木を伐採しないようにしよう、紙や割りばしを減らそう──近年の環境問題を危惧して、こうした動きが高まっている。資源の無駄遣いや行き過ぎた伐採が問題視される一方で、「木材が利用されない」ことが深刻な問題となるケースがあるのをご存じだろうか。
日本の森林のうち4割を占める人工林。健全な人工林の育成に欠かせないのが、「間伐」作業だ。間伐とは、成長に伴い密集した樹木を適度に間引くことで、陽の差し込む量を調節したり、木の密集を防ぎ樹木に十分な栄養がいきわたるようにしたりする目的を持っている。間伐など適切な手入れが行われると、樹木は良好に育つ。そして、健やかな木々が集まった森林は「緑のダム」として機能し、雨水を貯水したり水をゆっくり川に流したりすることで、災害を防いでくれるのである。
1963年の木材輸入自由化に伴い海外からの安価な木材が流入すると、1980年頃をピークに国内の木材の価格は落ち続け、日本の林業経営は厳しくなった。これにより、間伐を行うと赤字になるからと森林を放置したり、伐採した木を森林にそのまま放置したりする事例が増加しているというのだ。
平成30年7月、西日本豪雨の被災地を訪ねた環境ジャーナリスト・竹田有里氏は、「間伐などの適切な森林管理が行われていないこと」が土砂災害による被害を拡大させた要因の一つであることを知ったという。
間伐材を有効利用できないか?どうせなら間伐材を利用して海洋プラスチック問題にアプローチできないか?そう考えた竹田氏は、「間伐材によるストロー」を作るアイデアを思いついた。それに賛同した注文住宅会社アキュラホームとザ・キャピトルホテル東急がタッグを組み「ウッドストロープロジェクト」を始動させた。
そして、試行錯誤の末生まれたのが世界初「カンナ削りの木のストロー」だ。
木に穴をあけるなど様々な方法を考えたが、最終的には「カンナ掛け」をヒントに木をうすく削り丸める方法を採用。この方法をとったことで、ストローの太さや長さを自在に調節できるようになった。マイストローのようにずっと使える製品も考えたが、間伐材の利用を促進する目的もあり、今回は使い捨てストローを製作することにしたそうだ。
ウッドストローを利用して、冷たいオレンジジュースを飲んでみた。くわえてみると、木のさらさらとした感触が感じられる。ストローの匂いや味がジュースの味を邪魔することはない。最初のうちこそ唇にあたる感触が不思議に感じられたが、慣れてしまえば問題なかった。──1時間経過。ストローは水分を吸って柔らかくなってはいたものの、よれることなく最後までジュースを飲み切ることができた。
間伐材の利用を推進し適切な森づくりを支援しながら、プラスチックの削減にも取り組めるストロー。ザ・キャピトルホテル東急で導入が始まっているほか、2019年6月末に行われたG20大阪サミットでも採用されたようだ。今後、あなたの街でも目にするようになるかもしれない。
【参照サイト】木のストロー「ウッドストロープロジェクト」
【参照サイト】政府広報オンライン「木材を使用して、元気な森林を取り戻そう!」
【参照サイト】林野庁「間伐等の推進について」
【参照サイト】森林・林業学習館 『日本の林業の現状』