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【まとめ】廃棄物を資源に変えるサーキュラーエコノミー事例20選

リサイクル

サーキュラーエコノミーとは?

ヨーロッパが打ち出したサーキュラーエコノミーという概念が、日本が発達させてきた循環型経済とも相まって国内でも広まりつつある。これまでの資源を「取って、作って、捨てる」という経済(直線的経済/リニアーエコノミー)からの脱却を図り、資源を最大限に生かして永続的に使い続け、循環させていこうという取り組みである。従って、ゴミは次の製品のための資源となるため、ゴミという概念がなくなり、結果的に環境負荷がなくなるというものだ。持続可能な経済を実現する、最も有効だと捉えられている手段である。

この分野の最先端の知見を持つイギリスのエレン・マッカーサー財団はサーキュラーエコノミーを下記のように定義している。

1. 自然のシステムを再生(Regenerate natural systems)
有限な資源ストックを制御し、再生可能な資源フローの中で収支を合わせることにより、自然資本を保存・増加させる。

2. 製品と原料材を捨てずに使い続ける(Keep products and materials in use)
技術面、生物面の両方において製品や部品、素材を常に最大限に利用可能な範囲で循環させることで資源からの生産を最適化する。

3. ゴミ・汚染を出さない設計(Design out waste and pollution)
負の外部性を明らかにし、排除する設計にすることによってシステムの効率性を高める。

この定義で捉え直すと、資源を循環させていくだけではなく、自然環境を再生させていくという野心的な取り組みと言える。欧米を中心にサーキュラーエコノミーの具体的な事業として取り組みが進みつつあり、IDEAS FOR GOODでも紹介してきた。ここではこれまで取り上げてきたサーキュラーエコノミーの事例について紹介したい。

目次
  1. サーキュラーエコノミー × 食品
  2. サーキュラーエコノミー × 建設
  3. サーキュラーエコノミー × ファッション
  4. サーキュラーエコノミー × 生活

サーキュラーエコノミー × 食品

01. さとうきびを使ったストローを作るスタートアップ

さとうきびストローでまちづくり。循環型社会の実現を目指す「4Nature」


プラスチック問題が急速に取り上げられるきっかけとなったプラスチックストロー。生分解性ストローや紙ストローが登場してきているが、バイオ分野においてのサーキュラーエコノミーの肝となるコンポストがなされずに焼却されてしまう現状がある。4Natureはさとうきびからストローを作って回収し、農家でコンポストするインフラを構築。1年で100店舗が導入され、今でも導入店舗数が拡大している。4Natureと実際に導入したBERTH COFFEE (バースコーヒー)のインタビュー。

02. コーヒー豆かすとタンブラーをリサイクルするスターバックスジャパン

スターバックス コーヒー ジャパン、コーヒー豆かすとタンブラーをリサイクルする2つの取り組みを開始


スターバックスコーヒージャパンは2021年にコーヒー豆か捨てずに堆肥にリサイクルする取り組みを開始した。同社ではその堆肥で育った野菜を使ったサンドイッチや、ニンジンを材料とする「キャロットケーキ」を販売している。スターバックス各店舗では毎日平均で約16kgの豆かす(食品廃棄物の約7割に相当)が廃棄されている。2021年6月時点のリサイクル率は23%であるが、これを2024年には50%に引き上げる目標を掲げている。

03. ロンドン発、パンの耳からビールをつくる醸造会社トースト・エール

英ビール醸造所の投資モデル「Equity for Good」に見る、企業と株主の新しい関係性


英国のクラフトビール醸造会社であるトースト・エールは、ビール愛好家の間でそのクオリティが高く評価されている。しかし、同社が注目されている理由は、ビールの美味しさの他にもう一つある。トースト・エールという社名は、廃棄されてしまうパンの耳やパンくずを原料としてビールを醸造していることが由来で、同社は社会・環境にポジティブな影響を及ぼす社会的企業として注目されているのだ。公益性の高い企業に与えられる国際認証「B Corp(B Corporation)」も取得済みだ。

