IDEAS FOR GOODではこれまでにも、雨水からビールをつくる「Hemelswater」や廃棄用のビール瓶をリサイクルして人工の砂を作り出す「DB Breweries」、廃棄予定のパンからビールを作る「Toast」など、世界各地のビール作りを通じて世の中をよりよくするユニークな取り組みを紹介してきた。
今回取り上げるのは、デンマークのビール醸造大手カールスバーグ社の取り組みだ。カールスバーグは11月24日、スウェーデン初となるカーボンニュートラルのブルワリーのオープンを発表した。新たに操業が始まるスウェーデンのファルケンベルクの巨大な醸造所は電力の100%がバイオガスとグリーンエネルギーによって賄われ、CO2排出量はゼロとなる。
今回の取り組みは、同社が今年の初めにローンチしたサステナビリティ・プログラム「Together Towards Zero」の一環だ。カールスバーグは2030年までに全醸造所のビールのCO2排出を2022年までに30%削減、そして全社で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄い、環境負荷が大きい石炭発電も排除するという目標を掲げている。現在同社が利用する電力の26%は自社の廃水を再利用したバイオガスによるもので、74%が天然ガスにより発電されている。
カールスバーグは科学的な根拠に基づくCO2削減目標設定に取り組んでおり、気候変動抑制に関する国際的な枠組「パリ協定」の基準値2を上回る1.5に目標設定し、業界最高水準の環境対策を進めている。
カールスバーグ・スウェーデン醸造所の代表を務めるTed Akiskalos氏は「何年もの間、私たちは環境への影響を極力減らして、効率的な醸造所をつくる取り組みを行ってきました。それは何年にもわたってエネルギー消費を削減してきたことにも見ることができます。大きく前進し、カーボンニュートラルのエネルギー源だけを使用するのには、勇気づけられます」と語る。
スウェーデンでは、高機能なバイオガス発電のインフラが整っている。カールスバーグは、ゼロエミッション・プログラムの一環として、ソーラーパネルの設置や可能な限り再生可能エネルギーの購入に努めるなど、持続可能なエネルギーの調達を進める方針だ。
カールスバーググループのサステナビリティ担当役員を務めるSimon Boas Hoffmeyer氏は「今日の社会で、世界中の市民、政府、企業にとって、気候変動はおそらく最も重要な問題であり、私たちはカールスバーグの積極的な進展に非常に満足しています。これは、気候変動への取り組みに貢献する意欲を示しています。カールスバーググループは、今日と将来のために醸造する努力を怠らず、私たちの志と目標を追い続けていきます」と語る。
今までは営利優先に事業を進めがちな民間企業の活動の行き過ぎを、公的機関が上から規制するというのが従来の図式だった。しかし、行政に言われるまでもなくその基準をも上回る環境対策を行うグローバル企業のカールスバーグの姿勢とは評価に値するものであり、世界中の企業にとってよいお手本だと言える。