新型コロナウイルスの影響によって、私たちの働き方や仕事への意識が大きく変化した。リモートワークや、パラレルキャリアなど新しい働き方の幅が広がったことで、より柔軟で自由な働き方を求める動きが進んでいる(※1)。現在の日本の状況はどうだろう。
仕事と生活の調和を目指すワーク・ライフ・バランスを推進するため、国や企業は短時間勤務制度の導入などの施策を進めているが、厚生労働省が実施した令和5年の調査によると、決められた総労働時間の範囲内で労働者が始業・終業時間を自由に選択できるフレックスタイム制を導入している企業の割合は、有効回答数約3,800件のうち、6.8%だった。
フレックスタイム制度の普及が進まない一因として、製造業やサービス業などに従事する人の多くが、業務量や需要に応じてあらかじめ時間や人員配置が決められた「シフト制」のもとで働かざるを得ない状況にあることが考えられる。職種によって働き方の自由度が異なっているのが現状だ。
2024年、欧州のチェコでは職種に関わらず、すべての人が自由に働き方を選択できるようにするための法改正が進んでいるという。議会上院が国内すべての従業員が雇用主との協議の上で、自分の勤務スケジュールを決める選択肢を要求できるよう労働規則の改正案を採択したのだ。
EUの加盟国であるチェコは、ヨーロッパの中心に位置していることから、他国との取引など国際ビジネスにおいて重要なハブとしての役割を担っている。自動車産業を中心とした製造業、化学工業や観光業が主要産業だ(※2)。フレックス制を利用しにくい産業が盛んな国で、職種に関係なくすべての人を対象にしたこの法改正の提案は非常に革命的であると言える。
この法改正は労働者の生産性と士気を上げ、雇用主との相互信頼を高めることを目的としているが、チェコ・モラヴィア労働組合連盟のヨゼフ・ストジェドゥラ氏は「工業企業を例にした場合、誰かが代わりに出勤しないといけないなどの調整が必要となり、実際にはうまくいかないだろう」
とPrague Morningの記事で指摘している。現在の法的規則にも準拠しながら、すべての人にとって平等な労働環境を整備をすることは、企業や雇用主を悩ます大きな課題となるだろう。法案が正式に施行された場合、これらの課題に対してどのように対処していくのかも注目だ。
職種に関係なく、すべての人が心地よい働き方を選択できることは、自身の満足度や会社への貢献意欲が向上し、離職や意欲低下の防止にもつながるのではないだろうか。課題は山積みでも、この働き方改革が良い前例として派生していくことを期待したい。
※1 パーソル総合研究所 第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査
※2 外務省 チェコ共和国基礎データ
【参照サイト】厚生労働省 令和5年就労条件総合調査概況
【参照サイト】内閣府HP「仕事と生活の調和」推進サイト ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて
【参照サイト】Prague Morning – Czechia to Let Workers Decide Their Own Schedules
【参照サイト】MAYOR.eu – Czechia to let workers decide their own schedules
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Edited by Megumi