ニューヨーク、ベルリン、リオデジャネイロ等、世界の多くの都市が、30年以内に炭素排出量を80%削減することを目標にしている。そのために炭素を削減できる分野を洗い出しているが、多くの都市では情報リソースが不足しており、具体的な行動計画を立てることが困難な状態だ。
気候変動という世界的な問題の対策を模索するための国際サミットが米サンフランシスコで開催され、その参加リストに名前を連ねたグーグル。同社が開発する新機能「Environmental Insights Explorer(以下、EIE)」のベータ版が公開され、注目を集めている。
EIEはグーグルマップのデータを使い、世界中の都市の建物一つひとつの単位や輸送で排出される炭素の量、さらに再生可能エネルギーのオフセット効果といったポテンシャルなどを細かく計測し、それぞれの進捗をビジュアルで確認できるオンラインツールだ。
データには「建物の排出・運輸の排出・カーボンオフセット・20年間の気候予測」の4つのカテゴリーがあり、どれもウェブサイトから自由に入手できる。これにより現場での計測と、通常数ヶ月かけて集積するデータセットが誰でも閲覧できるようになり、都市でのアクションを阻むコストと時間を大幅に削減する。
気候とエネルギーに関する世界首長誓約(GCoM)との協力で開発されたこのツールは、建物の屋根へのソーラーパネル設置ポテンシャルを測るツール「Project Sunroof」や、地球の衛星画像データ解析プラットフォーム「Earth Engine」といった、グーグルがこれまで取り組んできた気候関連プロジェクトを、建物や交通状況などのデータと連携させたもので、これから政府や自治体による対策の進捗状況を測る、世界規模で一貫性のある基準となりうる。
気候変動対策の枠組みであるパリ協定には、9,000以上の都市が遵守を約束しているが、温室効果ガスの排出を実際にモニターできているのはそのうち20%にも満たない。そのプロセスには、膨大な費用と年月を要することが主因で、とりわけ開発途上国の小規模な都市では困難を極める。
今回グーグルが開発したEIEは、各都市の炭素排出の影響について貴重な洞察をもたらし、行政環境問題にどのように取り組めばよいのか、行動を促す指標となりそうだ。
【参照サイト】ENVIRONMENTAL INSIGHTS EXPLORER
【参照サイト】The more you know: Turning environmental insights into action