04. 駆除のウニ廃棄をキャベツでおいしく変身させる神奈川県の取り組み

ムラサキウニは岩場の藻を食べ荒らす一方、身入りが悪く食用に適さないため厄介者として駆除対象になっている。神奈川県水産技術センターでは、廃棄されるキャベツでムラサキウニを育てる手法を開発した。キャベツで育てたウニはうまみ成分のアミノ酸が成長とともに増していた。規格外であるとの理由で出荷できないキャベツ、あるいは豊作時には価格低下を防ぐなどの理由で廃棄されるキャベツで育ったウニが食卓に上るというまさに「おいしい話」である。

キャベツウニについて | 神奈川県(外部サイト)

05. 東南アジアで開発が進むココナッツ製のクーラーボックス

“使い捨て”は卒業しよう。東南アジアで開発が進む、ココナッツ製のクーラーボックス


スタンフォード大学出身のタマラ・メッケラー氏とデイビッド・カトラー氏はフィリピンの漁村に滞在した際に、漁業者が魚を運ぶために欠かせない発砲スチロール製のクーラーボックスは耐久性が弱く4回ほど使われると廃棄されてしまう様子を見て、性能が良く手頃な価格のクーラーボックスがつくれないかと考えた。そこで彼らが考え出したのがフィリピンで盛んなココナッツ産業から廃棄されるココナッツの殻を使ったクーラーボックス「Nutshell Coolers」だ。

彼らは、ココナッツの殻は炎天下で実を守るため断熱性に非常に優れた素材であることに着目し、これを断熱材として利用することを思いついた。耐久性に優れた「Nutshell Coolers」により漁業者は消耗品にかかる費用を抑えることができ、ココナッツの栽培農家は廃棄していたココナッツの殻を売ることで収入が増加する。さらに発泡スチロール製クーラーボックスとココナッツ殻の廃棄量が減ることは環境負荷の軽減につながる。まさに三方よしだ。

サーキュラーエコノミー × 建築

06. ジャガイモから生まれた建築資材Chip[s] Board

廃棄予定のジャガイモが建築資材に。サーキュラーエコノミーを実現するChip[s] Board


毎年約3,000万トンもの建築資材が廃棄されているが、建築資材自体を生分解性のものに変えればいいのではないかという発想から生まれた新建築資材で、廃棄予定のジャガイモから作られている。食糧廃棄問題の解決にも繋がる一石二鳥の素材である。

07. 廃タイヤからアスファルト道路に。イギリスのTarmac社の挑戦

廃タイヤをアスファルト道路にリサイクル。循環経済を目指すイギリスのTarmac社

イギリス国内で廃棄されるタイヤは約4,000万台。タイヤは輸出されたり埋立地で埋められたりとまだ廃棄物としてみなされている。そんな課題の解決に取り組んでいるのが、インフラ技術会社Tacmac社の廃タイヤを原料とするゴムチップを使用したアスファルト合材だ。アスファルトの上を走るタイヤがアスファルトの材料として戻っていく、循環型の取り組み。

08. 食用鶏の「羽」を使ったサステナブルな断熱材

サーキュラーエコノミー賞も受賞!鶏の羽を再利用した、サステナブルな断熱包装


Eコマースが活発になるに連れて、包装資材の増加による環境負荷が高まっている。イギリスのAEROPOWDER社が食用鶏の羽を利用した断熱材「pluumo」を開発してこの問題に取り組んでいる。食用鶏の羽のほとんどが捨てられるか他の動物の餌に加工されている。2018年9月には欧州のサーキュラーエコノミー賞である「2018 Green Alley Award」を受賞した。製品の設計段階から廃棄後のことを想定しておくことはサーキュラーエコノミーの重要な考え方だ。その考え方が体現されたAEROPOWDER社の取り組みを紹介する。

09. CO2をコンクリートに封じ込める。大成建設が目指す「カーボンニュートラル」

コンクリートの主要な原材料であるセメントは、製造過程で大量のCO2を排出することが知られている。ゼネコン大手の大成建設は、このセメントの使用量を減らし、CO2排出量を減らした『T-eConcrete(R)』シリーズを開発した。同社は、製鋼の過程で生じる高炉スラグ、石炭火力発電所で生じる石炭灰をセメントの代わりに使うことにより、通常のコンクリートに比べてCO2排出量を65~75%削減することに成功した。

大成建設はさらに、大気中や工場などの排気ガスなどから回収した二酸化炭素をカルシウムに吸収させて製造する炭酸カルシウムなどと高炉スラグを用いて製造するCO2排出量が実質-49%のカーボンリサイクル・コンクリートの実用化に向けて研究を進めている。

