日本でも人気のある家具メーカーのイケアやファストファッションのH&Mは、スウェーデン生まれだ。ほかにも、スウェーデンと聞くと、「洗練されたデザイン」、「自然がきれい」など良いイメージが浮かぶ。しかし、スウェーデンのすごさはこれだけではない。
スウェーデンは、2017年のグローバル・イノベーション・インデックスで第2位にランクインするなど、非常に革新的な国だ。見た目のかっこよさだけにとどまらず、アート、多様性、ジェンダー、リサイクル、建築など、ほぼすべての分野でクリエイティブなアイデアを出し続け世界の最先端を走っている。
ここでは、IDEAS FOR GOODが2017年に取り上げたスウェーデン発のイノベーティブなアイデアたちをご紹介したい。
失敗は成功のもと
01.世界の失敗作だけを集めた美術館「The Museum of Failure」
館内には60以上の失敗作が並ぶ美術館「The Museum of Failure」。失敗作の背景が展示されたり、失敗作をどのように自分自身のビジネスや生活に活かすべきかのワークショップが開かれている。成功だけではなく、「失敗を歓迎する社会を創出すること」が、イノベーションのヒントになることを教えてくれよう。
「男女平等ランキング」上位国がさらなる平等を目指す
02.AIで会議の発言を分析し、ジェンダーの偏見を可視化するアプリ
スウェーデンのデザイン会社が開発したアプリ「Gender EQ」は、音声認識に基づき会議における男性と女性のそれぞれ話した時間の割合を測る。よく話す女性役員の評価が男性と比べて低いという調査結果を可視化し、職場での無意識的な偏見に対処するためのツールだ。
看板だって、タバコの煙は嫌い
03.スモーカーはご注意!タバコの煙で咳き込む看板
禁煙を奨励するための啓発キャンペーンの一環として風変わりな看板が、ストックホルムに登場した。タバコを吸った通行人が看板の前を通りかかると、タバコの煙を感知した看板の中の男性が急に咳き込むインタラクティブな仕掛けが施されている。
お得に楽しくリサイクルしよう
04.世界初のリサイクル品だけのショッピングモール
ReTunaは、世界初となる、リサイクル品やアップサイクル品を取り扱う店舗だけを集めたショッピングモールだ。新しいものを作って売るのではなく、既存の製品や資源を有効活用することで、無駄な生産と消費を無くすという新たなビジネスモデルに挑戦している。
05.使用済み電池を入れるとクーポンがもらえる自動回収機
ノルウェーとスウェーデンの会社が共同で、使用済み電池を投下するとその電池をスキャンして読み取り、クーポンを発行する電池の自動回収機を開発した。ユーザーに経済的インセンティブを与えることでリサイクルへの参加を促している。
日々の生活から地球環境を守る
06.データセンターの廃熱を暖房に利用するストックホルム
インターネットの利用でデータセンターでは膨大なエネルギーが消費されている。ストックホルム市が主導するストックホルム・データ・パークスは、再生可能エネルギーでデータセンターを稼働するだけでなく、さらにその排熱を暖房に利用し、無駄がない。
07.マイクロプラスチックの分解を速める新フィルター
シャンプーや日焼け止めなど、多くの日常生活品に含まれているマイクロプラスチックは、下水処理場のフィルターを通過して海に流れ、生態系への影響が懸念される。そんな中、プラスチックを水と二酸化炭素に分解するプロセスを促進するナノスケールのフィルターが開発された。
08.自転車で暮らす人のためのアパートホテル
「Ohboy Hotel」と名付けられたアパート兼ホテルは、駐車場のかわりに自転車の貸出サービスを提供し、自転車タイヤの空気入れや自転車の洗い場なども設置するなど、サイクリストにやさしい。宿泊者とアパート住民が、自転車を使ったサステナブルな暮らしを送れる工夫が満載だ。
09.農業とオフィスが共存した高層ビル「World Food Building」
全長60mという巨大な高層ビルの中で植物を育てる次世代の都市型農業の形が、もうすぐスウェーデンで完成する。今後の人口爆発に対応する、農業とテクノロジーを掛け合わせた「Agritech(アグリテック)」分野の好例だ。
10.スウェーデンで初のカーボンフリーブルワリー開設
デンマークのビール醸造大手カールスバーグ社は、電力の100%がバイオガスとグリーンエネルギーによって賄われ、CO2排出量はゼロとなる巨大な醸造所をスウェーデンにオープンさせる。ビール作りを通じて世の中をよりよくする取り組みの一つだ。
大手アパレル企業H&Mのイノベーション
11.海洋投棄されたゴミからできた、H&Mの美しいドレス
世界有数のリサイクルポリエステルのユーザーであるアパレル大手H&Mが、海辺や水路に破棄されるペットボトルなどのプラスチックのゴミから生まれた美しいドレスコレクションを披露した。
12.H&Mの洋服が火力発電所の燃料に
H&Mで廃棄されるリサイクルできない洋服が、石炭に代わってスウェーデンの火力発電所の燃料になっている。自社の洋服を燃やすという新しい発想で、ファストファッション業界にイノベーションを起こしている。
まとめ
イノベーション大国の名のとおり、中小から大手企業、そして行政と、どの部門をとっても、自社や自国の利益を求めるだけではなく、自分たちが住む社会や地球のために行動しているスウェーデン。おりしも、来年2018 年は、スウェーデンと日本の外交関係樹立 150 周年記念を祝う年であり、多くの関連イベントが予定されている。より一層、ソーシャルグッド先進国のスウェーデンの動きから目が離せない年になるだろう。
【参考リンク】Global Innovation Index 2017: Switzerland, Sweden, Netherlands, USA, UK Top Annual Ranking