【レポート】四角大輔、安居昭博による対談イベント「自分も世界も幸せになる、サステナブルな暮らしのはじめかた」

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ニュージーランドの原生林に囲まれた湖畔でサステナブルな暮らしを営み、場所の制約を受けないワークスタイルの実践でメディアからも注目を浴びる四角大輔さん。そして、ドイツから欧州のサステナブル事例を記事と映像で発信する「Earthackers」編集長、安居昭博さん。彼らは、サステナブルな暮らしが「欧米では“イケてる”という風潮がある」と語ります。

そんな2人が登壇するトークイベント『自分も世界も幸せになる、サステナブルな暮らしのはじめかた』が、表参道のH.I.S. 旅と本と珈琲とOmotesando で開催されました。私たちに身近な「衣・食・住」をもっと持続可能にする方法を考える、一夜限りのコラボレーション。トークのファシリテーターは、IDEAS FOR GOOD編集長の加藤佑が務めています。

四角大輔さんトークショー様子

左から安居さん、四角さん、加藤

当日は総勢約45名の参加者が集結し、満席となった会場では、2人への質問はもちろん、初めて会った人同士の会話が飛び交い、いつまでも終わらない熱気に包まれていました。本記事では、誰もが「もっと話を聞いていたかった」「もっと長くその場にいたかった」という感想を漏らした本イベントの内容をお届けします!

登壇者プロフィール:四角 大輔(よすみ だいすけ)

ニュージーランド在住の執筆家。原生林に囲まれた湖畔でのサステナブルな自給自足の暮らし/最新刊に『人生やらなくていいリスト』『LOVELY GREEN NEW ZEALAND』等/レコード会社プロデューサーとして数々のヒットを創出した経験を活かしての、オーガニックやエシカルブランドへのアドバイザリー/ライフスタイルシフト・メディア 4dsk.co 主宰

登壇者プロフィール:安居 昭博(やすい あきひろ)

ドイツ在住サスティナブル・ジャーナリスト、映像クリエイター、サーキュラーエコノミー研究家。Webマガジン Earthackers編集長。ドイツのWebマガジン FUNKENZEITの映像制作、インタビュアーを担当。2017年ベルリンで手掛けた「賞味期限切れ製品だけを販売するスタートアップ」SirPlusの公式プロモーション映像は世界中で視聴され話題となる。

「サステナビリティを自分ごとにできない」あなたへ

自分の日々の買い物や生活スタイルが、社会や環境にどこかで影響していることはなんとなくわかる。できるなら環境に配慮した生活をしたいけれど、習慣を変えるのは難しい。エコとかエシカルなものって大体お金もかかるし―そんなことを思っている人は、少なくないでしょう。

イベントでは廃棄ペットボトルでできたジャケット、着られなくなった衣類を繊維に戻して加工したロングTシャツ、購入する代わりに月額リースをしているサーキュラーエコノミー・ジーンズ、漁業ネットをリサイクルしたサングラス、そして第三機関認証のオーガニックコットンでできたニット帽という出で立ちで登場した安居さん。そんな彼ですら、ドイツやサステナビリティというテーマに興味を持ったのは数年前、東日本大震災の後だそう。

一方、四角さんはニュージーランドの湖のほとりで自給自足の生活をしています。街から20km離れた家であまり買い物もせず、ゴミもほとんど出ません。問題意識を持った2人の共通の主張は、「サステナブルな生活」は強制されるものではなく楽しく実践するものだということ。

四角大輔さんトークショー

安居:「サステナブル」の定義にこだわる方もいますが、僕はそんなにこだわる必要はないと思っていて。環境のためにこうしなきゃとか、制約を加えるのではなく、サステナブルやミニマルな生活は“取り入れるのが楽しい”もの。この服も好きだから着ています。僕はあまりものを多く持っていないんですけど、部屋のスペースが取れたり、選ぶときに時間がかからなかったりするし、選択肢が多くないからこそ「これとこれを合わせたらいいかも」と自分のクリエイティビティを働かせられる楽しみにつながっています。サステナブルな選択肢を自分の人生に取り入れたら、少し生活が面白く、豊かになるかも、という目線で見てほしい。

四角:こんな生活を送ってると、何だかストイックそうですね、とか意識高い系みたいに思われることがあるんですけど、僕自身めちゃくちゃ楽しいし気持ちよくやっているだけなんですよ。安居さんも含めて2人とも全然ストイックじゃない。自分の人生でどこまでオーガニックに生きられるかを実験していて、今のところ順調です。