使えば使うほど二酸化炭素を削減!新たな未来をつくるカーボンリサイクル・コンクリートの秘密 | 地図に残る仕事。大成建設 (外部サイト)

サーキュラーエコノミー × ファッション

10. オーガニックコットンの服が循環される子ども服

成長したら次の子供に受け継ごう。サーキュラーエコノミー時代の子供服「UpChoose」


すぐに成長する子ども服は日本でも古くから循環させる仕組みが整ってきた分野でもある。肌が敏感で発達途上にある子どもにオーガニックコットンを着せたいという需要もある。サンフランシスコのスタートアップUpChoose社は、インターネットのプラットフォーム上で、親がオーガニックコットン製の服を購入し、成長したら返却するという仕組みを整えた。「気軽に、なるべく安価で」という点が特徴である。サーキュラーエコノミーにおいても大切な考え方となる「所有から利用へ」の一例とも言える。

11. ファッション業界のサーキュラーエコノミー化を実現させるための助っ人

マイクロチップで服を追跡。ファッション業界の完全なサーキュラーエコノミーを実現する「Circular ID」


ファッション業界においてサーキュラーエコノミーを実現させるためには、「情報」が必要となる。ブランド・カラー・価格・原料・生産国、という情報に加え、服がどのように販売・購入・リセールされてきたかという製品ライフライクルの各段階における情報が衣類に埋め込まれたIDによって確認することができる。

12. サーキュラーエコノミーの好事例。MUD Jeansの取り組み

買わずに借りるジーンズ?1年後に返すと素材が再利用されるMUD Jeans


サーキュラーエコノミーの5つのビジネスモデル「再生型サプライ」「回収とリサイクル」「製品寿命の延長」「シェアリング・プラットフォーム」「サービスとしての製品」のうちの少なくとも4つ「再生型サプライ」「製品寿命の延長」「回収とリサイクル」「サービスとしての製品」を体現したサーキュラー型ビジネスモデルの先進事例としてよく取り上げられるMUD Jeans。同社はジーンズを売らずにレンタルし、借りている人は返却の際にジーンズをそのまま自分のモノにするか、新しいジーンズと交換するか、それとも返却するかを選ぶことができる。

13. ポリエステルを再生して服から服をつくる「BRING」

石油問題に一石を投じる。捨てられたTシャツから作る「BRING Tシャツ」


「BRING」は神奈川県川崎市に本社を置くJEPLAN社が手掛ける「服から服をつくる」をコンセプトにしたアパレルブランドだ。同社は提携する200近い有名ファッションブランドの店舗で回収した古着からポリエステル樹脂をつくる技術を確立し、それを原材料とするおしゃれなシャツやインナーを製造・販売している。

同社のケミカルリサイクル技術によりつくられたポリエステルは、石油由来のバージン素材に比べて49%もCO2排出量を削減することができるという。これまでの古着回収はリユースが主体であったが、技術進歩により新たな可能性が生まれた事例である。

サーキュラーエコノミー × 生活

14.「容器を捨てる」という概念を捨てたプラットフォーム「LOOP」

容器の所有権をメーカーが取り戻す。サーキュラーエコノミーのプラットフォーム「Loop」の挑戦


日本でも展開をしている「Loop」であるが、発表時は大きな話題となった。Loopは、生活用品の容器を繰り返し使えるものに変え、消費者の利用後は回収・洗浄し、中身を再度充填した上で再び消費者が利用できる仕組みだ。これまで消費財や食品の容器が使い捨てになっていたものが、その便利さを損なわないように、繰り返し使えるものとなる。サーキュラエコノミーの根幹である「ループを閉じる」をまさに文字通り実現しようとしている。P&G、ネスレ、ペプシコ、ユニリーバ、ザ・ボディショップ、ダノングループなどの世界のグローバル企業が参画している。「Loop」を仕掛けたテラサイクル社へのインタビュー記事だ。

