【学生レポ】デンマーク発、サステナビリティを「概念」から「行動」につなぐデザイン思考WS

Browse By

筆者自身、「エシカルファッション」に関心が強く、今年思い切って1年間休学した学生だ。

ファッション産業は石油産業に次いで環境汚染が深刻とも言われ、日本でも年間10億着以上もの新品が廃棄されている。もともと好きだった「ファッション」が持つ「社会課題」の側面を知ったことから、昨年からエシカルファッションブランドの運営と、メディアでエシカル・カルチャーについて発信をしている。

この分野の活動をする中でふと疑問になることがあるのが、「サステナビリティ」という言葉だ。「既存社会」の延長とも解釈されやすいが、まだ曖昧なカタカナ言葉でもある。この言葉を一つの「概念」に留めず「行動」につなげられるように落とし込んでいくのが必要だと活動の中で日々感じている。

今回はデンマーク・コペンハーゲンを拠点に活動するデザイン会社Bespokeによる、未来洞察のデザイン思考を体験できるワークショップ「Futures Design Basic Course」(株式会社エンゲージメント・ファースト主催)に参加し、ありたい未来を創り出すためのエッセンスを学んだ。

このワークショップのテーマである「Futures Design」とは、未来についての新たな視点やイメージ、アイデアをかたち造り、それぞれの持つ潜在力、そしてありたい未来に至るプロセスを理解するための共創的アプローチだ。事業戦略や組織文化、プロダクトについて考える際に、まだ見えていない未来を今かたち造るためのヒントになるようなデザイン思考を身に着けることができる。

こうした思考は、「概念」の枠を飛び越えにくい「サステナビリティ」を考える上でのキーになると考え、今回は来たるサステナブルな社会へのアクションに繋ぐ視点でワークショップを振り返る。

Futures Design Basic Courseの様子

Futures Design Basic Courseの様子

自分たちが未来に向けて何を「作りたい」のか

「未来」を考えるとき、「今」の延長で物事を考えてしまいがちだ。テクノロジーの発達によっていずれ人間の域を超えたAI(人工知能)が世界を席巻する、気候変動の深刻化が私たちの生活を脅かす、などよく耳にする。しかし、それは「今」の現状を起点にした「来る可能性の高い世界」の話であって、私たちが考える「ありたい」世界とは違うのではないだろうか。

ワークショップ主催者のニックとアンドレアスによると「今」の視点から未来を考える方法もある一方で、想像力を持って、こうあって欲しいと願う「未来」と現在を結びつける「バックキャスティング」的な視点も同時に重要だという。

では、バックキャスティングで考えるためにどのような思考のプロセスがあるのだろうか。

1860年にニューヨークで開催された未来のニューヨークに関する会議の例が印象的だった。当時、哲学者や学者など様々なセクターが集まり、100年後ニューヨークはどうなっているかを考察した際、なんと「ニューヨークは存在しない」という結論になったそうだ。確かに、人口増加に伴う衛生問題など、当時のデータを元にするとそういう未来像になったであろうが、実際は自動車の発明により交通の概念が変わるなど、統計では読みきれなかったことが起こった。

これは、私たちが描く未来にも同じことが言える。直線的に現在から未来を考えても、推測できないことが起こりうるため、自分たちが未来に向けて何を作りたいのかを考えることが必要だ。

例えば「サステナビリティ」に関して考えてみると、現状の社会問題から世界的な行動基準へ落とし込んだ「Sustainable Development Goals(SDGs)」を基点に考えがちだが、こうあって欲しい「未来」からのバックキャスティングの視点で「サステナビリティ」を捉え直すと、どのようにサステナビリティに対するアプローチが変わるだろうか。

どんなポジティブな未来を作り出したいかを考え、その構築要素としてSDGsを用いていく、というようなマインドを持つこと。サステナブルな社会という具体的な像が思い浮かばないために言葉が一人歩きしてしまっている印象があるので、改めて基点を考え直す必要もあると感じた。

Futures Design Basic Courseの様子

Futures Design Basic Courseの様子

人の「価値観」や社会全体の「変化」を俯瞰する

さらに、アメリカ全企業ランキングFortune500の企業のうち、40%が10年以内に消えると言われるように、産業自体の移り変わりや行動変容が激しい昨今において、「どんな未来になっていて欲しいか」を考えるのに大切なのは、社会を構成する私たちの「感情」だという。私たちが「未来」を考える時、「ユートピア(理想郷)」と「ディストピア(暗黒世界)」の両極端に考えが行きがちだが、そうでなく、これらの「間」に未来がある、と主催者の二人は話す。

その「間」を考えるための要素として、私たちの「価値観」、そしてそこから生まれる社会の「変化」を俯瞰することがある、と今回のワークショップのうちの一つを通して気付かされた。

テーマは「1989年からみた30年後に、映画産業にどんな未来が待っているか」。横軸を年月にし、それぞれどの年代にどんな出来事が起こったかを整理するというもの。この未来を知っているからこそ、逆説的に系譜を考えられるのだ。ワークショップ中には、現在から過去に対して「Googleなどテクノロジーに投資すべき」「ネットのインフラサービスを作る必要がある」との声が。

