで高めることができるという(※)。つまり、できる限り早い段階で肌の異常に気づくことこそが重要なのだ。

「人々が肌の異常を自分自身で早期発見する手助けができないか?」そんな考えから動きだしたのが、ブラジルにある皮膚科クリニック・Horaiosと、広告会社・ワンダーマントンプソンである。彼らが皮膚がんの啓発のために使ったのは、なんとお菓子の「クッキー」だ。

Image via Wunderman Thompson

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彼らは黒色腫の形がクッキーによく似ている点に着目。そこで、健康なほくろと黒色腫を模したクッキーをつくることにしたのだ。

健康的なほくろを模したクッキーは綺麗な円型であるのに対し、黒色腫を模したクッキーは、境界部が不規則だったり、左右非対称だったり、色が混ざっていたりと、少々変わった見た目になっている。それぞれを箱の中に並べることで、サイズ・色・形・質感の違いを確認できるようにしたのだ。

Image via Wunderman Thompson

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「DiagnostiCookies」(diagnostic=「診断の」、cookies =「クッキー」)と名付けられたこちらのクッキー。その箱には、黒色腫を見分けるためのポイントや、ほくろの特徴が変わった際に医師の診察を勧めるよう記されたガイドが同封されている。クッキーを見て、触って、ガイドを読んで、食べる。こうして楽しみながら、重要な知識を学べるようになっているのだ。

ソーシャルメディア上に投稿されたこのユニークなアイデアは、24時間以内に6,000万回のビューを獲得。皮膚科クリニック・HoraiosのWebサイトの閲覧数も3倍以上に上昇した。また、ブラジルのテレビ司会者や歌手を含む、10数名の有名人やCNN記者もオンラインで支持を表明している。

普段から身近に親しまれる食品を、皮膚がんの正しい情報提供と問題意識の喚起に繋げた「DiagnostiCookies」。今後ブラジルで、黒色腫に関する正しい知識がより一般化し、黒色腫の早期診断と生存率の上昇が実現することが期待される。

War on Melanoma(Oregon Health&Science University)

【参照サイト】DiagnostiCookies
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Edited by Yuka Kihara

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