ジェンダー問題の歴史は、古い。1945年に日本で男女平等選挙権が認められてから、70年が経過した今でも、日本は同分野では世界の後進国だ。2017年世界の男女平等ランキングで、日本は114位と過去最低を更新した。
一方、近年では、従来の男女という概念に縛られないLGBTも含めたジェンダーフリーないしはジェンダーニュートラルな考え方が一般的になってきた。ここでは、IDEAS FOR GOODが2017年に取り上げたジェンダーフリーに関するアイデアを5つご紹介したい。
01.ロンドン地下鉄が「淑女・紳士」の表現を廃止
地下鉄やバス等を管轄するロンドン交通局は、「ladies and gentlemen(淑女・紳士の皆様)」というジェンダーを特定する挨拶の廃止を決めた。世界で最も多様性のある都市の一つであるニューヨークでも、言葉からジェンダーニュートラルな社会へ動き出している。
02.ジェンダーの偏見を可視化する。AIで会議の発言を分析するアプリ「Gender EQ」
スウェーデンのデザイン会社が開発したアプリ「Gender EQ」は、音声認識に基づき会議で男性と女性がそれぞれ話した時間の割合を測る。よく話す女性役員の評価が男性と比べて低いという調査結果を可視化し、職場での無意識的な偏見に対処するためのツールだ。
03.発言する女性を応援するアプリ「Woman Interrupted」
ブラジルやパリ、ロンドンに拠点を置く広告代理店BETCは、「女性の発言を男性がしばしば遮る」というデータに着目し、「Woman Interrupted」というアプリを開発した。携帯電話のマイク機能を利用して男女の音声周波数を認識し、男性が女性の話を遮る回数を検出する。
04.女性の味方、言葉をデザインするキーボード
ニューヨーク出身のデザイナーが考えたのは、女性がより簡潔かつ率直な言葉を使えるようになる「キーボード」だ。「女性がもっと力強い言葉を発することができるように」というコンセプトで作られた。
05.チュニジアの事例から考える「平等」とは?
アラブ諸国のチュニジアで、ムスリム女性が非ムスリム男性と結婚する自由が認められた。女性の権利が拡大してよかったと考えるのか、違いを無視して「同じ権利が認められれば、平等なのか」という点について考えさせられる。
まとめ
ジェンダー格差は、国ごとに異なる。それを可視化する方法として、男女平等問題だと、国会議員や企業役員の比率、賃金格差での比較がわかりやすい。LGBTだと、同性婚を認めているか、男女を区別しないトイレが設置されているかなどが指標となりうる。
しかし、日常なにげなく使っている「言葉」にこそ、ジェンダーに関する潜在的な差別意識があらわれていることは気付きにくい。この無意識の差別を可視化するこれらのアイデアで、潜在意識を変えていこうとするのはユニークである。
最近では、日本でも男女平等だけでなく、LGBTも含めたジェンダーニュートラルに関するニュースが多くなってきた。東京の渋谷区が同性パートナーに対して証明書の発行をはじめたのは記憶に新しい。しかし、これだけ経済や技術が進歩してきた日本だが、同分野では決して進んでいるとは言えない。世界各国の取り組みをもっと見習っていく必要があるだろう。