地球を救う穀物?3メートル以上の根を持つ多年生穀物カーンザが農業に革命を起こす

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私たちはカロリーの45%以上を穀物から摂取している。FAO(国連食糧農業機関)によると、2018年〜2019年で1番多く生産された穀物はトウモロコシ(約11億トン)で、2番目が小麦(約7.3億トン)、3番目が精米(約5億トン)とつづく。穀物市場は規模が大きく、たとえば1万年以上もの歴史を持つ小麦は、やはり市場での存在感も大きい。

その中、わずか20年ほど前に誕生し、耕作中の土地が500ヘクタールにも満たないKernza(カーンザ)が、自然環境を守り、農業に革命を起こす穀物として注目されているのをご存知だろうか。アメリカではすでにカーンザを使ったパスタ、ピザ、パンを食べることができ、2019年4月には、同国の大手食品会社であるゼネラル・ミルズがカーンザを使ったシリアルを売り出した。

穀物

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なぜカーンザが環境に優しい穀物だと言われるのか。ひとつめの理由として、1年で枯れてしまう一般的な小麦と違い、カーンザは長く生存する多年生穀物だという点が挙げられる。このため、毎年畑を耕したりカーンザを植え替えたりする必要がなく、これらの作業にかかるエネルギーを節約できるぶん、農家から出る二酸化炭素排出量を削減することが可能になる。

ふたつめの理由として、カーンザが3メートル以上の長い根「ロング・ルート」を持つ穀物だという点が挙げられる。これは小麦の根の2倍以上の長さで、その長い根に大気中の二酸化炭素をより多く封じ込められる。肥料から出る窒素も根に閉じ込めてくれるので、窒素が川に流れ出るのを防ぐ効果もある。またカーンザは従来の小麦よりも少ない水で育ち、土壌内の生物の多様性を回復させることができる。

カーンザは長く飼料に使われていた穀物で、育った状態は小麦と一見似ているが、種のサイズは小麦の5分の1程度だ。カンザス州の非営利団体であるThe Land Instituteは、農家がより大きいスケールでカーンザを生産できるよう、より大きいカーンザの種を開発し、収穫量を増やそうと挑戦している。生産者にとっても魅力的といえる作物にするためにも、こういった努力は欠かせない。

このカーンザ、実はアウトドアブランドのパタゴニアも注目している。(参考:「アウトドア用品ブランドのパタゴニアが、ビールをつくり始めた理由」)同社は環境負荷の少ない、持続可能な農業や調達方法を支援する食品コレクション「パタゴニア プロビジョンズ」のなかで、カーンザから生まれたビールを販売している。その名もカーンザの長い根(Long Root)から着想を得て「ロング・ルート・ペールエール」と「ロング・ルート・ウィット」となっている。このビールを見かけたら、人の身長を優に超すカーンザの根を思い出すことだろう。

【参照サイト】 This tiny new grain could save the planet
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