開催が間近に迫ったサッカーの2018年ワールドカップ(以下W杯)・ロシア大会。日本代表チームは、当初、大会に向け監督を招へいしたが、短期間で日本のレベルを引き上げたハビエル・アギーレ氏が八百長疑惑で告発され契約解除(のちに無罪確定)。そして後任を務めたヴァヒド・ハリルホジッチ氏までもが大会直前にまさかの電撃解任となり、危機的な状況でロシア入りすることになる。
サッカーW杯は世界最大級のスポーツイベントである。ホスト国には直接的・間接的な社会的・経済的利益をもたらすが、世界中の多くの人々が移動する分、温室効果ガス排出による環境負荷も大きい。W杯でリスクにさらされているのは、日本代表も地球環境も同じなのだ。
昨今の環境意識の高まりから、国際サッカー連盟(以下FIFA)は、ロシア大会に関連した炭素排出量を測定し、その削減・相殺(カーボン・オフセット)に努めることとなった。カーボン・オフセットとは、人々の活動による温室効果ガスの排出量に合わせて、同じくらい排出を削減するためのプロジェクトにFIFAが出資し、排出量を相殺することだ。
取り組みの一つが、モスクワでの決勝戦のペアチケットが当たるキャンペーンである。1人のサポーターがキャンペーンに登録するごとに、ロシア大会での移動時に出るとされる2.9トン(1人分平均)の炭素を削減するようにFIFAが出資するのだ。仮に、排出ガスを完全に相殺できない場合、ロシアや世界中の低炭素開発プロジェクトに国連を通じて支援を行い、最大10万トンの炭素排出量を相殺する。
FIFAが専門家とチームを組み、2018年W杯に関する炭素排出量を推計し作成された温室効果ガス報告書によると、今大会では10万tCO2eを超えるという。内訳は74.7%が外国からロシアへの渡航であり、現地都市間の移動も、排出に大きく影響する。
そのため、車やタクシーの代わりに、公共交通機関を利用することも環境負荷の軽減につながる。大会中は、観戦者全員が取得するファンIDとチケットを提示すると、開催都市内で試合日にスタジアムへの公共輸送サービスを無料で利用することができるようだ。また、一つの都市から別の開催都市に移動する場合も、無料の列車サービスを利用できる。
カーボンオフセットは、環境への負担を相殺すると同時に観客にもやさしく、雇用の創出や、慈善団体の支援等、地元のコミュニティにも恩恵があるのだ。
実はこのような大規模な取り組みでなくても、一般人が国連のClimate Neutral Nowプラットフォームにある低炭素プロジェクトを支援することによって、ガス排出を削減することもできる。
今回のFIFAの気候変動への取り組みにより、今後も大きなスポーツイベントで追随する動きが出てくるかもしれない。
【参照サイト】Help address climate impact and get a chance to win two tickets to the final in Moscow!
【参照サイト】WHAT IS FAN ID?
【参照サイト】Climate Neutral Now
(※画像提供:Shutterstock)