このワークショップを通して、テクノロジーの発展と共に人の生き方の変遷も産業の進展に関わっていることがよくわかった。社会の変化を見るためにはテクノロジーの観点だけではなく、人の価値観や感情面の変化を見ることが重要だと感じた。今私たちが生活するこの世界も、技術革新だけではなく、それによって連鎖的に生じた人々の「感情」や「共感」の部分が絡み合って出来ているものだ。

テクノロジーの「利便性」に注目し過ぎるとそれ自体が目的化され、本来誰のため、何のために使われるものなのかが曖昧になってしまう。最近でも、人工知能やブロックチェーンなど新たなテクノロジーの到来に関する話題を耳にするが、そういった技術を社会的なムーブメント、人々の価値観の変化にどう繋げられるだろうか。

例えば、「エシカルファッション」で考えると、ブロックチェーンによって生産過程から消費に至るまで一貫して透明な情報を消費者にも生産者にも伝えることができる。そうなると、概念的と思われやすい「エシカル」の実態が把握でき、消費者の「共感」も強くなる。「技術」と、そのユーザーである私たちの「感情」が交差して、「エシカル」はものづくりにおけるスタンダードな考え方になるはずだ。

Futures Design Basic Courseの様子

Futures Design Basic Courseの様子

立ち位置を決め、深く洞察していく

加えて「Futures Design」に関して思ったのは、「立ち位置」を決めることで取り組みへの洞察力が増すということだ。

初めは研究対象を定義し、活動フィールドの位置を決める。こうすることで、実際に全体を俯瞰する視点も持ちつつ、ありたい未来をかたち造るために私自身がどの立場で関わっていきたいのかについても考えるきっかけとなった。

例えば、私たちのグループは「環境」というテーマで立ち位置を決めることになった。視点として、国際機関、政府、NGO団体などの案がグループで出たが、結果的により多角的で柔軟に考えられる「ビジネス」と言う視点で進めることに。このように、自分の立ち位置を俯瞰して捉えることでその領域の中でするべき行動が明確になる。加えて、チャレンジ(課題)・ステークホルダー・強みの3つを書き出し、短期間で検証とプロトタイピングを行う「デザインスプリント」も続けて行った。 ここでも、現状を洗い出すことで、自分たちの目指したい未来に対して客観視できた。

また筆者自身の大きな気付きとして、「未来」を考える上で「ビジネス」も現状の形とは変わる可能性がある、ということがあげられる。今は「利潤追求」を進めているビジネス界だが、こう言った「当たり前」は今後も主流であり続けるかというと、わからない。

スウェーデンの女子学生グレタ・トゥーンベリさんに代表されるように、今の若者世代(Z世代)の環境意識は他の世代と比べて高く、企業の「グリーンウォッシュ(企業や商品・サービスが、あたかも環境に配慮しているかのように”見せかける”こと)」を見破る鋭い視点を持っている。この感性は年々研ぎ澄まされていくことが予想され、そもそも有限な資源が枯渇することも踏まえると、今までとはまた違った「ビジネス」のあり方が窺える。

このように、未来を考える上でまず初めに「立ち位置」を決め、その分野やポジションについて書き出していく中で、洞察力が高まり、より視座高く「未来」を考察できると感じた。

そして具体的にテクノロジーとカルチャーの掛け合わせを考え、言語化することで、「サステナビリティ」にも繋がる未来像をクリアにする。最終的には、
「循環型社会を実現するためには、個人・地域・国それぞれが自己完結する必要がある」「“環境”第一に、“経済活動”と共存するために、CSVを進める」など、具体的なインサイトをまとめた。

Futures Design Basic Courseの様子

Futures Design Basic Courseの様子

レポート後記

今回のワークショップでは、自身の関心テーマでもある「環境」を軸に、過去・現在・未来の多角的な視点でアイデアを出したり、考えをシェアしたりした。

Future”s”とあえて複数形にしているという「Futures Design」は、未来は「一つ」ではなく、いわば人の数だけ考えられる「未来」を意味している。「今」をベースに固定化されたただ一つの「未来」を近視眼的に捉えるのではなく、私たちがさまざまな可能性から「未来」を選び、柔軟に考えていくことで、前向きで明るい未来志向を身に着けられるワークショップだった。

今回得た「Futures Design」の考え方は、筆者自身の関心であるファッション産業が抱える社会課題だけに限らずどの産業においても、働き方を含め「生き方」そのものに繋がる考え方として参考になるだろう。人や環境、そして自分自身との「繋がり」を実感することは社会のサステナビリティとも通じているはずだ。筆者自身も、この感覚は自分がつくっていきたい「未来」のヒントになると強く感じるようになった。

今回のワークショップを踏まえて、自分たちが作りたい未来を考える意思を持ちながらも、人々の価値観や社会の変化を感じ取る感覚や、自分の立ち位置をマッピングしながら洞察していく習慣をつけることが自ずと自分が取り組むフィールドに活きるものになるはずだ。

エンゲージメント・ファーストはBespokeと業務提携しており、年に二回日本でワークショップを実施しています。次回は春頃の予定。IDEAS FOR GOODでも告知します。

【関連記事】【レポート前編】デンマーク発・未来を創造する「Futures Design」ワークショップ
【関連記事】【レポート後編】デンマーク発・未来を創造する「Futures Design」ワークショップ
【参照サイト】エンゲージメント・ファースト