欧州とニュージーランドの「衣・食・住」最新事例

では、私たちが普段からサステナブルな暮らしを実践するにはどうしたらいいのでしょうか。イベントでは、ドイツをはじめとする欧州とニュージーランドで身近なサステナビリティを実践する企業や団体の事例を紹介いただきました。

“ゴミ”を有効利用し、動物も大切にする「衣」
若者のファッション

Image via Shuttestock.com

“安価で買えてオシャレ”なファストファッションが台頭する現在。欧州、そしてニュージーランドでは廃棄されるはずの素材を「ゴミ」とせずに再利用するサーキュラーエコノミー製品や、動物の福祉を重視した製品が広がっています。

安居さんが当日着ていたダウンジャケットはデンマークのエシカルブランド「Knowledge Cotton Apparel」の製品で、なんと100%廃棄ペットボトルから作られた素材で製造されています。

また、このダウンの部分には新しい鳥から採取された羽毛ではなく、食品業界から廃棄される羽毛が再利用されています。生きた鳥から羽をむしるライブハンドピック(ハンドプラッキング)が動物福祉の観点から問題視されるなか、この方法はわざわざ生きた鳥を必要としないためコストもさらに低く抑えられるそう。

We-AR」は、エシカルなヨガファッションを追求するニュージーランドのブランド。石油由来の製品やプラスチック製品をなくすという理念を持っており、製品は100%オーガニックのコットンやリネンなどの素材でつくられています。

IDEAS FOR GOODで以前取り上げたMUD Jeansについても紹介がありました。購入から1年間で80%のジーンズが履かれなくなるという課題に、レンタルという方法で取り組んでいます。

買わずに借りるジーンズ?1年後に返すと素材が再利用されるMUD Jeans

廃棄食品を救い、オーガニックが主流な「食」

続いて紹介があったのは「食」の分野。安居さんが住むドイツのキールでは、フランス発祥の完全予約制の屋内マルシェが開かれているそう。屋内なので天候に左右されず、生産者もあらかじめ在庫を調節できるためフードロスを抑えることができます。

屋内マルシェのようす

屋内マルシェのようす。 Image via Akihiro Yasui

そして同じくドイツのベルリンには、通常であれば廃棄される食品だけを売る「Sirplus」もあります。創始者のRaphael氏は以前、NPOのフードバンクで活動していましたが、廃棄物の問題に関心のない人々にも活動を届けたいという想いから、一般消費者が来やすいスーパーマーケットで食品を売ることを始めました。賞味期限が切れていてもまだまだ新鮮で、さらに半額の野菜やフルーツを売るこのお店は、地元民にも大人気だそう。

Instock」は、オランダに展開する“フードセーヴィング・レストラン”。地域のスーパーで廃棄される食品から、「おしゃれで安くて美味しい」メニューを作り出しています。一流のシェフが手がけるフードに惹かれ、食料廃棄について知らない人も「美味しいから」「安いから」という理由で訪れています。

Instock レストランメニュー

Image via Instock Facebook page

先進的な事例があがるなか、私たち自身がサステナブルな食生活を送るために、四角さんは「まずは自然なものをしっかり食べること」を説いています。

四角:オーガニックの食品の話をすると、「四角さん、普通でいいじゃないですか」と言われることもあります。ただ、戦前まで僕たちの食生活は完全オーガニックだった。本来、人間の体はオーガニックであることが“当たり前”なんですよ。それでオーガニックのものを食べ続けるとどうなるか。僕は49歳になりますけど、2週間山を歩いても体力も落ちないし、脳のパフォーマンスも20代のころから衰えてません。つまり実利があるんですね。値段は高いかもしれないけど、投資だと思って。体の調子をよくして仕事の成果を上げたら給料もあがるよね、という話をしています。

社会に必要な“金融”から変えていく「住」

Image via rawpixel

「住」の分野で今回紹介されたのは、エシカルバンクでした。利用者から預かった資金を環境や社会に配慮したプロジェクトに融資・投資するエシカルバンクの口座を開設する動きが、欧州を中心に広がっています。

エシカルバンクの定義は、「すべての融資・投資先を公表していること」と「それらの融資・投資先が軍事産業、原子力発電産業ではないこと」の2点。欧州ではこのエシカルバンクに分類される銀行が4つあり、1つはオランダのTriodos bank、残りの3つはドイツのGLS Bank、Ethik Bank、Umwelt Bankです。

