ヘルシンキが「最もワークライフバランスの整った都市」に選ばれたワケ

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フィンランドの首都ヘルシンキが、2019年ワークライフバランスが世界で最も整った都市に選ばれた。

調査を行なったのはKISIという米ニューヨークの会社。OECDや国連、世界銀行のほか、各国の公式データに基づき、東京を含む40都市を調査した。最上位は、ヘルシンキ、ドイツのミュンヘン、ノルウェーのオスロの3都市。そして最も働きすぎなのは東京、シンガポール、米ワシントン。この調査結果から私たちが学べることは何か、考えていきたい。

調査項目は大きく「仕事の大変さ」「社会と制度」「まちの住みやすさ」の三つに分かれている。

  • 仕事の大変さ:週あたりの労働時間や出勤時刻、有給育児休業日数、通勤時間、有給休暇の取得日数
  • 社会と制度:GDPの内、社会貢献のために使われている金額の割合、住民が質の良い健康維持サービスにどれだけアクセスできるか、ジェンダーの平等
  • まちの住みやすさ:安全性や幸福度、ストレスを受けるレベル、楽しめる緑や公園などがどれくらいあるか、大気汚染度、健康維持や運動がどれくらいできるか
ヘルシンキで働く風景

(c) City of Helsinki

具体的な項目をみると、必ずしもすべての分野において東京がヘルシンキよりも評価が下というわけではない。「まちの住みやすさ」部門では、「安全性」「健康維持や運動がどれくらいできるか」「レストランやショッピングなどの娯楽」の三つの項目で東京がヘルシンキを上回った。一方、「仕事の大変さ」部門においては軒並み差がついている。

ヘルシンキと東京 どこに差が出たのか
都市 ヘルシンキ 東京
安全性 93.3 96.5
健康維持・運動がどれくらいできるか 86.4 98.2
レストランやショッピングなどの娯楽 53.2 99.5
都市緑化(公園やオフィスの緑化など) 93.6 46.4
LGBTの平等(権利の保護やコミュニティへのフレンドリーさ) 91.6 61.1
ストレスレベル(人口密度の高さやインフラ含む) 26.9 61
1週間の労働時間 40.2時間 42.1時間
1週間に48時間以上働く割合 5% 20%
通勤時間(片道) 26分 51分
育児休暇の日数 1127日 406日
有給休暇の最小日数 30日 10日
メンタルヘルスケアへのアクセス 58.9 44.2

出勤時間はヘルシンキが朝9:07、東京が朝8:57と大差ない。しかし、1週間の労働時間や、片道の通勤時間、有給休暇の最小日数、育児休暇の日数はどうだろう。フィンランドでは、2017年に父親の育児休暇のフル取得を促すキャンペーンが行われており、仕事と子育てを両立しやすい国として評価が高い。2020年から、正社員は労働時間の半分はいつどこで働いても良いという労働法もできる。

こうして数字を並べてみると、ワークライフバランスの分野でヘルシンキがなぜ評価されたのかがわかる。私たちにとっても、人々が気持ちよく働ける環境づくりのために、働き方改革は喫緊の課題だ。他にも緑あふれるまちづくりやさまざまなジェンダーを持つ人たちの権利保障も欠かせない。

ワークライフバランスと一言でいってもその要素はさまざまだ。すぐに実現できるものではないけれど、こうした評価を参考に、重点をおく項目を見極め、着実に取り組んでいくことが、私たちの社会を良くすることの第一歩ではないか。

【参照サイト】Cities for the Best Work-Life Balance 2019
(※画像提供:City of Helsinki)

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