コロンビアの首都で50年続く「車両禁止の日曜日」。道路を再び市民のものに

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車道を自由に歩き回るという経験は、どこか非日常的だ。日本でも馴染みがある、歩行者天国。東京では新宿や銀座などで開催されており、いつもは歩いてはいけない場所に立ち入ることに、少し心が踊る感覚を得たことがある人は多いかもしれない。

では、なぜ普段私たちは道の大半を「歩いてはいけない場所」と認識するのだろうか。たしかに道の真ん中は基本的に車道であり、そこを歩いていては危ない。しかし、そもそもなぜ道のメインは車のための通路であるのか。そもそも歩行者や自転車を優先した設計であるべきではないだろうか。

そんな疑問に50年も前から向き合い、「住民のため」の道路封鎖を実践し続けてきた、ある街の取り組みがある。コロンビアの首都・ボゴタで行われる、Ciclovía(Bicycle Way:自転車の道)だ。毎週日曜、午前7時から午後2時まで市内の主要な道路が封鎖され、合計約127.7キロメートルに及ぶ道が自転車やスケート、歩行者向けに開放される。

多くの人は自転車や街歩きを楽しみ、他にも、エアロビクスやズンバの野外教室を開催したり、ジュースを売ったりと、市民は思い思いの休日を過ごすようだ。人口約1,057万人(※)の街で平均150万人が毎週街中に繰り出すと言われており、多くの市民がこの機会を活用していることが分かる。

この取り組みは1974年にアクティビストが主催した、車による道路空間の占拠に対抗する1日限りの企画をきっかけに生まれた。その後、地元政府が市民に運動の機会を提供すること、そして空気の質を改善することを目的に同企画を発展させ、毎週開催される催しとなり、今日まで長らく市民に支持されてきたのだ。

Cicloviaのキャプチャ写真

封鎖される道路の一覧|出典:Ciclovía Map

市内に住む7歳のロハス君は「車やバイクが多くてスペースがないので、いつも本当に迷惑です。すごくうるさいです。でも日曜日は本当に楽しい。家族と一緒に街の新しい場所を見ることができるし、友達はみんな外出しているのでばったり会います。大きな公園に立ち寄ったりもします」と、The Guardianの取材に答えている。

こうして道路を市民に開放することの利益は、およそ3つ。1つ目は健康面。日本の事例と異なり自転車の利用を前面に出していることから、多くの人が日曜日をサイクリングの機会として利用している。2つ目は環境面。週に一度とはいえ、多くの人が自転車に乗り換えることで着実に二酸化炭素の排出量は減っているはずだ。3つ目は社会面。車と自転車での移動を比較すると、偶然友人と出会う確率は後者の方が高く、気軽にコミュニケーションを取る機会も増えるだろう。

このボゴタという街は、ケアリング・シティとしても知られている。ケア労働に携わる人々を支えるサービスを身近に受けられる「ケア・ブロック」を設置するなど、医療・介護・保育などに従事する人々の声を反映したのだ。

家事や介護に追われる女性を支援するまちづくり。南米・コロンビアの「ケアリング・シティ」とは?

ボゴタにおける取り組みは、その街で生きる「人」の目線に立っている。街の存続において経済面も重要である一方、こうして明日の暮らしがより良くなる方法は、経済を介さずとも見つかるのだ。道路にバリケードを置くという一つの変化は、「歩いてはいけない場所」を市民の手に戻す英断の一つであっただろう。

概況・基本統計 コロンビア|ジェトロ

【参照サイト】Ciclovía bogotana | IDRD
【参照サイト】‘The tranquility frees you’: Bogotá, the city that shuts out cars every week | Environment | The Guardian
【参照サイト】Bogotá, Colombia’s Ciclovía bans cars every Sunday, and people love it|National Geographic
【参照サイト】BOGOTÁ’S RECREATIONAL BIKEWAY(CICLOVÍA BOGOTÁ)
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