【2024年8月】犬のおしっこから植物を守る「岩」?グッドニュース5選

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社会をもっとよくする世界のアイデアマガジン、IDEAS FOR GOODの編集部が選ぶ、今月の「ちょっと心が明るくなる世界のグッドニュース」。前回の記事では、イギリス下院がこれまでで最も多様性ある議会になったことや、デンマークの飲食店で迷惑客へのイエローカードが導入されたことなどを紹介した。

日々飛び交う悲しいニュースや、不安になる情報、ネガティブな感情ばかりを生む議論に疲れたあなたに。世界では同じくらい良いこともたくさん起こっているという事実に少しのあいだ心を癒し、また明日から動き出そうと思える活力になれば幸いだ。

愛に溢れた世界のグッドニュース5選

01. ヒマラヤ山脈で、ごみ回収ドローンを導入

世界の屋根と呼ばれるヒマラヤ山脈。エベレストをはじめ厳しくも雄大な自然は、登山家たちの憧れであり続けている。そんな地で、長らく課題となっているのが観光に伴うごみの問題だ。2014年からはエベレストの登山客に8キロのごみを持ち帰ることが義務付けられ、近年はごみを活用したお土産のコレクションを作成するなど、多様な対策を試みてきた。

そこに、テクノロジーを活用した新たな対策が加わった。2024年秋から、エベレストの南部に位置するアマ・ダブラム山において、ごみ回収を目的とした重量運搬ドローンを稼働させる予定なのだ。ドローンはまず、ロープやハシゴを載せて標高5,943メートルの中継キャンプ地に向かい、荷物を降ろし、ごみを受け取って標高5,364メートルのベースキャンプに戻ってくるという。試運転では1回で18キロ、1時間で234キロのごみを運搬できたそうだ。

これまで、麓から物資を運び、ごみを持ち帰ってくるのはシェルパの役割であった。シェルパとは、ネパールのヒマラヤ山脈に住む民族であり、登山者のガイドやポーターとして長年活躍してきた人々のことだ。しかし時には氷結した滝を渡らなくてはならないなど、重い荷物を持っての移動は危険の伴う作業であるという。これをドローンで代替することができれば、より安全なごみ回収を実現させることができるだろう。

【参照サイト】Buddhist Nations Team Up to Use Heavy Lifting Drones to Clear Everest Slopes of Trash
【参照サイト】It’s official: Chinese drones will fly trash out of Everest slopes

02. 犬の尿から植物を守る「おしっこ岩」

「犬のフンや尿をさせないでください」という看板を見かけたことがある人は多いだろう。私有地を管理するためにこの看板を立てている人もいるが、原生種の植物を守るために立てている人もいるという。犬の尿に含まれる高濃度の窒素が、植物にとって有害となってしまうからだ(※1)

これを、看板ではなく「岩」が解決してくれることが話題になっている。シカゴ・レイヴンズウッド地区のNGOで代表を務めるAndrew Smerczak-Zorza氏は、「大きな岩をガーデンの角に置くことで、一頭の犬がそこに排尿すると次に通りかかる犬もその岩に排尿しようとする習性に気付いた。今のところ犬がガーデンに排尿するのを9割ほど阻止できている」と、同組織のSNSで語っている。これは「おしっこ岩」と名付けられ、同動画は2024年8月現在5.2万いいねを記録するなど注目を集めている。

ガーデンに柵を設置したり、看板を立てたりすることも対策の一つではあるが、生活範囲や街の景観を変えてしまうことにつながる。植物を守りながら、犬の排尿を禁止するのではなく適切な場所を作っておくことは、地域での共存を穏やかに可能にしてくれるだろう。

※1 Why Is Dog Pee Killing Your Grass — And How to Stop It

【参照サイト】Your neighbors might install a ‘pee-pee rock’ to protect native plants from your pup

03. 学校の解体物とCO2で繰り返し使えるコンクリートの製造に成功

産業廃棄物の中で、大きな割合を占める業界の一つが建設業だ。建設廃棄物は、すべての産業廃棄物のうち2割、不法投棄のうち8割を占めており、限りある資源を有効に活用するための仕組みづくりが必要とされている。

東京大学を中心とした研究チームは、取り壊された校舎のコンクリートと空気中の二酸化炭素を混ぜることで、建材にも使用可能な炭酸カルシウム製ブロックの作成に成功したことを発表した。理論上は、何度も同じブロックを作成することが可能だという。

研究チームの丸山氏は「これらのブロックは、比較的少ないエネルギー消費で繰り返し粉砕して作り直すことで、理論上は半永久的に使用できます。現在の古い建物のコンクリートは、新しい建物を建設するための一種の都市鉱山と考えることができます」と、コメントした。見方を変えれば、私たちの身の回りには資源が溢れている。それらを使い続ける方法を模索することこそ、クリエイティブなアイデアの起点になるのではないだろうか。

【参照サイト】Urban concrete mines
【参照サイト】New greener building bricks made from demolished school and CO2
【参照サイト】コンクリート、アスファルト類の処理|環境省
【参照サイト】建設リサイクル等の推進|環境省

04. マドリードの「本の形をした読書ベンチ」がひと休みすることを提案

街中を歩いていて「少し休もうかな」と思っても、なかなか良い休憩場所が見つからないことがある。ベンチの数は少なく、結局お金を払ってカフェで席を確保するに至ることは、よくあるのではないだろうか。しかしスペイン・マドリードでは、むしろ休むよう積極的に促すベンチが登場したという。

それが、本の形をしたベンチを街に設置する「Siéntate a leer (Sit Down to Read:座って読もう)」という取り組みだ。市内に26のベンチが置かれ、それぞれ異なる作品をモチーフにしている。ベンチにはQRコードも付いており、モチーフになっている作品やその著者に関する詳細をオンラインで学ぶことができるのだ。この企画は、街が出版社のペンギン・ランダムハウスなどとコラボすることで実現した。

ただ休めるベンチを置くだけでも、暮らしやすい街に一歩近づくだろう。しかしもう一歩踏み込んで、より多くの人の目を惹くデザインに仕立てることで、「休むこと」の大切さそのものを伝えるきっかけにもなりそうだ。

 

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【参照サイト】With Penguin Random House, Madrid installs hard-to-miss invitations to sit down and read

05. 中国で21年以上にわたって469人の飛び降り自殺を阻止した男性

中国では、若者が自ら命を絶つ事例が増加しているという。特に学生の状況が深刻であり、2022年のデータでは、うつ病患者のうち50%が学生であった(※2)

こうした状況に対し、人と人とのコミュニケーションを通じて多くの人を救ってきたのが、チェン・シー氏だ。長江にかかる大きな橋を1日10回歩いて回り、あてもなく橋の上で右往左往している人に話しかけることで、橋から飛び降り自殺を図る人々の命を救ってきたという。チェン氏はこれをボランティアで20年以上続けており、部屋を貸したり生活費を支援したりしてきたことで「南京の天使」と呼ばれているそうだ。

根本的には、心の健康を損なう要因を解決できるよう、社会システムを変えていく必要がある。しかし、現状の裏にはチェン氏のように身を粉にして一人ひとりと向き合っている人がいることを忘れてはならないはずだ。

※2 《2022国民抑郁症蓝皮书》发布,应高度重视学生心理健康

【参照サイト】China ‘angel’ stops 469 suicidal people jumping off bridge over 21 years
【参照サイト】中国で増える若者の自殺、学業のプレッシャー大きく-卒業後も就職難

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