15. 世界初、リサイクル品だけのショッピングモール ストックホルムの「ReTuna」

ストックホルムに誕生した、世界初となるリサイクル品だけのショッピングモール


サステナブルな暮らし、サーキュラーエコノミーの考え方に即した消費行動を実践したいと思っている消費者のニーズに応えられる店舗はまだまだ多くない。ReTunaというストックホルムの自治体が運営するショッピングモールは、リサイクルやアップサイクル品のみを取り扱う店舗だ。取扱商品は、衣服、家具、家庭装飾品、家電製品、家庭用品、玩具など多岐にわたり、生活に必要なものが揃えられる。

16. ベトナムの循環型の図書館

本を読むだけじゃない。サーキュラーエコノミーを「体感」しながら学べる、ハノイのVAC図書館


ベトナムのファーミング・アーキテクツ社によって作られたVAC図書館。VACとは、「作物栽培」「水産養殖」「畜産」を組み合わせた複合型の農業システムのことをいう。サーキュラー型農業の一形態であるアクアポニックスという方法を取り入れると同時に子どもたちが本を読める図書館としても機能している。都会におけるサーキュラー型農業システムを肌で感じながら学べるような設計になっている、なんとも贅沢で斬新な図書館だ。

17. コラボレーションの好事例。ロンドンのコーヒーカップ回収キャンペーン

ライバル同士が手をつなぐ。ロンドンで始まったコーヒーカップのサーキュラーエコノミー


#SquareMileChallenge(スクエアマイルチャレンジ)は、ロンドンで廃棄される大量の使い捨てコーヒーカップ(イギリス全体では700万杯/日)を市内に置いている回収ボックスで回収し、リサイクルする取組み。このキャンペーンにはスターバックス、マクドナルド、マークス&スペンサー、カフェ・ネロなどロンドン市内に展開する100以上のコーヒーチェーンや小売店が参加しており、どの店でコーヒーを購入したかに関わらず飲み終わったカップの回収を受けつける。

18. 使わなくなった化粧品から生まれた絵の具「SminkArt(スミンクアート)」

アップサイクルの先へ。個人の感性を解放し、コスメの存在意義を見つめ直す「COLOR Again」体験レポ


東京都練馬区に本社を置くモーンガータ社は、流行に合わないなどの理由で使われなくなったアイシャドウなど粉末化粧品を簡単に絵の具に変身させるキット「SminkArt」を販売している。化粧品から生まれる絵の具はもちろん光沢があり色鮮やかだ。化粧品メーカーであるコーセーは2020年からモーンガータ社の取り組みに賛同しており、研究開発段階の試作品など最終商品にならなかった化粧品をSminkArtの原材料として提供している。

19. まさにサーキュラーエコノミーを体現したイギリスの家具ブランド「Pentatonic」

家具のサーキュラーエコノミーを実現するイギリスのスタートアップ「Pentatonic」


スマートフォンなどの電子機器や空き缶、廃棄された衣料品、タバコの吸い殻など、廃棄物を原材料として家具づくりに取り組んでいる持続可能なホームウェアブランド。その家具には化学薬品が使われておらず、デザインもシンプルでモダン。サーキュラーエコノミーのキーワードである「モジュール」化も実現している。使用済みの家具は回収され、再製品化されるシステムも整えている。

20. 廃棄衣料品を原料としたサステナブルボード「PANECO®
PANECO

Image via WORKSTUDIO

東京・四ツ谷に本社を置くワークスタジオ社は、マテリアルリサイクルで繊維を再資源化することで繊維産業のサーキュラーエコノミー加速を目指している。「PANECO®」は、同社が開発した循環型繊維リサイクルボードだ。最終的に焼却処分される繊維を回収し、特許取得済みの独自技術を用いて国内でボードに再生する。PANECOは、既存の木質ボードの代替素材として家具・店舗什器・オフィス家具などのさまざまな用途に使用できる。

まとめ

コンサルティングファームのアクセンチュアは、サーキュラーエコノミーの経済効果は2030年までに4.5兆ドル(480兆円)に達すると試算している。

今回紹介した20の事例を見ると、さまざまな分野でサーキュラーエコノミーの取組みが広がっており、また、ケミカルリサイクルなどの技術革新により新たな可能性が広がっていることがわかる。

IDEAS FOR GOODでは引続き国内外のサーキュラーエコノミーの最新事例をお届けしていく。

まだまだサーキュラーエコノミーの事例を知りたい方は、ぜひ「欧州サーキュラーエコノミー特集」も見ていただきたい。

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