「サステナブルで美味しいヘルシンキのごちそう」「少ないカーボンフットプリントでできるたくさんの観光」「責任感があって長持ちするヘルシンキでの買い物」
そんな項目が並ぶのは、フィンランドの首都ヘルシンキ市が立ち上げたウェブページ「Think Sustainably」だ。市民や観光客、事業者を対象に、サステナブルな選択をするための情報発信ハブとして、2019年6月に立ち上げられた。環境への配慮や一定のサステナビリティ基準を満たしたレストランやカフェ、バー、宿泊、観光名所、イベント、ショップ、イベント会場などを紹介してくれる。
お洒落なデザインで、語り口もカジュアル。堅苦しさや押し付けがましさがなく、終始見ていて楽しい。たとえば「ヘルシンキ市でサステナブルにすごす3つの方法」といった記事もあり、観光ガイドとして旅行者も利用できる。
とはいえ、中身のつくりは手抜かりなし。紹介されるレストランやカフェ、バーなどには17の環境保全基準があり、少なくとも10の基準を満たす必要がある。具体的には、再生可能エネルギーを使用していること、オーガニックまたはフェアトレードラベルが製品や食品の見えるところに表示してあること、一つ以上の栄養バラスのとれたヴィーガンメニューがあることなどだ。
さらには、長期失業者やフィンランド語を母国語としない人、障がい者などを雇っていることなど社会的な要素も含まれている。現在、81の事業者が参加している。
Think Sustainablyにはもう一つ、面白い仕組みがある。自分の移動にかかるCO2排出量を教えてくれる「ルートプランナー」だ。
行ってみたいレストランを見つけたら、ウェブサイトの下の方にある「ルートプランナー」のコーナーで出発地を入力。すると、徒歩、自転車、公共交通、車で目的地に行った場合など、それぞれの方法のCO2排出量が表示される。自分の移動中のCO2排出量が可視化されてしまうことで、意識的に選択肢を変える人もいるのではないだろうか。
このウェブサイトが作られたきっかけは、ヘルシンキ市民の「将来への不安」だった。2018年に同市が行った調査によると、市民の3分の2が、市の将来を考えたときに気候変動は主要な問題と回答。同時に、この問題をなかなか解決できないことに大きなストレスを感じていることがわかったという。
そこで、市民の日々の暮らしや事業者のビジネススタイルをサステナブルに変える具体的な選択肢を見せていくために、ヘルシンキ市はこのウェブサイトを立ち上げた。
「気候変動は私たち全員に影響する。気候変動との闘いは一部のマイノリティーの課題ではない。ましてや特権でもない。私たちは今変わらなければいけない。日々の暮らしを構造的に良くしていくこと、調整すること。これはいずれも大きな課題だ。私たちはみな、それぞれに気候変動の対策法を見つける権利を持っている。どんなに小さな課題も重要だ。(Think Sustainablyウェブサイトより)」
ヘルシンキ市は、2035年までにカーボンニュートラル(1990年比)な都市となることを目標としている。この目標を達成するために、市が率先して、住民や地域の事業者と協力し、この変革の波を起こそうとしている。
気候変動が「気候危機」と言われる昨今。行動をためらっている時間はない。そんな逼迫感さえ感じられる市の思いを背景としつつも、親しみやすく、参加したくなるような取り組みだ。ウェブサイトは随時ユーザーのフィードバックを集めながら改良していくという。今後の展開にも注目したい。
【参照サイト】Think Sustainably
【参照サイト】City of Helsinki Launches Local Sustainability Programme in Response to Citizen Concern About Climate Change