私たちが日常的に利用する銀行。人々の生活に必要不可欠なお金が、金融機関によってどのように使われているかを理解し、自分ならどこにお金を使いたいか?を改めて考えてみてもいいかもしれません。

サステナブルは“イケてる”し、サステナブルでなければビジネスはできない

近年、サステナビリティやエシカル、オーガニックといったキーワードが注目され、欧州やニュージーランドでは多くの若手起業家が事業を始めています。イギリス国際開発省の発表する「2019年の注目トレンド」では、ブロックチェーンやAI・機械学習を抑えて「サーキュラーエコノミー」が2位に輝きました。

オランダでは政府が主体となってサーキュラーエコノミーを推進し、日本でもさまざまな大手企業がオーガニック製品を開発しています。これらの分野は今、成長産業なのです。

四角さん

四角さん

四角:エシカルやサステナブルなブランドは、最近イケてると思います。10年前はイマイチだったんですけど。世界中旅をしていて、最先端の街に行くと、必ずオーガニックなカフェやエシカルファッションブランドのフラッグシップがあったりして。ただ、これは環境にいいだけじゃなくて経済的にもメリットがあるんですよね。廃棄物を使ったプロダクトの開発なら、リサイクルすることによって原材料費が抑えられます。

安居さん

安居さん

安居:ヨーロッパでなぜここまでサーキュラーエコノミーやサステナビリティが注目されて、ビジネスチャンスになっているのか。これまでは、どうしても環境面が強調されがちだったんですが、長期的に考えたときに、自分たちの土地を守っていかないとビジネスが成り立たなくなるという認識があるからです。地球環境や、生産に関わる労働者の環境をサステナブルにしないと経済活動が続かないんです。

サステナブルに事業を行うことは、経済的にメリットがあり、さらに自分も気持ちがいいと語る四角さん。しかし、現在すでに社会や環境への意識を持っている人ばかりではなく、まったく関心のない人もいます。そんな人たちに意識を持ってもらうには、どうしたらいいのでしょうか。

四角さん

四角さん

四角:サステナブルな行動を「イケてる」と思ってほしい。人は「Money(お金)」 と 「Emotion(感情)」で動くから。僕はいつも、こういう話題には興味のない若い子たちにどうやったら興味を持ってもらえるかを考えています。たとえば、僕自身が腹が出ていてイケてなかったら誰も話を聞いてくれないだろうなぁ、とか。言葉の表現や見せ方をちょっと変えるだけで届く人の範囲が広がる経験もしています。

安居:僕も、サステナビリティに関心がない方々に興味を持ってもらうために記事の執筆だけでなく映像での発信を始めました。多くの人に届くのは、環境への高い意識だけじゃなくて、デザインがかっこいい、プロダクトがいい、ごはんが美味しいってことだから。

四角:うん、若い年齢であるほど非言語で伝えるほうがいいと思っています。

安居:大学時代は、社会課題に取り組んでいるというと周りから「アツい奴」だと言われました。サステナビリティに取り組んでいる人は今でもマイノリティです。でもツイッターで少しずつ発信を始めたら、同じ関心を持った人と仲間になれた。四角大輔さんとも出会えた。自分で考えているだけじゃなく、アクションを起こすといいと思います。

編集後記

ニュージーランドでオーガニックな生活を実践しつつ、サステナビリティに関心があっても行動にうつせない人々の後押しをしてくれた四角さん。ドイツを中心とした欧州の最新事例を伝えながら、行動することの大切さを教えてくれた安居さん。

お2人のトークは、永遠に尽きることがないかのように思えました。サステナビリティ=かっこいい、イケてる、先進的と思ってもらえるよう、IDEAS FOR GOODも引き続き世界のソーシャルグッドなトレンドを追っていきます。これからのお2人の活動に注目です!

▶四角大輔さん主催、南ドイツでオーガニックをめいっぱい体験できるツアーはこちら!→究極のオーガニックホテルで心身を浄化し 自分の本来の姿を取り戻す ドイツ6日間

イベント主催:RIDE MEDIA&DESIGN株式会社
株式会社エイチ・アイ・エス ソーシャルソリューション事業チーム
ハーチ株式会社 IDEAS FOR GOOD編集部

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