インド洋に浮かぶ島国、スリランカ。セイロンティーや砂糖の輸出などの産業が盛んで、水田稲作等、日本との共通点も多い。人口2,000万人あまりの約7割を仏教徒がしめ、世界遺産に登録されている石窟寺院「ダンブッラの黄金寺院」等、多くの寺院が点在する。
冠婚葬祭の場であるそれら仏教寺院を彩るのに欠かせないのが花だ。生花の命は短く、古くなったものは廃棄され、また新たに大量の生花が持ち込まれるということが繰り返される。
サステナビリティの重要性が増すにつれ、天然素材の利用やリサイクルが注目されるいま、広告代理店Leo Burnettのスリランカ支店は、塗料会社JAT Holdingsと共同で、廃棄された花弁から塗料「Petal Paint」をつくり出すことを思いついた。
寺院から回収した200キロの花弁を乾燥させ、50リットル相当の液状塗料を製造する。利用可能な色は、ロータスレッド、ピジョンウィングブルー、トランペットゴールド、マリーゴールドオレンジ、テンプルフラワーホワイトの5つの自然色。寺院の壁や天井に描かれた絵画をモチーフにしたデザインのラベル付きの缶に入れられ完成だ。
この花弁塗料は、職人が寺院の芸術を修復するための重要な素材となっている。天然塗料の自然な味わいが非常によくなじみ、歴史的建造物の趣を壊すことなく、良さをより一層引き立てる。
Leo Burnett Worldwideの執行役員兼最高執行責任者(CFO)マーク・ツツセル氏は、「この画期的なアイデアは、創造力を活用して世界にプラスの影響を与えるものです。われわれのブランドが、スリランカの伝統と文化に何かをもたらすことができる例となるでしょう。この作品は、人々にユニークな方法で廃棄を削減すること促すだけでなく、神聖な寺院美術の保存と修復という非常に重要な事項を支援します。」と述べる。
Petal Paintは、生命が無限に転生を繰り返されるという古代の概念「サンサーラ(輪廻)」を活用している。仏教では輪廻において、「無我(永遠不変の魂は想定しない)」を前提とし、「通常の物質には存在しない認識という働きが移転される」と考えられている。ただリサイクルするだけではなく、気持ちも受け継がれるという何とも素敵なコンセプトだ。
Petal Paintには、仏教の哲学にも通じるモノを無駄にせずに活用するという認識が込められている。寺院を彩るのに、まさにふさわしい塗料ではないだろうか。
【参照サイト】Leo Burnett and JAT Holdings Leave a Lasting Impression with Petal Paint